「まさか」への対応力

花き業界
前期に比べて下り坂の本年度。「まさか」の際にも対応出来るよう、サプライチェーン上の協力が欠かせない。

 花きの単価推移をみていると、先週から今までがここ5年間で一番低い価格水準となっている。鉢物類は株主総会が始まった二週前から、胡蝶蘭の大鉢を中心にようやく息を吹き返してきたので、最悪期を脱すると思われる。一方、切り花は特に白の一輪菊、そして小菊の開花が早まっており、生産者からすると採算割れの市況展開になっている。2020年の3、4月以来の安値だ。しかし、思い起こせば4~6月に1回、10、11月に1回、菊類の暴落市況ともいえる市況がコロナ禍以前は幾度となくあった。それがコロナ禍の2021、2022、2023年は、いずれも前年を上回る平均単価だった。都市部では一輪菊よりスプレー菊が中心になっているが、大都市から100キロ以上離れた県庁所在地では、まだまだ一輪菊の比率が高い。そういったところの需要が高かったため、大都市も転送需要によって一輪菊が高くなっていた。これがコロナ禍3年間の傾向である。それが温暖化の影響か、人為的な問題も含め、コロナ禍以前と同様の市況になってきた。
 
 前年度までは、ステイホームで家庭での切り花やガーデニングの需要が高かった。コロナ禍が過ぎ積極的に外に出るようになったため、本年は前年と比べると下り坂の市況展開だ。また、一年間も続く可処分所得の目減りによる個人消費への打撃も大きい。個人消費以外にも、花き業界にはイベント需要やホテル・レストランへのいけこみ需要等もあるが、個人消費がGDPの6割を支えている訳だから、花も家庭需要が堅調でないと、全体の相場が下がるということである。特に家庭需要に支えられている地域市場で相場が振るわない。

 さて、今期は前期に比べて「下り坂」であることを考慮して、各社は成長を考えなければならない。昨年までとは違った戦略、戦術が必要だ。更に、これまでの市況で分かる通り「まさか」にも対応出来るようにしていかなければならない。一社だけで出来ることではない。産地、運送会社、卸・仲卸、小売店の一連のサプライチェーンをマクロ的に捉え、ミクロの部分を検討する必要がある。また、ベストな消費者への届け方、買ってもらい方を全体で模索していく必要がある。花き業界は需要が沢山ある時、少ない時があるが、3・5・8・9・12の5ヶ月が黒字月、残りの7ヶ月が赤字月の場合が多い。各社、需要を均す、あるいは個人需要以外の需要の伸びを増やすことによって、7か月の間も赤字にならないよう計画している訳だ。しかし、一般論としてこのような需要のギャップが月々によってある。特に6月の10・20日、10月の10・20日、11月の10日の近辺が鬼門で、需要が少なくなる傾向にある。生産者サイドの年間栽培サイクルからもそのようなことが言えるので、事前に対策を打っておかなければならない。また、再生産が叶わないほどの安値が続く時、生産者は横の連携で協議し出荷調整する、あるいは契約取引価格を再交渉する等の判断も検討する必要があるかもしれない。

 データドリブンで仕事をする社会になっている。花き業界も、一緒にサプライチェーンを組んでいる仲間たち(種苗・生産、運送店、卸売市場(卸・仲卸)、花束加工業者、小売店)と意思疎通を図り、データ管理・DX化等を共有してやっていくことが欠かせない。生産者の作付け情報、出荷情報、買い手の消費動向、そして小売店の在庫まで含めたデータを共有し、需要に合わせた安定供給を実現させたい。


 投稿者 磯村信夫 15:32