(株)大田花き花の生活研究所が持つ各種データを元に、産地別品種をノミネートした上で花業界でご活躍されている方々を審査員としてお迎えし、より客観的な選考を行っております。また、(株)大田花き花の生活研究所では、この結果を元に、花の流行分析を行っています。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2023 最優秀賞
品目: アジサイ 品種: 秋色ミナヅキ
産地名: JA利根沼田 尾瀬アジサイ生産部会様(群馬県)
■生産者様のコメント
まだまだ発展途上の産地でありますので、今後とも皆様にいろいろとご指導いただけたら幸いです。最後に、今日この賞をいただくにあたり、買参人の皆様、花に携わっている全ての方々に感謝申し上げます。
(写真左から:JA 亀田拓郎 様、部会長 星信弘 様)
【所感】
ピラミッドを思わせる円錐状の花序は大きいもので全長40cmを超え、マゼンタカラーに色付く様は、圧倒的な存在感を放ちます。初秋のアイコニックなアイテムとして以前から定評がありました。そこに、コロナ禍中に定着した自宅用の枝物ニーズ、また回復基調の業務需要とが相まって、見事この度のご受賞に繋がりました。量販店さんや生花店さんからも「仕入れた分だけ全部売れた」と支持を集めました。
標高700-1,000mほどの地域で暖房を使わず、気候と地の利を生かし、環境負荷を低く抑えつつ、持続可能な農業生産を継続。全国の花きの生産は減少傾向の中、出荷量を伸ばしています。出荷期は9月下旬から10月末までが目安です。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2023 優秀賞
品目: グロリオサ 品種: ZEN
産地名: JA愛知みなみ グロリオサ出荷連合様(愛知県)
■生産者様のコメント
また、当部会ではZENをはじめ、赤の代表品種「ロイヤル」やオリジナル小輪品種「セントレアマスコットイエロー」、「マスコットレッド」など、生産者6名が周年で大輪から小輪までバリエーション豊かな品種の育種に努めております。今回いただいた賞を励みに、新たな品種作りにも取り組んでまいりますので、よろしくお願いします。
(写真左から:JA 山本憲一 様、生産者 藤井隆志 様)
【所感】
ZENは藤井様ご本人が育種された品種で、通常のグロリオサより一回り小輪のオレンジ系。これまでは会場装飾などの法人需要を中心に使われていたグロリオサですが、自宅用にも使われるようになり、グロリオサの用途を広げました。花瓶に数本生けると、蝶が湖面から一斉に飛び立つかのような華やかさが際立ちます。花付きのバランスの良さ、空間を3Dで捉えるフォーメーションは、デザインに生命力もたらします。ZENは2022年オランダで開催されたフロリア―ドで金賞を受賞し、国際的にも高い評価を得ています。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2023 特別賞
品目: ストック 品種: ヴィンテージブラウン
産地名: 余目町農協 花き部会様(山形県)
■生産者様のコメント
(写真左から:JA 遠渡響 様、生産者 阿部美和 様、部会長 工藤豊章 様)
【所感】
ストックといえば、新春を彩るパステルカラーを中心に展開されますが、ヴィンテージブラウンは、その定型を崩す革新的な品種です。ワインやカカオを想起させるこの色は、ファッショントレンドとも連動し、そのシックな風情で空間装飾やギフト、自宅需要などあらゆるシーンで活躍しています。「色合いが絶妙!」、「ストックをおしゃれな花に昇華させた」と評価されました。
余目町農協様のストックは、品質が安定しており定評がある上に、ヴィンテージブラウンはストックのイメージを覆す異色の存在感で、多くの人から注目を浴び、今回の受賞に繋がりました。ストックはフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA初受賞です。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2023 新商品奨励賞
品目: キイチゴ 品種: いろは
産地名: 株式会社 F.U. KAGAWA様(香川県)
■生産者様のコメント
「いろは」は今、品種登録を出願中。花屋さんから日持ちも良いし、使い勝手も良いと評価されています。
今後、生産量を増やし、周年出荷を目標に皆様に供給できるよう頑張っていきたいです。
「いろは」、F.U.KAGAWAともども、これからもよろしくお願いいたします。
(写真:代表取締役社長 石原和昭 様)
【所感】
F.U. KAGAWA様はユニークな枝物や草花を生産されることで、デザイナーさんや買参人さんから定評があり、切花生産の中で独自のポジションを築いています。また、切花の国内出荷量はここ20年以上に渡り減少傾向が続いている中、F.U. KAGAWA様においては、この4年間だけでもご出荷量170%の伸びを示しています。
「いろは」は、ご自身で選抜されたオリジナル品種で、通常のキイチゴよりも葉が一回り小さく、丸みを帯びているのが特徴です。ほかの花材と親和性が高く、空間装飾から自宅用、サブスク、ギフトなど幅広いシーンで重宝されました。「節間が締まっていて」、「ブーケにもアレンジにも使いやすい」、「なんともいえずかわいい!」などと投票者コメントがありました。常に新しいものが求められる枝物・葉物マーケットで的確にニーズを捉えた商品を展開したことが今回の受賞に繋がったといえるでしょう。
【トレンド分析】~業務需要と自宅需要の両輪が回る結果に~
季節を楽しむ草花・枝物、くすみカラーやマゼンタカラーが人気
コロナ禍で定着した個人需要(自宅用)とポストコロナで回復基調の業務需要(イベントや葬儀婚礼など)の両輪が回り始めた業界トレンドが反映された結果となりました。また、昨今ファッションでもトレンドとなっているくすみカラーやマゼンタカラーが、花きの人気トレンドとしてもキーワードに挙げられます。そのほか、透け感や季節感、ドライな質感などが挙げられますが、今回の受賞品種はこれらの項目をそれぞれに満たし、需要をキャッチしました。
<文責>株式会社 大田花き花の生活研究所