「三方よし」と「守破離」

大田花き
 偏西風の動きが例年とは違うため、関東地方の梅雨入りが遅くなっている。
人間の諸活動は、地球の天候異変に繋がっている。人類全体の利益のためにも、一人一人の利益のためにも、地球温暖化対策のための施策を個々人で一つでもいいから行うようにしなければならない。そして呼びかけて、家族でも会社でも、業界全体でも実行する必要がある。プラネタリーバウンダリー※という言葉があるが、このようにしていかなければ、地球はもうギリギリのところまで来ている。
 
 先週の6/8(土)、中学校の同窓会が成城学園で開催されたので参加した。70を過ぎているので、男性の友人達はリタイアしたり、まだ出勤していたりと半々のようだった。歳の所為というよりも恐らく時代の変化だと思うが、近江商人の「三方よし(売りてよし、買い手よし、世間よし)」の意識が大変強くなっていると、友人達の言葉の端々から感じられた。会社という法人も同様で、この「三方よし」、とりわけ社会をよくすることにポイントを置いていることが分かる。例えば、近江商人を起源とする伊藤忠商事は、企業理念を「三方よし」にしているし、住友グループにも「自利利他」の精神が根付いている。また、近江商人の家系だった義父と飲み明かした時にも、映画「てんびんの詩」ではないが、近江商人の精神を徹底して教え込まれたものである。伝統的な日本企業には、そのような精神が根付いている。

 「自社がよし、取引先がよし、世間がよし」となるためには、企業はどのような運営をとるべきだろうか。中学校の同窓会から帰った後、このことについて考えていた時にふと思い出した。大田花きの関係会社である(株)九州大田花きに新社長を大田花きから送り出す際、彼に贈った言葉だ。「守破離が大切だよ。個人も守破離だが、会社も守破離でなければならない。それをやるのがあなたの役割だ」。もう今年で5年目になるのか。個人も会社も守破離を成し遂げつつあり、地域にお役立ち出来ているのが分かる業績になってきた。

 具体的に何をしたかと言うと、シュンペーターの「イノベーション理論」の実践である。1つは、今までに組み合わせたことのない事業を結び付けて新たな価値を創造する「新結合」だ。新しい需要を掘り起こす、あるいは不足しているものを供給することが出来る。もう一つは「創造的破壊」である。九州大田花きはサプライチェーンのオルガナイザーとして、「創って作って売る」を実践している。技術の高い生産者商品を、適正に評価する卸売市場、そしてその先の小売店に使ってもらえるよう、(手数料を頂いて)出荷のお手伝いを行っている。無いもの・足りないものを作ってもらい、花き市場サプライチェーンを作ることもしている。JA系統グループと組んでの取り組みも行っている。通常の場外仲卸の業務としては考えにくく、まさに「創造的破壊」ではないか。

 イノベーションは決して新しいことではなく、先述した「新結合」と、「創造的破壊」によるものである。そのイノベーションにより取引は倍増したか。あるいは、そのことが一つの大きな流れになって、全体の花き生産・消費が拡大したか。これらの評価によってそのイノベーションが定着し、時代を作っていく。九州大田花きは現在のところ、イノベイティブな、近江商人の考えを持った企業で、九州の花き産業の活性化に取り組んでいる。今の時代にふさわしい企業の在り方になってきているのではないかと、同窓会の友人達の話から思う次第である。

※プラネタリーバウンダリー
地球の環境に変化(とくに人間の影響)が加わっても元の状態に戻り、地球環境が安定した状態を保てる限界の範囲を示したもの


 投稿者 磯村信夫 13:42