フラワー・オブ・ザ・イヤー・OTA FLOWER Of THE YEAR OTA

大田花きでは、優れた花きの出荷を奨励し、一層の品質向上を促すと共に、流行の指標づくりを行うことを目的とし、魅力ある花を作出された生産者の方へ、その功積を称え「FLOWER OF THE YEAR OTA」として表彰しています。同時にこの賞は、流行を定点観測の上、データベースとして蓄積し、今後の人気潮流を占うものでもあります。


2022年度


(株)大田花き花の生活研究所が持つ各種データを元に、産地別品種をノミネートした上で花業界でご活躍されている方々を審査員としてお迎えし、より客観的な選考を行っております。また、(株)大田花き花の生活研究所では、この結果を元に、花の流行分析を行っています。



●FLOWER OF THE YEAR OTA2022 最優秀賞


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品目: ケイトウ  品種: プティフルーツマーメイドピンク
産地名: 下関花維新の会様(山口県)


■生産者様のコメント

下関花維新の会は、2000年に3名で発足しました。はじめは古い品種のアジサイの小輪タイプ、プチヒマワリ、ハボタンを大田花きに出荷したところ、注目を浴びました。その後、会員も増え、今回ケイトウ“プティフルーツマーメイドピンク”が最優秀賞をいただき、大変感謝しております。今後年間を通じて努力を重ね、注目される品種をいろいろ栽培していきたいと思っております。

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(写真:代表 沼 房光様 沼 好子様)

【所感】

山口県からの受賞は18年目にして史上初。良い花の評価基準において、「大きくなくていい」という流通上の真価を証明した意義深い受賞となりました。下関花維新の会様は8名から構成される花き生産グループ。代表の沼様は花き生産に従事して50年以上超ベテラン生産者です。個性的な雰囲気を持つ枝物や草花に注目し、大田市場にご出荷。そのうち3名がケイトウを生産。作りがうまく、細くて丈夫、小さくてコンパクトなケイトウを作りこなします。コロナ禍の3年を経験し、花きの需要は自宅用が定着。なかでも季節を楽しむ草花や枝物がとりわけ人気ですが、大きく立派なものだけが良い花ではないという新しい価値観のもと、自宅にある花瓶に飾りやすい仕立てとサイズが実需者に評価され、この度の受賞につながりました。さらに、プティフルーツマーメイドピンクはあらゆる花色と調和しやすい中間色が魅力です。日数の経過とともにアンティーク調からドライフラワーに変化する過程も楽しめます。
下関花維新の会様は、暖房を使わない無加温栽培で持続可能な農業生産を実現しています。気候と地の利を生かし、環境負荷を低く抑えつつ、より多くの花きを大田花きに継続的にご出荷くださっています。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2022 優秀賞


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品目: センニチコウ  品種: ローズネオン
産地名: 真田フラワー様(千葉県)


■生産者様のコメント

この度は名誉ある賞をいただきありがとうございました。センニチコウは6月から12月いっぱいまで出荷があります。12月から4月まではスナップの出荷があります。いずれも生産はもとより、選別を注意深く行い、ユーザーさんが使いやすいよう意識ながら出荷しています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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(写真:真田 和宏様)

【所感】

センニチコウの受賞は、フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA開催18年目にして史上初です。昨今の花き流通トレンドを大いに反映した意義深い受賞となりました。真田フラワー代表の真田和宏様は、花き生産で有名な南房総の花き専業農家三代目。主に冬場のスナップを生産されていましたが、夏場の生産品目、かつ徐々に気温が上がる夏の酷暑に耐えられる生産品目を探していた際、センニチコウに出合い2012年に生産開始。センニチコウの色付いた部分は、本来の花ではなく苞であるため、暑い夏でも褪色しにくく、消費者のもとで大変長持ちします。元々は仏花や花壇で使われるアイテムですが、昨今の草花ブームで一躍注目を集めています。
コロナ禍の3年を経験し、花きの需要は自宅用が定着。なかでも季節を楽しむ草花や枝物がとりわけ人気ですが、小輪草花が注目される新しいマーケットトレンドのもと、自宅にある花瓶に飾りやすいサイズの草花品種が実需者に評価され、この度の受賞につながりました。真田フラワー様のセンニチコウは、細くて丈夫、花付きや発色も良く、注目を集めました。小売店ばかりでなく、今伸び盛りのスーパーや量販店のバイヤーの間で真田フラワー様ファンが増え、売上を伸ばしています。日々40度以上にもなるハウスの中で、いかに日持ちするものをたくさん生産出荷できるかを模索した結果、トレンドの波にも乗り、センニチコウが人気であることを証明した受賞といえます。品目の性質を生かし、変わりゆく気候に対応した持続可能な農業生産を実現し、より多くの花きを大田花きに継続的にご出荷くださっています。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2022 特別賞


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品目: サクラ  品種: 湖上の舞
産地名: JAおおいた 豊肥エリア様(大分県)


■産地様のコメント

この度は大変名誉ある賞をいただき、ありがとうございます。大分県豊肥エリアは九州のちょうど中心にあり、標高200-700メートルの準高冷地で生産をしています。今回受賞させていただいた湖上の舞は、小さくコンパクトであり、サクラという季節感を感じることができる商品として評価していただいたと感じています。まだまだ出荷量は少ないのですが、今後増やしていきたいと思っています。その他、周年出荷の品目もありますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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(写真:大賀園芸・大賀宏行様、JA全農おおいた 松尾俊洋様)

【所感】

大分県の生産者様のご受賞は18年目にして史上初です。誰も気づかなかった品種に目をつけ、マーケットに素晴らしい花材を提案し、受賞に繋がりました。湖上の舞を生産、出荷されるのは、全国でも大賀園芸様1軒のみ。枝ぶりや花の咲き方が独特な湖上の舞に目をつけ、2014年ころ作付けを開始しました。姿かたちに品があり特徴的であるばかりでなく、花びらが散りにくいのも本商品の特徴です。
コロナ禍の3年を経験し、花きの需要は自宅用が定着。なかでも季節を楽しむ草花や枝物がとりわけ人気ですが、自宅にある花瓶に飾りやすいサイズや仕立てが実需者に評価され、この度の受賞につながりました。また、大賀園芸様は枝物を中心に生産され、原油高、円安の昨今において、暖房を使わない無加温栽培に取り組んでいます。植物の性質を生かし、変わりゆく気候に対応した持続可能な農業生産を実現し、より多くの花きを大田花きに継続的にご出荷くださっています。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2022 新商品奨励賞


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品目: アスター  品種: ボブピンクソルベ
産地名: しんせんむら様  (長野県)


■産地様のコメント

標高約1,000メートルの高地で、有機栽培で花を育てています。アスターは連作障害が心配されますが、有機を活用し、対策を講じています。育てにくい花だと思いますが、素晴らしい賞をいただきましたことを糧に、今後も取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。

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(写真:(左から)島立正治様・朝倉初明様・矢崎喜平様)

【所感】

通常、花の直径は2-3cmの小輪が中心のアスターで、花の直径10cm前後の栽培が難しい品種を素晴らしい品質でご出荷され、新しいアスターの価値を提案、受賞に繋がりました。しんせんむら様は3名からなる生産者グループ。日頃は、ナデシコやカーネーションの生産がメインですが、草花ブームを受けアスターを導入。とりわけこのボブピンクソルベはアスターの中でも今注目されている大輪品種で、生産は非常に難しく、生産者を悩ませます。しかし、しんせんむら様はこの品種に挑戦し、実需者から「アスターの新たな用途の開発に繋がった」「ボリューム感が素晴らしい」と高評価を得ました。従来の“アスターの境界“を乗り越え、新しい価値を提案しました。
また、しんせんむら様の生産者全員が標高1,000メートル以上の立地で花きを栽培。地の利を生かし、20年以上にもわたる花き生産において化学肥料を一切使用せず、微生物を活用しながら自然の力を最大限に引き出す生産方法に取り組んでいます。また、暖房を使用しない無加温栽培で、この円安の時代においても生産コストをできるだけ抑え、持続可能な農業生産を実施しています。




【トレンド分析】人気の花のキーワードは “草花・枝物・自宅用”


フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2022では、全国、及び輸入品を含むおよそ20万点に及ぶ候補から先述の4点が選出されました。3年に及ぶコロナ禍で、いよいよ定着したのは自宅需要です。花きがもたらすストレス低減効果の認知普及も影響し、生活空間に花や緑を飾ることは一般的なこととして浸透してきました。このことにより、流通品目の評価に変化が見られました。茎が長く立派で、大輪なものばかりが良い花とされるのではなく、自宅にある小ぶりな花瓶に適したサイズや輪径のものが、使いやすくていいという評価基準です。
なかでも、その時にしか手に入らない季節指数の高い草花類、枝物類の引き合いが強まりました。またこの度は、いずれも暖房を使わない無加温生産をした品目が受賞しました。各生産地の気候と地の利を生かし、持続可能な生産に取り組む生産者が成果を上げています。燃料の高騰が生産コストに重くのしかかる今、過剰な肥料やエネルギーコストをかけることなく、環境負荷を低く抑えて多くの花きを出荷することで、消費者にとってもお求めやすい価格となり、その好循環からさらに活発な取引が行われた結果でもあるでしょう。コロナ禍を経て定着した自宅需要の影響が色濃く反映された結果となりました。

<文責>株式会社 大田花き花の生活研究所


2022年12月02日