社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年04月23日

生花店等 花き販売業者の皆様、生産者の皆様へ


生花店等、花き販売業者の皆様へ

 2月のフラワーバレンタインが終わるころから、新型コロナウイルス禍によるはっきりした消費の減退が起こり始めました。卒業式や謝恩会が相次いで中止に、また、結婚式が延期になり始めたのです。今ではお葬式も縮小し、いけばなの花展等のイベントも中止に、更に、人が沢山出入りする駅周辺や繁華街等の専門店も、政府の緊急対策の勧告に従って閉店になる等、花き業界は深刻な打撃を受けています。
 
 しかし、その中においても、生活者は花のある文化的な生活を求めて、ウイルスに感染しないよう注意を払いながら、地元の生花店やスーパーの花売り場で、あるいは、ネットから花を購入しています。家庭需要が確かにそこにあるのです。ご自身も病気にかかるか心配をしながらも、生活者の為に今なお店を開けて下さっている生花店や、スーパーの花売り場の店員の方、また、ネット販売に注力されている方には、本当に感謝をしております。
 
 花は、人を幸せにする為に生まれてきました。「花の仕事って、本当に良い仕事だ」。そう思いながら、私自身は何か“花咲かじいさん”のような気持ちで、人に幸せをもたらせるこの仕事に生きがいを感じていました。その花を生活者に届けること。この、花き業界全体の目標を達成する命綱は、今、お店を開いていてくださっている経営者と、従業員の方にかかっています。花は毎日咲いてきます。弊社も最大限の努力をもって、公共インフラである市場を休まず運営しております。ぜひともご一緒に、病気にかからないよう万全の注意を払っていただきながらも、お店を閉じざるを得なかった同じ花き販売業者の皆さんの分も、生活者に花を届けて下さいますよう宜しくお願い申し上げます。また、現在、残念ながら閉店せざるを得ないお店の皆様方におかれましては、新型コロナ禍後お店ができるようになりましたら大変でしょうが、花き需要復活のご尽力を一緒に行って参りましょう。この難局を一緒に乗り越えて参りましょう。
 
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生産者の皆様へ
 
 これまでの花き業界では、生活者のライフスタイルや年代に合わせた花き生産が行われてきました。例えば、胡蝶蘭は法人ギフト中心に、また、白菊は葬儀用に、草花であれば特にナチュラル思考の強いライフスタイルの方や、30代から40代の人へ向けて。また、ドライフラワーは10代や20代を中心に。このようにターゲットを分けて生産されていました。しかし、新型コロナウイルス禍で生命の危機に直面した今、それが一挙に吹っ飛んでしまいました。特に家庭需要ではない冠婚葬祭や法人ギフトの役割を持った花は行き場が無く、本当に厳しい現状です。家庭需要以外の需要が復活するのは、今しばらくの時間が必要になるでしょう。
 
 しかし、現在、国が「花いっぱい運動」を展開し、地方行政や各団体もそれに合わせて運動をしてくれているおかげもあり、確実に個人消費の手ごたえが感じられます。確かに、現時点では生花店も閉店してしまっているお店が多くありますが、スーパーでの花売り場、ホームセンターの花売り場の活況はどうでしょうか。今後の期待が持てる売れ方をしています。こうした機運は、コロナ禍収束後に、花き業界に今までにない変化が現れる予兆を感じさせます。品目や色、品種により、夏以降の明暗が分かれるだろうと推測されますが、我々卸売市場は、生産者の皆様と一緒になって買い手を見つけていく等、出来る限りの努力をいたします。また、変化後の花き業界に対応していくような次期作付けについても検討し、一緒に生活者に買ってもらう、小売店に仕入れしてもらう努力をいたします。先述したように、家庭需要は今後需要が増えていく有望な分野です。この分野への集中販売を一緒にいたしましょう。
 

 
最後に…
 
 コロナ禍によって、生活者の生活の仕方が変わりました。特に大きいのは、インターネットをさらに多く使うようになったことです。私もテレビ会議を導入しておりますが、その際につくづく思うのは、相手の画面に植物があるかないかで、印象がまるで違うことです。花や緑の大切さがより感じられます。これは生活者も感じていることでしょう。在宅勤務が増え、新たな家庭需要が生まれています。
 
 人が幸せになる為には、「健康」、「お金」、「自然」、「文化」、この4つが一定レベルにあることが必要です。花は、このうちの「自然」と「文化」に当てはまります。ですから、今の生命の危機が収束した後も、各ニーズのウェイトは変化をするけれども、人類が生き続ける限り、花と緑の産業は決して無くなりません。この危機を業界全体で乗り切り、次の舞台へと、進んでいきましょう。
 



投稿者 磯村信夫 15:44