Vol.142 JAおおいた豊肥エリア(竹田市:大賀園芸)様:大分県 サクラなどの枝物

はーるーこーおーろーおーの~♪
花の宴(えん)~

腹に力を入れて野太い声で歌いたくなります『荒城の月』。
なぜ急に歌いたくなったかと言いますと、瀧廉太郎先生は大分県竹田市ご出身。しかも120年以上にも及び音楽の教科書に掲載されている国民的唱歌『荒城の月』を作曲した際、竹田市にある岡城で構想を練ったといいます。

岡城跡↓(フリー素材より)
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ということで、作曲された滝廉太郎先生の出身地「大分県竹田市」にやってきました!
この先に進む前に、竹田は「タケタ」と読みます。テンテン付かないの。濁点ナシのクリアなタケタでお願いします。

お隣は阿蘇山擁する阿蘇市。南北に伸びる熊本県との県境に位置するのが竹田市なのです。

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ちょっとズームにしてこの辺↓
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周りを1,000 メートル級の山岳に囲まれ、平地よりもちょっと涼しめ。ちょっとね。竹田湧水群や久住高原を持つ自然豊かで農業生産が盛んな地域なのです。

そんな自然豊かで美しく文化的なこの地に、国内でも屈指の枝物生産者さんがいらっしゃるというではありませんか。

しかも『荒城の月』で「春の桜を楽しみながら~(意訳)」と謳われているように、いくつものサクラの品種を生産出荷してくださっているというから、ぜひお会いしたいという一心でやってまいりました。

竹田市でサクラを見たら、廉太郎先生の気持ちもなんとなくわかるのか、いやきっとわからないだろうけど、廉太郎先生、お導きありがとうございます。
あ、いえ、JAおおいた園芸課の野田竜二(のだ・りゅうじ)さんとJA全農おおいたの古藤田義昭(ことうだ・よしあき)さん、お導きありがとうございます。
写真はJAおおいたの野田さん↓
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一応お断りしておきますが、宴に伺ったわけではなく、真面目に取材に伺いましたよ、ええ。

竹田が誇る国内屈指の枝物生産者こそ大賀園芸(おおが・えんげい)さまです。2022年フラワーオブザイヤーOTA特別賞を受賞された湖上の舞も、大賀園芸さまのご出荷物です。いつもありがとうございます!

大賀園芸初代の大賀英幸(おおが・ひでゆき)さん(写真右)と、ご子息の宏行(ひろゆき)さん。(写真左)

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■基本情報■
栽培面積:露地約12ha
(東京ドームが4.7haなので、その2.5倍くらいに相当します)
標高:250-700メートル(圃場による)
主な生産品目:サクラ、モモ、ドウダンツツジ、スモークツリー、ムシカリ、ウンリュウボケ、ウンリュウバイ、ナナカマド、ワレモコウ、グンバイナズナなど
品目数、品種数:60品目100品種くらい

出荷期:周年 品目が次々と変わり1年中ご出荷があります。

<一例>
→モモ・サクラなど
夏~秋→新緑のドウダンツツジ・スモークツリー・ナナカマド・ナンテン・ワレモコウ・レッドフォックスなど
→ウメ・ネコヤナギなど

従業員数:4人+臨時パートさん

こちらが大賀さんの圃場(一部)。斜面と平地を使い分けて、斜面には枝物、平地には枝物+草花(ワレモコウやタラスピ)を作付けしています。
中央にグンバイナズナ。
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その周りを枝物で囲むように切り枝用の花木を定植。
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大賀さん「例えばこれはクルマガエシ。
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クルマガエシは枝が張るし、植栽間隔を空けないといけない。その間にあまり背が高くならない湖上の舞を植えるんだ。

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さらにその間には正月用のクマザサを植えて、効率的に圃場を活用するんだよ。
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休耕地は全くない。畑の中でも日当たりの良し悪しがあるので、あまり日当たりのよくないところにはナンテンやコウヤマキを植えたり、それぞれの植生に適った場所を選んで定植するんだよ」

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↑日陰になりがちなところにナンテンやコウヤマキ。

日陰も斜面も無駄なく活用し、この場所で一つの生態系が完成するように定植します。自然の山から切り出してくるわけでもなければ、一般的な生産圃場のように品目ごとにピシーーーッと畝を作って定植するわけでもない。土地の形状を生かして自然を再現するかのように花木を生産していくのが大賀園芸さんのすごいところです。

何をどう植えていくかは、性質によるものだけではありません。

「サクラなどの株は古くなるとよい枝が切れなくなるから、枝が切れなくなる前に、新しい株を定植しておく。
バラ科であるサクラは忌地(いやち)現象(※)も起こすから、トサミズキを植えたり、タイサンボクを植えたりね」

連作障害(※)を起こさないように、また良い枝が切れるように、常にローテーションしながら定植しています。
※忌地現象・連作障害:同じ生産品目を続けて生産することによって、生育が不良となる現象。

トサミズキ↓

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それぞれの花木の性質を知り尽くしていないとできないことですね。大賀園芸さんはまさに枝物の匠。

「そう、それに性質が分かってもうちの土地に合うかどうかも分からないよね。
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だから圃場の中で数年かけて試作をしながら、大丈夫そうだったら徐々に増やしていくんだよ」

ロシアンオリーブ↓(試作中)
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タイサンボク(リトルジェム)↓
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こちらもまた美しいウンリュウボケ↓
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あー、こーして紹介しちゃうと、また注文が殺到してしまいそーだー(というくらい素晴らしい)。大賀さん、またさらに忙しくなっちゃったらごめんなさい。

こちらは開花調整をする室です。

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ツボミで切り出し、
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ふかすときは温室へ→室温30℃、湿度60-90%
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露地では咲いてしまうので、ちょっと咲くの待って!というときは冷蔵庫へ→5℃くらい
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このように開花調整をして出荷するのです。

拝見していると幹の感じや枝ぶりがなんとなく異なるようですが・・・
「サクラだけで、湖上の舞、陽光、クルマガエシ、御殿場桜、アデスガタ、和歌山ボタンに思い川など11品種あるんだよ」

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ってえー!公園とか植物園でもないのに、生産用にサクラだけで11種類!市場に流通している品種で大賀さんが持っていないものはないというほどですね。

どうやって集めたのですか?

「友達に譲ってもらったり、きれいな花が咲いているなと思ったら、持ち主に交渉して穂木をもらって、時間をかけて徐々に自分で増やしてきたんだよ」

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そんな風にひとつひとつ地道に集め、自力で増やしてきた数々の花木。現在圃場では開花していないので、大賀さんに写真をご提供いただき、一部ご紹介します。

●陽光桜
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いや~、もうきれいすぎてうっとり。

●御殿場桜
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御殿場桜が圃場で満開になるとこんな感じ。いや~、空の青と桜のピンク、森の緑とで、コントラストが本当にきれい!あ、お花見するとこじゃありませんので。念のため。
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●和歌山ボタン(サクラだけどボタン)
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●艶姿(アデスガタ)
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●車返し
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詩人で画家の星野富弘さんの詩集に、満開の桜の中に埋まって感動を抑えることができず、(手足が不自由な星野さんは)思わずむしゃむしゃと食べてしまったというのがあります。大賀さんの数々の桜はその花が開くと、星野さんの気持ちがわかるほどの美しさです。

そのほか季節にご出荷いただけるスモークツリーとワレモコウ。
●スモークツリー
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●ワレモコウ
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★サクラ「湖上の舞」
フラワーオブザイヤーを受賞されたのは2022年ですが、もうそのずっと前から展示されるたびに「あの桜すごいね」と大田市場をざわつかせていたのがこの「湖上の舞」。枝がジグザグしていて、花はツリガネのようにうつむき加減、そして恥じらうように色付いたピンク色がめちゃくちゃ愛おしいではありませんか。さらには花持ちがとてもいいのが特徴です。元々盆栽用の品種ですが、花持ちがいいので、切り枝用にも適、枝ぶりも大きくなりすぎません。つまーり!ご自宅用に飾るのにちょうどいいサクラなのです。
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タダモノではない雰囲気を漂わせる目を引くサクラ。数本展示してあれば、その前で立ち止まらずに通り過ぎることは不可能に近いでしょう。
こちら湖上の舞の栽培の様子↓
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枝先にピント合わずすみません。

それにしても切り枝業界ではだれも気付かなかった湖上の舞に目を付けるとは、さすがです。
大賀さん、フラワーオブザイヤーOTAご受賞後、反響はありましたか?

「湖上の舞を知らなかったお花屋さんからの問い合わせが増えましたよ。ほかの市場からも問い合わせありましたし。
でも供給量はすぐには増やせるものではないので、対応できていないこともあるのですが、受賞後に作付けを増やしたので、これからまたご要望にお応えできればと思っています」
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湖上の舞を生産、出荷されるのは、全国でも大賀園芸様1軒のみ。
フラワーオブザイヤーOTAご受賞で忙しい思いをさせてしまいすみません!!
いまのところ、今年の生産も順調とのこと。作付けを増やしてくださってありがとうございます!

あ、でもみなさま、「2日後に使いたーい!」とか、なにとぞ急な注文だけは堪忍してくださいませ。出荷できたとしても間に合わなくなってしまいます。ご入用の日まで充分なリードタイムを以ってご注文ください。湖上の舞だけでなく、全般的にそのようにお願いできますと幸いです。

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★竹田の土
大賀さんの背中を追って圃場を歩かせていただくと、土はふっかふか。ずぼずぼと足が土に埋まります。
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大賀さん親子、このようなずぼずぼと足がハマる傾斜地を1日に何キロも歩かれているのかと思うと、相当足腰がお強いに違いありません。
これはもともとこのような土壌の性質なのですか?

「そうだよ。
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元々田んぼだったので、水が溜まりがち。だから水が溜まらないように重機で地層にある石の盤を崩して、水はけをよく整備してしたんだ。水持ちがよい品目を作る場合はそのままでもいいだろうけど、枝物の場合は水はけを良くしないといけないからね。場所によっては水を抜くパイプを通しているよ」

竹田は阿蘇山の火山灰が多く含まれます。
火山灰土壌がどのように枝物生産に影響しているか科学的なことは専門の研究者にお任せするとして(参考論文:「火山が農業にもたらす恩恵」 平舘俊太郎氏・農研機構)、こちらの論文のサマリーを拝見すると「火山由来物質の風化および土壌化が始まると、そのプロセスにおいて放出される物質や新たに生成される物質およびそれらの機能を介して、農業に恩恵をもたらすようになる」とあるではないか!
いずれにしても、結論としてなんだかよさそうです。

火山灰土壌についてはいろいろと研究がなされ多くの論文が発表されていますが、メリットとしては保水性と通気性の両方において優れていることがあるようです。多孔質の密度が小さく、団粒(だんりゅう)構造に富み・・・つまりはスポンジ状になっていて、農業生産にはばっちりということです。

なるほど「スポンジによく似ている」とあるように、確かにふっかふかなんですよ。
だからこんなちっちゃい足跡も・・・
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って、え?

この足跡、どなたの?

ちょんちょんちょん・・・とヒトのものらしからぬ足跡が。
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大賀さん、これは?

「イタチかなー」

イタチーーーー!

「このあたりは何でも出るよ。イタチ、シカ、イノシシ、ウサギ、ムジナ、タヌキ・・・」
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まさに野生動物オンパレード!
いや、だからこその悩みもあります。

☆大賀園芸さんに負担をかける2つの「ジュウ」
1. ひとつめの「ジュウ」

それは獣害の「ジュウ」です。

山間部における(もはや山間部でなくても)農業生産はどこでも獣害との闘いは避けて通れません。この地域でも例外ではなく、お話しを伺うと特に野ウサギが多いようです。

「これはウサギに食べられた跡」
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「これも」
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↑これは野ウサギにかじられすぎて、もう枯れてしまいました。野ウサギひどい!

「だからこんな風に定植したばかりの苗木をかじられないように保護しているんだ」
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獣害には心を砕きつつも、対策には知恵を以って手間と時間をかけて臨みます。

見たことのない方は、野ウサギってどんな?と思われるかもしれません。そんな方のために、ハイ、野ウサギはこちら↓

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これはなんと大賀さんちで飼っている野ウサギ(写真提供:大賀さん)。
やば。かわいすぎるッ!!
小さいころに保護してかわいがっていらっしゃいます。

2.ふたつめの「ジュウ」
それはですね、これですよ、コレ。
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↓例えばですが、こちらのサクラ1束(20本)、何キロくらいあると思いますか。

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3択です。
A:約10kg
B:約20kg
C:約40kg

せーかいは・・・?

宏行さん「Cの約40kgだよ」
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どひゃーーーー!bikkuri_me_tobideru_woman

40kgもあるのですかー!
「しかも、今水揚げをしているけど、水を吸って出荷するから、切ってきたときよりもさらに重くなってこのバケツから出す」
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吸った水の分だけさらに重くなるということですね。
って、じゃあなかなか一般的な女性一人の力ではひょいと持ち上げるのは難しいですね。

「そう、力がないと運搬すらできない。枝物生産は労働なんだ」

宏行さんはかなりの細マッチョ系と推察。
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「わたしは昔柔道をやっていたので、同年代の中では力はある方かもしれないね」
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なるほど柔道の「ジュウ」を以って「ジュウを制す」。道で鍛えた心身で、害と量を乗り越えるのですね。
今の時代、なんだか上腕二頭筋を見せてくださいとお願いするのも何となくはばかられ・・・ていうか寒いし。

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「上腕二頭筋を見せてください」とお願いされる場合は、温かくなってから、失礼のないようにお願いします。


★標高700メートル 標高差を生かして“ひとりリレー”出荷

大賀園芸様では標高250メートル、350メートル、600-700メートルと標高を違え、3か所で生産圃場を管理しています。熊本県との県境にある須郷(すごう)地区にある標高600-700メートルの圃場にご案内いただきました。
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道なき道を・・・いや、道あるんだけど、え、これ道ッ??
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ぐらぐらしすぎて、シャッターが定まらん!

っていうくらいの道を通って、着きました。

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空が美しく穏やかなこちらは、峰の頂上にあります。頂上にあたりますが、台地のようにフラットな場所が続きます。

「標高が最も低い所と高い所では気温が4-5℃違うよ。
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となると、同じ品種でも開花は2週間くらい違うかな。その分、リレーして長い期間出荷することができるよね」



メリットその1:同じ品種でも、標高の異なる圃場で生産することで開花期をずらし、瞬間風速ではなく長い期間出荷することができる。

“大賀さんち1軒で”この標高差を生かして、桜前線を追いかけるように「リレー出荷」ができるんです。しかも車移動で30分以内。こういうの、スゴイ。竹田の地の利を大いに活用した生産といえますね。

「本来なら2週間で開花が終わってしまう花も1か月にわたり出荷することができるよ。
スモークツリーなら、5月下旬から7月くらいまで出荷することができる」

はい、みなさま、これがどのくらいすごいことか解説いたしましょう。

大田花きにおけるスモークツリーの流通期は5月中旬から7月中旬までの約2か月。
5月のころは、千葉、埼玉、茨城、静岡、東京などの関東近県の生産地から出荷され、季節が進むにつれて、長野、福島、岩手、青森、北海道と、どんどん北上していく産地を追いかけていくわけです。本来開花期の短いスモークツリーが2か月間流通するのは、このような理由からなのです。

しかーし、大賀園芸様は1軒で2か月の流通をカバーされているのです。
(大賀さんのスモークツリーお写真)

あるいは、開花期が本来2週間ほどのサクラも、これが1か月に及んで流通するとなれば、品目としての存在感は雲泥の差です。1年のうち「出荷が2週間」と「出荷が1か月」というのは花き流通品目として「あるか、ないか」くらいの大きな違いなのです。
流通期が1か月あれば流通品目として頼りにされ、一つの品目として、或いはブランドとして成立し得ます。つまり、流通期が2週間か1か月かの差は、「花き産業の中で、使ってもらえる存在かどうか」の分かれ道というくらい大きな差と言えるでしょう。



メリットその2:それから低温に当たった分、きれいに咲く

「寒さに当たると休眠打破できれいに咲くんだよ」

サクラでもなんでも開花には冬の寒さが不可欠。前年の夏に花芽を形成し、寒さに当たり休眠状態に入ります。
気温が上昇すると、「春だ~」と目覚めて(休眠打破)、開花に向かい「花咲かせよっと!」と開花に向かいますが、寒さがなければ「春だ~」の目覚めもなければ、開花も一斉には揃いにくくなるのです。

例えばネコヤナギ。
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標高の高い大賀さんちの圃場で、年末の寒さに十分当たって温室に入れると、休眠打破が一斉に起きて、お正月の初荷用のネコヤナギがきれいに咲きそろうのです。
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メリットその3:節間(せっかん)が詰まった良い枝になる!


「もうひとつはね、秋の到来とともに気温がぐっと下がるでしょ。秋芽の成長がないから、節間(枝の節と節の間)が詰まって良い枝になるんだよ」
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秋まで残暑でだらだらと暑かったりすると、枝が伸びてしまいます。でも標高が高い地域なら大丈夫。秋が来てきちんと気温が下がれば、成長
せずにグッと節間が詰まったものが出来上がります。

標高700メートルのメリット×3つ=でかい!
標高差のある圃場が大賀園芸様のブランドを支える一つの秘密ですね。

★枝物ひとすじ半世紀!

お父上の英幸さんは、枝物を生産されて50年に及びます。
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昭和40年に学校を卒業されて、全国でも枝物の三大産地の一つと誉れ高かった福岡の久留米の産地で修業されて、就農しました。
英幸さんが学校を卒業されたころ、それは昭和40年代、ここ竹田では多くの農家さんが米と野菜を生産していました。英幸さんのお父上もまた例外ではなく、米と野菜を生産されていたといいます。となれば、英幸さんも米か野菜あたりを生産するのが自然な流れのように思いますが・・・

「最初に作付けしたのは、湿田の傾斜地だったんだよ。だから草花を作るのは難しかったんだよね。そこで枝物を作ろうってことにしたんだ」

黎明期のご苦労もあったと思いますが・・・

「もうあいつは夜逃げするだろうと言われたよ」

夜逃げせずに50年続けられて素晴らしいことでございます。しかも辞めようと思ったことは一度もない!とおっしゃいます。

枝物なら斜面の利点を生かして、日照量を確保できますね。最初に作付けしたのはモモとナンテンとレンギョウだといいます。

でも、どの花木にしても植えてもすぐにはご出荷できないのでは?

「そう。モモとかレンギョウはそうだよね。だから最初の数年はあまり売上にならなかったね。
このままでは結婚もできないと思ってね💦まずはナンテンの種をまいて、1-2年で高さ25-30cmくらいまで成長したものを、お正月用などの寄せ植えとしてものを福岡の市場に向けて一生懸命出荷したんだ」

日本の高度経済成長期と相まって、足元では成長の早いもの、或いは早い段階で出荷できるものを販売しながら、徐々に新しく作付けを行っていきました。
そして今では枝物、草花含め全部で昨年実績37万本!
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ありがとうございます。日本の枝物流通を支えている大賀園芸さんなのです。

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★押さえておきたい物流問題

【その1】大きい枝物、どうやって市場まで運ぶ?
大賀さんの大きな枝物をご覧になって、これをどうやって市場まで運ぶのかと思われた方も多いことでしょう。
その1:大賀さん、40kgもある大きな枝物はどうやって市場まで運ぶのですか?

「2メートルも3メートルもあるものはさすがに箱には入れられないからね、菰(コモ)に巻いて、自分で持っていける範囲の市場に持ち込むんだよ」

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市場って?
「福岡が多いかな。週2回、自分の2トントラックに積んで持って行くんだよ」

ご自身で!?
ていうか、竹田から福岡の市場までって・・・

「150kmないくらだけどね。トラックで片道2.5時間から3時ちょっとかかる」

移動だけで往復6時間から7時間。それだけで1日仕事ですのに、週2回にも・・・!

【結論】→大きい枝物は2トントラックで毎回市場に持ち込み。

【その2】大田市場まで 2024年問題大丈夫??
トラックドライバーさんの時間外労働の上限規制が適用・実施されるのは2024年4月から。

・・・ってもうすぐ!
竹田市と大田市場は約1,000km、機械的に計算しても15-16時間はかかりますよね??
4月からJAおおいた様のお荷物が時間内に大田市場までお届かなくなっちゃたらどーしましょーーーー!?!?

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「もちろん対策はしてありますよ。時間外労働が規定よりオーバーしないように、中継地でドライバーさんを交代して運んでもらいます。」

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では、これまでどおり時間内に届けていただけるのですね。

「時間は変わらず届けられるけど、例えばこれまでドライバーさんが1人だったところ、交代するから2人になるわけだよね。だから運賃は上がる。ご理解いただけるとありがたいです」

【結論】→所有時間変わらず東京に届けることができます。しかし、運賃は上がります。

★おまけ「豊肥(ほうひ)地区とは?」
「JAおおいた豊肥エリア」といいますが、JAおおいた様の豊肥エリアは、竹田市と豊後大野市にまたがる地域を指します。それにしてもこの「豊肥」とは、なんだか豊かで肥えて、随分と縁起の良い響きですね。

「豊肥地区は、県内でも随一の農業地域なんだよ。準高冷地として野菜の生産が盛んなんだ」

竹田市だけでも耕地面積は、県全体の約12%にもなるのだとか。
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その名の通り、豊かに肥えたこの地ではキャベツ、白菜、白ネギ、スイートコーンなどの生産が盛んです。
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花きなら、同じく豊肥エリアの豊後大野市にあるスイートピーの生産もまた全国屈指の生産地です。

この農業生産が盛んな様子を拝見しますと、「豊肥」と名付けられたのも得心がいくというものです。

 

★大賀園芸様の格言

●山間部の斜面も有効活用すべし!
土地の形状を生かして自然を再現するかのように定植していくのが大賀園芸さん流なり!
1区画1品目ではなく、ひとつの生態系を作るかのように植物の性質を考慮して複合的に品目を作付けるべし。
日本の国土は約7割が森林。中山間地における農業振興のヒントになるのでは?

●標高差を生かしてひとり出荷リレー!
車で30分以内で移動できる標高差400メートルを生かして、桜前線を追っかけるべし。
圃場をあえて標高差のあるところに分散して、1品種の出荷期を長く確保すべし。季節指数の極めて高い品目をいかに長く出荷するかがブランド確立の秘訣。

●大賀園芸様は、全国の枝物生産者さんが減少傾向の中、花き業界としての社会的ミッションを背負って従事されている印象でした。

定休日は年1日、1月1日のみ。
めちゃくちゃ働き者ファミリー。お話を伺っているだけで頭の下がる思いでございました。

 

 

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文責・写真:ないとういくこ@大田花き花の生活研究所


※サクラなど一部の写真は大賀園芸様にご提供いただきました。