(株)大田花き花の生活研究所が持つ各種データを元に、産地別品種をノミネートした上で花業界でご活躍されている方々を審査員としてお迎えし、より客観的な選考を行っております。また、(株)大田花き花の生活研究所では、この結果を元に、花の流行分析を行っています。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2025 最優秀賞
品目:枝物 品種:七立栗(ななたてぐり)
産地名: JA高知県 七立栗生産組合様(高知県)
■生産者様のコメント
七立栗は、高知県黒潮町に昔から自生する希少種で、地域の人たちにも大切にされてきました。名前の由来は、連続着果したイガの下から順に熟し、一年に七回採れることからこの名前が付いたと云われています。 昔は田畑の害虫駆除のため、山焼きが行われていて、この栗も枝が焼かれ幹だけが残り、春になると新芽が伸びてたくさんのイガが着きました。
しかし、山焼きの文化が途絶え、巨木化し絶滅の危機に瀕していました。これを先代が多くの栗の中から、たくさんのイガが連読着果する種を選別し圃場で増やしてきたものです。その先代も100歳の長寿を全うしました。
これからも私たちが引き継ぎ、品質にこだわり、地域の発展のために大切に育てていく所存です。 今回の受賞にあたり、買参人、大田花きの皆様に感謝申し上げますとともに、今後とも七立栗をよろしくお願いいたします。
(写真後列左から:JA谷崎俊幸様・副組合長堀川英利様・組合長矢野史明様・JA森部高央様
写真前列左から:堀川京子様・矢野和美様)
【所感】
高知県幡多郡黒潮町(はたぐん・くろしおちょう)の山中にのみに自生する非常に珍しい種類の栗です。小ぶりのイガが一枝に10-30個ほど連なって実り、独特の愛らしい姿をしています。「1200年ほど前、道に迷った弘法大師を心深き夫婦が精一杯もてなした。その後、裏山に年に7回も実をつける栗の木がたくさん生えた」という伝承から、地元では「大師栗」とも呼ばれ、親しまれてきました。「実」は甘味が強くおいしいようです。花き市場では枝物需要の高まりを背景に、地域発のブランド花材として注目を集めました。仲卸・小売店・量販店などの納品バイヤーからも「仕入れ販売するたびに人気」「出荷期間中は毎回仕入れた」「秋の装花に取り入れたい」と高い評価を得ました。地域ブランドと市場トレンドの双方を捉えた成功例といえます。出荷期は8月下旬から10月。尚、高知県からは今回が初受賞となります。
中国四国農政局でも紹介されています。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2025 優秀賞
品目:ファレノプシス 品種:サーフソング
産地名: 有限会社 加藤洋ラン園 加藤 英世様(千葉県)
■生産者様のコメント
(写真:加藤和美様・加藤英世様)
【所感】
切花ファレノプシスは、輸入品の大輪白系が市場の主流を占める中、加藤洋ラン園は、色付きのミディタイプ約30品種を軸に国内生産をリードするトップブランドとして知られています。生花小売店やフラワーデザイナーから需要の高いニュアンスカラーを積極的に導入し、ギフトブーケをはじめとする花束を華やかに仕立てる“マストアイテム”として、高い支持を得ています。開花までの管理が難しいコチョウランの特性を熟知し、「作りやすさ」よりも「市場が求める花」を追求してきた同園は、色幅や出荷時期に徹底的にこだわってきた姿勢がこの度の受賞に繋がりました。ギフト需要やサブスクリプションサービスなど、新しい花の消費スタイルに応える生産者としても注目を集めています。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2025 特別賞
品目:ルドベキア 品種:ヘンリーアイラーズ
産地名: JAあがつま 草花部会様(群馬県)
■生産者様のコメント
(写真左から:JA西山悠介様・部会長黒岩正善様・JA青木恭平様)
【所感】
JAあがつまといえば、業界では誰もが知る全国屈指の草花トップブランド。以前から定評がありましたが、野趣溢れるルドベキア“ヘンリーアイラーズ”で満を持して受賞。細い筒状の花弁が特徴的。常に新しい商材を提案されるJAあがつまが、ガーデン素材の中から発掘・導入し、部会の中で生産を拡大したことから、大きなヒットに結びつきました。インテリアとガーデン素材のトレンドが均質化する時流を巧みにとらえ、ナチュラリスティックガーデンの要素を切花分野に応用。“窓の外にあった花を、窓の内側で楽しむ花へ”とリポジショニング(再定義)した成功例といえるでしょう。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2025 新商品奨励賞
品目:キンギョソウ 品種:さくらホイップ
産地名: JAいるま野川越市切り花出荷組合「芳華(ほうか)」様(埼玉県)
■生産者様のコメント
(写真左からJA全農さいたま久保武人様・内野郁夫様・皆木悟様・JA宮崎吉之様)
【所感】
キンギョソウの八重(多弁)品種は珍しく、その繊細なペールピンクのグラデーションと新鮮な存在感が高く評価されました。これまで全体トレンドをリードしてきた淡く軽やかな色調とタテラインの形を踏まえつつ、本品種は“キンギョソウ”というカテゴリーに新たな価値をもたらした点が特筆されます。日本経済が新たな局面へと向かう現在にふさわしい、明るく前向きなムードをまとっています。生産の減少が著しい品目でありながら、この品種の洗練された質感は、装花やディスプレイの現場にも新風を吹き込み、従来のキンギョソウのイメージを刷新しました。なお、キンギョソウの受賞は当賞初。カテゴリーの枠を超えた快挙として、今後の切花市場にも大きな影響を与えることが期待されます。
【トレンド分析】~柔らかい存在感が市場を牽引~
淡くナチュラルでどのような花とも馴染む親和性の高い素材が受賞
ポイント① 調和と自然観を重んじる素材トレンド
派手さよりもやわらかく上品なトーンや、野趣味あるナチュラルな雰囲気が現在のトレンドにマッチ。ニュアンスカラーや自然体のフォルムを備えた素材が引き続き注目され、量感や枝の動きといったテクスチャーも自然志向の価値観と親和性が高く、多用されました。コチョウラン“サーフソング”のような小輪・オレンジピンク~ベージュ系やキンギョソウ“サクラホイップ”、ルドベキア“ヘンリーアイラーズ”もデザインに溶け込みやすく、優しさを感じ、主張しすぎない存在感が魅力と評価されました。
ポイント② 地域資源の再定義とデザイン的価値を両立
地域資源をデザイン価値に転換し、地域ブランドとトレンドをつなぐストーリー性が求められています。ポイントは“物語を持つ素材”。見た目だけではなく、産地の個性がデザイン価値に直結する時代。七立栗のようなオリジナル素材は、地域ブランドが「流行の文脈」に接続し、ローカル×トレンドという成功モデルになっています。
<文責>株式会社 大田花き花の生活研究所

