社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年12月16日

2019年、最も大切な施設は定温庫だ


 寒波が日本列島に長居せず、太平洋岸では曇りや雨の日もあり、山は雪が少ない。12月からスキーをしているが、降雪機のある場所以外は、まだ滑れない状況だ。

 温暖化で異常気象が続き、生産者にしても、消費者に花を渡す小売商にしても、季節の需要を捉えながら良い商売をしていくのが中々難しい。労働力の不足、運転手の不足も深刻だ。そこで必要になってきたのが定温庫である。
 
 花を運ぶのに、300キロ圏内であれば4トン車でもペイするが、それ以上だと大型車が必要だ。もっと遠くだとトレーラーだろうか。満載とまではいかないまでも荷を一杯に積めないと、生産者は運賃倒れになってしまう。産地では、荷を集めてから品温を下げるために定温庫で保管する。その間、積載効率を鑑み、どこの市場に出荷するか、どういうルートを通るか分ける。この作業を二日かけて行う。当日出発するのは計画が立たない場合が多く、無理・無駄が多い。また、大田花きが取扱う産地の荷も、八分の一以上はパレット輸送をしている。運転手さんも荷を受ける市場もフォークリフトを使っての軽作業で済み、スピーディーに仕事が進む。現在は、その後の手間を考えた箱の向きや積み方等を産地にお願いする段階だ。一方、市場でも前々日入荷、前日の荷受作業を行う社員が出勤している早い時間帯の商品到着を、運送会社にお願いしている。超過勤務しないで済むし、早い時間なら急ぎ必要な遠方の買参人が、飛行機だけでなく、トラックでも運べるようになる。花は様々な種類が必要で、商物分離出来る品目はそうは多くない。物日の時に一部の商品が出来るくらいだ。基本的には消費地の市場で全ての荷を受ける必要がある。そのため、労働上の「運ぶ、荷受する、分荷する」等の合理化を行う。そして、生鮮食料品花きは「売るに天候、作るに天候」で出荷も需要もぶれるため、その調整面として産地と卸売市場に定温庫が必要なのだ。特に物日の時など効力を発揮する。倉庫業は農協の集出荷場、卸売市場の新たなニーズを受けた仕事である。
 
 中核的なJAと、「4トン一台の量がまとまらない」JAの多い地域において、全農県本部や経済連の集出荷施設に大きな定温庫があれば、生産性が高い仕事ができる。消費地においては中核的な卸売会社が定温庫を設備し、そこで荷を受ける。こう流通していく必要がある。大きな定温庫が必要だと皆が認識したのが、本年である。今後、豊洲市場を手本に、各所で新たな設備投資が行われると思われる。
 
 
投稿者 磯村信夫 12:32
 
 PS:これは切り花の鮮度管理ですが、消費者が買った花をご自宅で一週間もつようにさせるのは、消費者の手に渡るまでの流通過程で品温が1,000温度時間値以内である必要があります(もちろん弱い花もありますが、一般的には1,000温度時間値以内)。そして、市場を出た花がお花屋さんで3日以内に消費者に買われてゆくことを想定し、1,000温度時間値以内にすることは可能です。

*温度時間値の計算
 日中15℃、朝晩5℃ 一日平均10℃だとすると、切り花後二日、10℃×24時間×2日=480温度時間の切り花となります。そして、三日目に市場で取引され、お花屋さんが店に並べる花は+240ですから、720温度時間値の花となります。  
   
1,000温度時間値以内で消費者に買ってもらいたいので、売る日は当日と翌日の2日以内となります。定温庫を使えば小売店で売れる日はあと一日のびますね。  
  消費者の期待を裏切らないためにも、「産地も定温庫、トラックも定温車、市場も定温庫」の時代となったのです。  
  それにしてもお金がかかるなあ—-