(株)大田花き花の生活研究所が持つ各種データを元に、産地別品種をノミネートした上で花業界でご活躍されている方々を審査員としてお迎えし、より客観的な選考を行っております。また、(株)大田花き花の生活研究所では、この結果を元に、花の流行分析を行っています。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2016最優秀賞
品目: トルコギキョウ 品種: NFアンティークピンク
産地名: 鈴木 明典 様(静岡県)
■産地様のコメント
【所感】
NFとは、この品種を育種された長野県千曲市の育種家・中曽根健(なかそね・けん)様の品種でフリンジの利いたもの、つまり「中曽根フリンジ」の頭文字をとったものです。アンティークピンクとフリンジが柔らかく優しい雰囲気を醸し出していますが、メタリックのような光沢感を放ち、どこかシャープな魅力も併せ持ちます。品種の評価が高いばかりでなく、主茎がしっかりとしていて花弁が締まり、生産技術に対する評価も最上級。ブレない品質は最優秀賞に値する納得のご受賞です。
地道に生産に打ちこまれ、国内有数のトルコギキョウ生産者様として名を連ねながらも、謙虚で朴訥とした鈴木様のお人柄も共感を呼びます。出荷期は11月から6月。中でも最も美しさが引き立つピークは3月です。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 特別賞
品目: スプレーマム 品種: カリメロシリーズ
産地名: 株式会社 グリーンウイングスジャパン 様(東京:ベトナム産)
■出荷者様のコメント
【所感】
2005年に始まったフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA史上、輸入商社様のご受賞は初めてです。グリーンウイングスジャパン様のカリメロはベトナムのダラットという花き名産地で生産されていますが、ベトナムで日本向け花きの生産が盛んになった象徴といえるでしょう。
カリメロは小輪で、花付き、草姿のバランスも良く、またグリーンウイングスジャパン様の上手なプロモーションもあり、広く認知され、多くの人に好まれる品種となりました。かわいらしさと使いやすさを兼ね備え、どのようなシーンでも重宝されています。洋花としても多用してできるよう開発したというグリーンウイングスジャパン様の目論見通りの評価を得ています。カリメロは全部で9品種展開。周年出荷がございます。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 特別賞
品目: チューリップ 品種: マリット
産地名: 株式会社 センティア 様(富山県)
■産地様のコメント
【所感】
チューリップらしい花型の一重、春の訪れと明るい未来を感じさせるイエローオレンジの色目が評価されました。最終選考委員からは、どの店舗でも常に良く売れたというコメントを頂戴しております。つまり消費者に支持されたということです。今やチューリップは八重咲き、フリンジ咲き、エレガントなパロット咲き、ピクチャーシリーズのようなキンチャク咲きなど、多様な品種が展開されていますが、もしかするとこのマリットはチューリップの新しい評価軸を作っていくかもしれません。出荷期は1月上旬-3月下旬。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 新商品奨励賞
品目: オリエンタルユリ 品種: ゼルミラ
産地名: にいがた岩船農協 切花部会荒川支部 様(新潟県)
■産地様のコメント
【所感】
ゼルミラはOTハイブリッドで大輪に咲き、トランペットリリーの血を引いて艶のある明るいオレンジ色が叶った素晴らしい品種です。にいがた岩船農協切花部会荒川支部様のゼルミラは花弁が肉厚で、光沢感があり、迫力の逸品。1本に4輪付き、全てが大輪に開花し、圧倒的な存在感を放ちます。
ゼルミラとは、聴き慣れないカタカナの羅列のようですが、実はイタリアの作曲家ロッシーニが書いたオペラ「ゼルミーラ」に由来します。出荷期の旬は6月、及び10月。
●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 新商品奨励賞
品目: スミレ 品種: ミュール
産地名: みやび花園 様(群馬県)
■産地様のコメント
【所感】
パンジーが切花として評価されるというのは画期的です。フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA史上、切花パンジーが受賞するのは初めてです。ほんの数年前では想像しがたかったことを考えれば、新しい時代の到来といってもいいかもしれません。
小さな花壇苗のパンジーを切花として出荷するとは、斬新なアイディアです。商品化するには様々なご苦労があったこととお察しします。その道を切り拓いていらしたみやび花園様だからこそ、その日持ちも品質も別格。3-4週間の花持ちを誇ります。みやび花園様の花き生産に対するスピリットの表れといってもいいでしょう。出荷期間は1月半ばから3月です。
【トレンド分析】
今年のフラワートレンドの特徴は、新しいキーワードが2つと従来までのキーワードが引き続き、次の3つの軸が見えてきます。
1.自然な草花
都市化が進み生活者マインドは自然への回帰傾向が進む中、野趣溢れるナチュラルな植物を求め、草花ニュアンスなものを求める傾向は引き続き見られ、小輪系や野趣溢れるアイテムが注目を集めています。小輪のスプレーマム‘カリメロ’やパンジー‘ミュール’、一重のチューリップ‘マリット’などがこれにあたります。
2.未来への期待感
チューリップやオリエンタルユリなどから受賞品種が選ばれたことは、買参人さまや実需者のみなさまのこれらの品目に対する未来への期待感が込められているといえます。オリエンタルユリには珍しいサーモンピンク色の‘ゼルミラ’、チューリップの‘マリット’、いずれも大変明るい色目の品種で、店頭での動きは良く、最終選考ではかなり高い評価でした。
3.アンティークカラー&フリンジ咲き
セピアトーンのアンティークカラーとフリンジ咲きはここ数年来、最も人気の王道品種です。トルコギキョウのNFアンティークピンクやパンジーのミュールなどがこれにあたります。とりわけNFアンティークピンクは、柔らかい曲線のフリンジが多用され、優しい雰囲気を持ちながらも、その立ち姿は凛として、花弁の光沢感からはメタリックのような鋭い輝きさえも見られます。この品種が最優秀賞に選ばれたということは、花が優しさや守られるものの象徴であるばかりではなく、社会を変えていこうという前向き感や生活者の強さを反映したメタファーと捉えることができます。
フラワー・オブ・ザ・イヤーOTAの結果は、その選出方法から常に社会や生活者マインドを反映します。自然な草花や未来への期待感を表現する明るい色目は、2017年、さらにあらゆる形で生活シーンに浸透していくことでしょう。
<文責>株式会社 大田花き花の生活研究所