社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年11月13日

Less is moreを考える


 花にしても、モノやサービスにしても、それから様々な資産、いわゆる土地やお金もそうだが、場合によってはそれらよりももっと大切な健康や、友人関係等の財産も含めて、沢山のものが、我々の周りに溢れかえっている。しかし、それらを集めることに汲々とするよりも、もっとシンプルに生きた方が良いのではないだろうか。あるいは、そういった物が少ない方が良いのではないか。そんなことを、みんな考えている。

 人生を生きる上で、確かにあらゆることが、よりあった方が、何かをする上で楽しい。花も飾った方が楽しい。しかし、反対に「Less is more」で、例えば、いけばなや日本庭園、哲学のように、取り除いて空間を生かすような、捉われずに生きたり、自分の本質に根差したものやサービスを身に着け、受容する。このような形で世の中が進んでいるので、シェアリングサービスのようなビジネスが出てきているのだろう。

 日本の鉢物業界を見ると、市場で、小売店で販売しているものに、寄せ植えがあまりにも少ない。こんなに画一的で良いのだろうかと、オランダ人は思うだろう。一方、切花は、料理でいえば、日本は包丁の文化で、ヨーロッパは鍋の文化だ。日本は素材にこだわる為、素材自体が大変多い。ヨーロッパは加工プロセスや技、その結果生じる総合的な料理そのものに価値を見出す。素材が少なくても、その取り合わせや技術、センスで美味しいものになるのだ。日本の場合、素材が多すぎる。包丁の文化だからロットも小さすぎて、結局、コストが高くなってしまう。『うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる』で、もう一度、我々花き業界も、消費者に花や緑を買って頂くその数を、考えた方がよいのではないか。品種が多いことは大変豊かなことだが、需要が既に少なくなった品種もあるのではないだろうか。そうした品種の調整を検討した方が良い。また、何も無くそうとしているのではないが、流通上の業者数についても、検討した方が良いのではないか。

 人の寿命は長くなり、60歳、65歳でその会社や組織を退職する。しかし、次の会社へ入ったり、ボランティアをしたり、何らかの形で働くようになる。女性も働き続ける人が増えるだろう。一個人が何役もこなしながら生きていく時代、また、ものや情報があふれかえる現代において、「Less is more」の精神で、自分の身の振り方や考え方、あるいは、自宅の空間やオフィスの空間まで含め、真剣に考える時代に入ってきたと言えるだろう。


投稿者 磯村信夫 : 12:06