令和型の仕事の仕方をする
花き業界
このような伝統文化行事は、今後とも変わらず開催されることが好ましい。しかしそれ以外のことについては、令和式と言うか、あるいはSDGsに対応した「21世紀最初の30年方式」と言うか、Z世代の意向を尊重した方式と言おうか、そのような形に変えていくことも必要だ。
例えば商店街でも、ニーズに沿った店舗構成を行っているところがある。かつては「●●銀座」等があちこちにあった。そういった昔懐かしい商店街が今も残る一方で、森ビルの「ラフォーレ原宿」や、鉄道会社の駅ビル内のショッピングモールでは、特徴を生かした出店がされたり、住宅地のそばであれば日配品が揃うよう、生鮮食料品の専門店が出店されたりして利便性を高めている。商店街も「買い回り品※①」を買うところなのか、「最寄り品※②」を買うところなのか、お客様のニーズに合わせて店舗構成を行う必要がある。
花市場も同様に、令和式に変わっていく必要がある。今までは規模の大小に関わらず、地方も都心も同じやり方だった。生産地を訪問して出荷してもらい、相対やセリで買参人に販売する。このような青果や花き流通だった。また、それぞれの市場の買参人はみんなが仲良くするよう、新年会や忘年会、慰安旅行、あるいは助成を受けた産地見学勉強会等を行っていた。
令和の今、東京都は花き市場を場所ごとに3つに区分した。①地元市場(地域市場)、②(県境にあるので)地域集散市場、そして③広域集散市場、この3つの役割に区別される。従って、独自性を出しながら役割ごとに在り方も変わっていく。 そして取扱いの規模によってやり方が変わる。それは役割が違うからだ。花が消費者に届く時、一本から数本の細かい単位になる。それに合わせて、もう少し大きい単位で品揃えする小売店。それよりももっと大きな単位で、品揃えする仲卸、地方市場。弊社のような役割の市場は、更に大きな単位で荷受けし販売する。大ロットだからスケールメリットを生かせば、省力化投資やコスト削減が出来る。一方で、品種の品揃えを豊富にすることも欠かせない。また、デジタル化した管理も必要だ。
諸物価の高騰の折、これ以上生産者手取りが減ってしまっては再生産が出来ない。2024年物流問題における運賃の値上がりをどう吸収し、生産者手取りを減らさないでいけるだろうか。弊社は広域集散市場であるので、その産地が一個単位での運賃体系か、トラック一台あたりの運賃体系かによって対応を変えている。一個単位の産地には、入り本数を極力多くして、個数を減らして出荷するようお願いしている。一方、トラック一台あたりで契約している産地には、積載効率を高めれば生産者負担が少なく出来るので、鮮度保持を前提に、今までよりも一日早く出荷いただくようお願いしている。また、その集出荷所で積載効率が改善出来ず、満載近くにならない場合には、近隣の集出荷場の荷も一緒に積んで、積載効率を高めるようお願いしている。その結果、運賃が上がっても、生産者手取りに影響を及ぼさないようにしている。近在産地でも切り花後3日ないし4日で販売という、遠隔地の産地と同じような状況の場合もある。もちろん、産地でも弊社に到着した際にも適切な温度管理を行い、鮮度保持をしている。
また、物流上の手間をどう省いて生産者の負担を減らすかも考える必要がある。弊社が推進しているフラワー需給マッチング協議会(FMA)では、物流効率化や茎の長さを需要に合わせて短くし、輸送効率を上げる「スマートフラワー規格」の実証実験等を行っている。サプライチェーン全体での効率化に繋げるべく、今後も続けていきたい取り組みだ。
繁盛している令和型の花き専門店は、花のセレクトショップである。ヘビーユーザー、ロイヤルカスタマーを大切にしつつ、その店主が今週の売りたいものを売っている。お客さんは買わないとしても、そのようなところに訪れ、もし気に入ったものがあれば買っていく。消費者の懐具合も、5月中旬の現時点ではまだ余裕がない。7月のボーナスの頃には良くなるのではと期待している。
生産・出荷が少なく、単価が高止まりしている。このような中で、特に21世紀生まれの若い人たちの価値観が、花の消費の今後のトレンドでも重要になってきている。このような諸々のことを考え、人手不足がこれからも続く花き業界の中で、的確に自分の役割を果たした仕事の仕方をしていってもらいたい。また、花き業界の企業は人手不足のため、まず賃金を上げ人手を確保し、教育投資を行い、そして生産性を上げていって欲しい。
※①買い回り品・・・消費者が価格や色、デザインといった要素について比較検討を要するタイプの商品。例えばギフトやテレビ等
※②最寄り品・・・ 食料、日用雑貨のように近所の店で買える品物。最寄りの店で買える品。
投稿者 磯村信夫 16:00