社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年03月25日

×楽観論、×悲観論、○”可能性論”


 三月に入っても相変わらずの暖冬が続き、切り花鉢物とも2月の低迷相場を引きずっていた。スーパーマーケットやホームセンターの売上高は、4ヶ月から5ヶ月も続く前年対比割れで、天気もさることながら景気が本格的に悪くなってきたのかもしれないと業界では思っていた。それが月半ばを超えて、卒業式や謝恩会需要、お彼岸に入ると市況は一変した。1番大きい要因は、花や緑というコンテンツが他に置き換えられるものではなく、日本の(あるいは「人類」のと言っても良いと思うが)文化生活に欠かせないものであると認識され、需要がしっかりあるということだ。また、ベースにある需要は底堅いが、その上に晴天が需要をさらに拡大するということだろう。天気が良いと花が咲いたり虫が出てきたり、鳥がさえずったりする。現代の花粉症は困ったものだが、花粉症ではない人は心が晴れ晴れしたり気分が良くなる。気分が良くなると花が欲しくなって売れる。そして市況が高くなる。こんな風だ。

 先週のコラムでは、お墓の花が多彩になってきたこと、また、家庭の中での仏壇の花、仏壇がない家庭でも、亡き父母に手向ける花はまして多様であることをお伝えした。実際、季節の花々が今年ほど売れていることはない。例えば仏花用とされていたキンセンカは、周年使われている小菊よりも高い。更に、キンセンカをガーベラと同じように使うデザイナーもいて、3、4年前から季節の花として新しい使われ方をしている。花はファッションと同様、時代によってトレンドが変遷するが、今はインテリアとしての鉢物でも、観葉植物だけでなく“木”が飾られることも多くなっている。

 花き業界はパイが縮小していると言われている。女の子がなりたい職業ランキングでも、ここ数年ランキング圏外だ。しかし一つ一つ見てみると、需要が縮小しているのは葬儀の花、お仏壇やお墓の花だ。他に業務用では、ゴルフ場向けの芝等が縮小している。しかしそれ以外は、今まで専門店一辺倒だった小売のプレイヤーが多彩になっただけで、花や緑のコンテンツとしての価値が下がった訳ではない。ここをまず押さえておきたい。そして、消費のライフサイクルという観点から産業を捉え、可能性を探っていく必要がある。 楽観論ではない。悲観論でもない。“可能性”を信じて探り、現実のものに落とし込んでいくのだ。言うならば“可能性論”である。今の切り花にしても、鉢物にしても、木の売れ具合はどうだろう。花きの輸出にしても、海外から「枝物を」という声は本当に大きい。日本は花き産業の分野で世界をリードしていると言えるだろう。自信を持って可能性を探り、消費者に届くよう販路拡大に向けた活動を行なっていきたい。

   
投稿者 磯村信夫 15:13