社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年06月29日

27日(土)のエピソード2つ


 27日(土)、株式会社大田花き第32回定時株主総会が、大田市場事務棟の大ホールで開催された。今回はコロナ禍での開催であったため、極力、書面により事前の議決権行使をお願いしていたが、花市場で唯一株式を公開している大田花きのファン、また花のファンが、一定の人数お越しいただき大変有難かった。その株主総会の際、株主の方からこんな質問があった。「コロナ禍で大変でしたが、どうにか黒字を確保出来たことを大変嬉しく思います。また、その要因は何だったのでしょうか」。令和元年度の事業報告の中で、10月の消費税増税、そして、3月のコロナ禍による卒業式や謝恩会の中止等により、最大の需要期に打撃を受けたと報告していたので、疑問に思われたのだろう。「家庭の中で花を楽しんでもらう」ことが、我々花き業界の基本だ。大田花きは、ブーケメーカーや各カテゴリーの小売店とチームを組んで取り組み、需要を確固たるものに出来た。これが、すれすれだが黒字を確保出来た理由だと考えている。今しばらくは「ENJOY HOME with FLOWERS」を第一に、その上で、業務需要やイベント需要、冠婚葬祭需要に向けた花を流通させていくことが、花き業界や大田花きの役割であることをお伝えし、株主に変わらぬ応援をお願いした。
 
 総会終了後、取締役の一人から、「直売」に関する疑問が論じられた。コロナ禍により生産者が直接販売したり、「直売業者」が生活者に届けたりする事業が、青果物や果物、そして、花でも話題になっている。「直売」がwithコロナで“新常態”となり、「これぞ今の時代の流通」と言う人もいる。しかし、その内容を見ると、卸売市場流通のやっていることと何ら変わらない。いわく、生産者が作り、物流業社が運び、センターないしその会社が値決めや調整を行う。そして、個配業者等に届けてもらう。大きな会社が一社で全てを担うか、あるいは、表立った直売業者の影に隠れて、名前は出てこない協力者が流通過程を担い、「直売」というやり方をお手伝いしているのか。一方の卸売市場の場合には、種苗から始まり、小売店までチームを組んで行うが、どちらにせよ、流通段階の数は変わらない。やっていることは同じだ。
 
 これは海外でも同様だ。私の親友のオランダ系アメリカ人、エイビー・ウィンパレーは、コロンビア大学のMBAを出た後、サンバースト社に入った。ある時、アメリカ最大のスーパーマーケットチェーン・クローガーが花を扱いたいというので、エイビーは各生産者から品揃えをして、サンバースト社の物流センターへ集配、クローガーの物流センターで店舗ごとに出荷調整を行い、各店舗に納品したのだ。その後は、鉢物や花束加工をする場所を東部であればサンバースト社が、西部であれば、懇意の業者へ配送を依頼した。そして、「Flowerfarm」という会社を作り、のちに「ProFlowers」と合併するのだが、そこも自社の名前を前面に出し、特定産地が「ProFlowers」に出荷し、加工センターで花束を作成し出荷するという、インターネット花屋を展開。これも、卸売市場流通と流通段階の回数は変わらない。  

 流通段階が多いと、消費者が払う値段は高くなるだろうか。よく、こう思われてしまうことが多いが、実際は段階に関係なく、競争が減り寡占化が進むと値段が高くなるのであって、消費者は選択肢が多ければ多い程良いのである。話を戻すと、取締役の一人は、取締役会の議長である私に対して、「流通段階の数が変わらないというのに、なぜ、『産直』という名前がもてはやされ、卸売市場の“普通”の流通があたかもそれより劣るという論調になるのか」と疑問を呈し、私に、もっと声を大にして発言をしてくれと言っていた。これは他の卸売市場の社長の皆さま方にも是非ともお願いしたいことだ。反論か何かをしていかないと、「産直」の方が良いという印象が広がってしまう。産地が直接自分の庭先で売るのだったらともかくも、道の駅でさえも販売手数料は平均して15%だ。しかも自分で並べて、売れ残りは自分で引き取る。売り場の一つとしてはもちろん良いが、一定規模以上の生産、また、単品を多量に生産する専門化した産地はどうなるだろうか。「産直も良い」と、多様化の中の一つの売り方としてみるべきだろう。誤解しやすいのは、一般の人たちは、一社で生産・流通・小売販売・お届けを行っているところが良いと思ってしまいがちなところだ。卸売市場を核とした生鮮流通では、違う会社同士が生産から小売までチームを作っている。運命共同体のような、協同組合の思想のようなものがある。誤解されないよう、ここでの一体感、コミュニケーションを、あたかも一つの会社のようにしていく必要がある。また、生活者情報が生産者、あるいは、種苗会社に伝わるようにしていかなければならない。  

 本日は、27日(土)の株主総会と、その後の取締役会でのエピソード二つを皆様方にご紹介した。  

投稿者 磯村信夫 15:20