社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年08月08日

SDGsと5G時代の会社運営


 常識で判断する事の大切さを訴えたい。例えば、ロシアのウクライナ侵攻だが他国に武力で攻め入り領土を取ろうとするのは犯罪だ。やくざも縄張りでその様な事があるが、それは自国内のことだ。先月のニュースで、本来寛容な人種である中国人だが、クリスチャンディオールが、ミドル丈のスカートを発表した事で、中国の伝統的な衣装に似ていると、フランス在住の中国人たちがパリのクリスチャンディオールに、デモを連ねて抗議をした。常識では、ファッションの世界で、世界の国々の民族衣装的、或いはそこの王朝が使っていた様な衣装等を真似たり参考にしたりしてデザインするのは、むしろ光栄な事で、クリスチャンディオールの自由である。それなのになぜ抗議したのか。盗まれたと思っているのだろうか。何でも政治的に捉えてしまう今の中国の若い世代の発想だろうか。常識で考えればこの抗議と文句を言う事がおかしい、という事がわかる。今、この常識が、通用しなくなっている事も事実だ。

 今、二極化が進んでいる。上中下と所得水準があって国が繁栄していく。良い国とは、健全な中産階級が育って数が多い事だが、16~64歳の人口が多い国でも、中が少なくなり、上と下の所得水準などに二極化されてきている。高級品なのか或いは最低の基準があれば低価格の物でいいとするのか、市場の二極化である。国も民主主義と専制主義だったりしており、ライフスタイルの二極化は、今まで通りの消費主義でいいのか、それとも近頃流行りのミニマリスト的ライフスタイルか。思想の二極化は先ほどの通りだが、保護主義的な、何とかファーストと対して自由貿易主義。これも二極化している。また、雇用も二極化していて、高学歴で高い能力をもった高い所得の人達と、低賃金雇用の人達。アメリカが分断しているのはここだ。中国も同様である。新しいテクノロジーは、所得の二極化を生みやすいため、気候変動を含め、この二極化をどうにか解決したいと遡るが先読みをした国連は2015年、“2030年アジェンダ”を出した。これを受けて各企業へ、自社利益の獲得だけにエネルギーを費やすのではなく、公共的な利益をもたらす公的目的を持った企業として活動する様に社会が要請するようになってきた。企業は、SDGsに取り組む中で、ESG(Environment、Social、Governance)経営を目標として事業運営しており、それをしていない会社は今はもう、社会では認められなくなりつつある。

 では、具体的にとなると、SDGs17項目を2つに分けて考える必要がある。一つ目は、人道的観点から見た問題点を解決する事、例えば、項目2番目の、飢餓をゼロにや、10番目の、人や国の不平等をなくすとか、16番目の、平和と公正を全ての人に、17番目の、パートナーシップで目標を達成しようである。そして、二つ目の環境的側面では、項目6番目の、安全な水とトイレを世界中にとか、13番目の、気候変動に具体的な対策を、14、15番目の、海や陸の豊かさを維持しよう等。人道的な点と環境的な観点からそれぞれの企業が、全てはできないとしても何かを重点的に、自社が積極的に取り組むべきところを取り上げ、社内、取引先を巻き込んで行うという事であり、2030年までにこれらを解決するというこの意思表示が必要なのだ。

 大田花きでは、7つを重点的な課題として取り上げ、取引先とパートナーシップをとって解決しようと取り組んでいる。詳細はホームページをご覧頂くとして、現時点で行っている1つ、SDGs項目9番目、産業と技術革新の基礎をつくろうである。サプライチェーンで、ベストマッチングな流通を行う、これを正に盆の今、取り組んでおり、また同様に、12番目のロスの削減を徹底的に行っている。そのために、今年は盆需要期に開花遅れである事から、例えば、リンドウであれば、頂花が固くても、固切りで出荷してもらう事で無駄にならない様にする。今、足りないのだから必要であり、需要期を外して余らせたら、何の役にも立たず無駄になってしまうからである。また、前進開花し過ぎている品目では、何日間何℃で保冷し、鮮度保持の点では問題なし、という事について説明責任を果たし、買参人に使ってもらっている。こういう運動こそが、サプライチェーン上のそれぞれで、共通の問題意識を持ち、世の中を良くする事に繋がっていく。

 そして、SDGsだけではなく、現在問題になっている、このあらゆることの二極化。これを解決しなければならない。そのためには、5Gの世界が広がるこれから、SNSだけではなく、商売であれば、1to1マーケティングに近い、自分の好みに合ったものが、手に入る様にする事、それはGoogleがそうであるように、システムを使いこなす事ができれば年寄りもジェンダレスで子供達も、金持ちも貧乏も、何処の国でも、という事になり、現在の二極化を経た上で、中道(中庸、中産階級)を歩む人達が多くなるように改善される可能性が大きくなる。繰り返すが、デジタルなツールを使いこなすという事は、職を有利にする事だけではないし、使えない人が職を失う事でもない。それは限定されるかもしれないが、人間には感情があるので、人間特有の仕事をしていく事ができるという事である。デジタルで今より広い視野で情報を集め、片寄った考えをせずデータドリブンにすれば、バランスの取れた考え方になり、従って多様化でありながら二極化の幅は狭くなる。そして、地球全体が良くなっていくこの効能は、人類にとって、非常に大きなものになっていくものであり、それを既に日本ではミレニアル世代、アメリカではY世代、Z世代が体現をしている。  

 


投稿者 磯村信夫 15:46