社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年03月26日

2018年度、需要の掘り起こしを行う


 年度末、東京ではオフィス街の花屋さんたちが、送別需要等で大忙しだ。組織での送別会なので、フォーマルな素材であるバラの引き合いが大変強い。

 2月後半、私はスキーで鎖骨を粉砕骨折してしまった。そのため、車の運転が出来ず、現在、自宅から歩いて出社している。そこで、火・木・土に道中で挨拶するのが、車で(私が知る限り、今で三台目の、ダイハツの軽に)寝泊まりしている源ちゃんだ。まだ朝暗いうちに通るので、向こうからは見えにくいだろう。起きている時には挨拶をする。前より少し太って、血色も良さそうだ。今月初め、術後に三角巾をつけて傍を通った時、源ちゃんはとてもビックリした顔をしていたが、「大丈夫、元気ですよ」と挨拶し、頭だけ下げて通り過ぎた。彼とはもう、かれこれ20年近い付き合いの挨拶仲間だ。

 花き業界の話に戻ると、『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず』。供給しているものが時代に合わなくなり、需要減になってしまった従来通りの仏花材がある。また、需要はあるのだが、それ以外の花材や物日の花の組み合わせもワンパターンで繰り返してしまい、結局、陳腐化してしまい、単価が安くなったものも多い。具体的には、このお彼岸や謝恩会に向けての花、あるいは、春のガーデニング用の素材は、過去5年間で最も安い単価水準となってしまった。

 もう15年以上も前だが、タイヤのブリヂストン社が、ヨーロッパで業務用の運送店に参入出来なかった時、安全運転そのものを請け負う業者として参入した。タイヤのローテーションから、タイヤの減り具合で運転手の癖を直すこと、新しいタイヤに付け替えること。「“モノ”から“コト”へ」でタイヤを販売したのだ。このように、“コト”をすることによって花が売れることを知るべきである。例えば、私が尊敬するサンフローリストさんは、白金のとあるお宅のご用達のお花屋さんだ。旅行の時の鉢の水やりはもちろん、お帰りになった時の玄関の花まで、お任せいただいているのだ。おばあさまからお孫さんまで、三世代からご用命に預かっている。このように、“コト”をしながら基盤を作る。B to Bでは、マスコミと花屋さん、不動産会社と花屋さんの関係等もそういった基盤を作っているのだろう。

 積極的に、買い手や使い手に“コト”に対する働きかけ、商品施策を行うことが足りていない。今後、行っていく必要がある。私個人からすると、差別的取り扱いの禁止、受託拒否の禁止、支払の早期化を旨とする中央卸売市場の卸売会社として、仲卸、そして、地域の花文化を発信する地方の花き市場と一緒になって、消費と生産の現場が活性化するよう、経営努力していく所存である。

 農産物だから、時の流れはゆったりしている。しかし、消費はめまぐるしく変わる。大きな時代の傾向を見て、ヒットする花や緑のマッチング、素材の開発を、大田花きは得意としているので、私も参加して取り組んでいく。トレンドの花形であるテッポウユリやアマリリス、床の間に飾った花々の掘り起し、また、今流行のドライフラワーになる素材等を検討する。更に、花は現在、黄色、オレンジ、緑の濃淡等、色幅を揃えているが、次に流行るのは藍、多彩なブルーだ。これを積極的に開発に取り組んでいきたいと思う。



投稿者 磯村信夫 15:51