フラワー・オブ・ザ・イヤー・OTA FLOWER Of THE YEAR OTA

大田花きでは、優れた花きの出荷を奨励し、一層の品質向上を促すと共に、流行の指標づくりを行うことを目的とし、魅力ある花を作出された生産者の方へ、その功積を称え「FLOWER OF THE YEAR OTA」として表彰しています。同時にこの賞は、流行を定点観測の上、データベースとして蓄積し、今後の人気潮流を占うものでもあります。


2020年度


(株)大田花き花の生活研究所が持つ各種データを元に、産地別品種をノミネートした上で花業界でご活躍されている方々を審査員としてお迎えし、より客観的な選考を行っております。また、(株)大田花き花の生活研究所では、この結果を元に、花の流行分析を行っています。



●FLOWER OF THE YEAR OTA2020 最優秀賞


flower_2020_038_01

品目: アスター  品種: マッシュラベンダー
産地名: JA香川県 三豊花卉部会様(香川県)


■生産者様のコメント

この度は、大変名誉ある賞をいただきありがとうございます。日々の努力が認められ大変嬉しく思っております。生産者同士、どうすれば品質が良くなるかなどを話し合い、コミュニケーションをとるよう心掛けております。今後とも生産者一同精進致しまして皆様に喜んで頂ける商品を提供するべく努力して参ります。これからも高品質な商品をお届けしたいと思いますので、一層のご愛顧を賜りますようよろしくお願い致します。

flower_2020_038_02
(写真:JA香川県 三豊花卉部会の皆様)

【所感】

マッシュラベンダーは直径7cm前後にもなる超大輪アスターで、これまでのアスターのイメージを覆すような驚きをもたらす品種です。全体的に小輪化の中、アスターにおいては唯一大輪化で成功したレアな品目といっていいでしょう。用途がほぼ限られていた中、マッシュシリーズなどの登場によってアスターという品目のイメージが一新し、幅広い用途で使われるようになりました。花き生産は減少傾向ですがアスターの生産は近年増加中です。グレーイッシュな発色がトレンドを捉えた独特の雰囲気を出しています。
1本でその場の雰囲気を変えるほどの存在感があり、且つ美しさが引き立ち、大変長持ちします。昨今のトレンドのブルーイッシュピンク(青みがかったピンク)というポイントも押さえています。このような花姿と社会的背景がマッチしたことで、この度の受賞につながったものと思われます。
香川県はその穏やかな気候と暖地の強みを生かし、冬場の花き生産を担う重要な生産地として市場からも期待されています。JA香川県三豊花卉部会様は切花ではラナンキュラスやマーガレットなどの生産が盛んです。マッシュラベンダーについては大田花きに流通する4-5割の生産を担っています。まさにトレンドに目を付け着実に生産を増やしていったことでマーケットのヒットメーカーとなったといえるでしょう。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2020 優秀賞


flower_2020_015_01

品目: バラ  品種: ヴァーズ
産地名: 遠州夢咲農協 やぎバラ育種農園様(静岡県)


■生産者様のコメント

この度はフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA02020優秀賞に選んでいただき、ありがとうございます。ヴァーズは父と一緒に品種改良を行い、タネから育て、少しずつ作付け量を増やしていった品種です。そのバラがたくさんの方に使っていただけたことがとても嬉しいです。今後もたくさんのバラを作り出せるよう努力いたしますので、よろしくお願いいたします。

flower_2020_015_02
(写真:やぎバラ育種農園 八木勇人様)

【所感】

花きトレンドはシャビーシックというキーワードに象徴されるように、ドライな質感と上品さとを併せ持つような品種が注目されています。本年は感染症拡大の懸念から自宅で過ごす時間が増え、住宅環境や在宅勤務の環境を整えるニーズが高まったことに伴い、花や緑への渇望も高まりました。このような社会的背景から、1輪でその場の空気感に変化を引き起こすような存在感のある花への注目度が上昇しています。
ヴァーズは、八木さんが1輪で絵になるバラを目指し育種を進める「アールローズ」シリーズの一つ(アールローズとはフランス語で芸術のバラを意味)。ヴァーズはぽってりと肉厚な花弁に、シルクのドレープが重なったような濃厚な印象、そこに陰影が生まれてまさにアンティークタッチで描かれた絵画を思わせる芸術的な品種といえるでしょう。まさに1本でその場の空気感を変える存在で2020年の花トレンドを捉えています。
八木さんは、2005年ころ未来のトレンドを見据えにオランダに研修にでかけたときにこの品種ならいけると手がかりを得て帰国しました。1輪で花瓶に挿したときに映えるよう、花瓶を意味するvaseから「ヴァーズ」と命名。八木さんご自身は40品種を生産されますが、うち9割が八木さんのオリジナル品種です。
 大田花きに流通するバラは、輸入も含め年間約2,300万本。品種数にして1,000品種近く流通しています。切り花のバラの生産量は全国第2位を誇ります(2020年12月時点)。ちなみに静岡県のバラがフラワー・オブ・ザ・イヤーOTAの賞を受賞するのは今回が初めてです。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2020 新商品奨励賞


flower_2020_036_01

品目: スターチス  品種: シンジーシルバー
産地名: 紀州農業協同組合様(和歌山県)


■産地様のコメント

この度は、新商品奨励賞をいただき誠にありがとうございます。日頃よりお客様に喜んでいただける花を目指して生産しております。その中でこのような賞をいただき、これからの栽培にも大変励みになります。これからも良い花をお届けしたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

flower_2020_036_02
(写真:紀州農業協同組合 シンジーシルバー生産 野村直佑 様)

【所感】

スターチスのシンジーシルバーは、カサカサとしたドライな質感で、アンティーク調の雰囲気のある独特な品種。シルバーがかったピンク色の小花がたくさん付いたかわいらしく上品です。色が付いた部分がガクにあたるので、大変長持ちし、ドライフラワーとしてスワッグなどにもよく利用されます。昨今のトレンドのブルーイッシュピンクというポイントも押さえています。1本のボリュームもあり、その場の空気感に変化を引き起こすような存在感のある花といえるでしょう。
和歌山県は花き生産地として全国でも有名です。スターチスの年間生産は北海道に次ぎ全国第2位ですが、暖地の特性を生かし冬場は第1位の生産地として国内の供給を支えています。また、国内におけるスターチス生産量はキク、カーネーション、バラに次ぎ第4位。誰もが知る大品目と肩を並べるほど生産量が多く、マーケットでも必要とされている品目です。昨今は、ブーケなどに使われるおしゃれな品種もたくさん開発され、社会的背景とあいまって人気が上昇しています。尚、和歌山県の生産者さまの受賞は今回が初めてです。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2020 新商品奨励賞


flower_2020_059_01

品目: ネイティブフラワー  品種: グレビリアゴールド(イスラエル産)
産地名: 株式会社 ワイエムエス様(大阪府)


■産地様のコメント

この度は大変栄誉ある賞をいただきありがとうございます。イスラエルの生産者ジェフナーファームのジェフナーも我々同様に品質第一に考え、行動する素晴らしいパートナーです。これからも皆様に喜んでいただける品質を追求していきます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

flower_2020_059_02
(写真:株式会社 ワイエムエス 河本健一様)

【所感】

株式会社ワイエムエス様(大阪府池田市)は、世界20か国・地域以上から花きを輸入される国内でも有数の花き専門の輸入商社です。グレビリアゴールドは、葉の表はフレッシュグリーン、裏はベルベットな質感のコッパーゴールド。この対照的な二つの表情を1本に併せ持つ美しいイスラエル産の植物で、ドライになってからもその魅力を失うことはありません。ブーケやスワッグ、リースなど多用途で活躍。これ1つ入れるだけでデザイン性がアップすると大人気です。グレビリアゴールドだけを束ねてインテリアとして装飾するアイテムとしても注目されました。ワイエムエス様はこのマーケットのニーズを早くから的確に捉えて、生産地であるイスラエルに増産を打診。協業体制を組み、マーケットの要望に応えようと取り組まれた結果、バイヤーのみなさまに高く評価され、受賞の運びとなりました。まさにワイエムエス様のご尽力、その呼びかけに応えたイスラエルの生産者様との連携プレーが奏功したといえます。
尚、イスラエルから日本に輸入される花きは年間約640万本(2019年、植物防疫統計)。グレビリアのほかにルスカスやワックスフラワー、コットンツリーなどが輸入されています。大田花きでのイスラエル産花きの取り扱いは約65万本。グレビリアゴールドやコットンツリーなどはイスラエルからだけの出荷にほぼ限られており、イスラエルの花に対する期待はますます高まっています。




【トレンド分析】キーワードは「アンティーク」「ブルーイッシュ」「ドライな質感」


大田花き花の生活研究所の分析によると、花きトレンドはシャビーシックというキーワードに象徴されるように、ドライな質感と上品さとを併せ持つような品種が注目されています。本年は感染症拡大の懸念から自宅で過ごす時間が増え、住宅環境や在宅勤務の環境を整えるニーズが高まったことに伴い、花や緑への渇望も高まりました。このような社会的背景から、1輪、あるいは1本でその場の空気感に変化を引き起こすような存在感のある花への注目度が上昇しています。
この度受賞された品種の共通点としてアンティークな雰囲気を持つことが挙げられます。また花ものに関してはすべてブルーイッシュピンクからパープル系の色味が受賞しました。このことから、昨今のトレンドキーワードは「アンティーク」「ブルーイッシュ(青みがかった)」「ドライな質感」の3つにまとめることができるでしょう。

<文責>株式会社 大田花き花の生活研究所


2020年12月04日