社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年12月25日

2017年、花き流通で起こった重要事項


 花き卸売市場から見た、今年起こった大きな出来事をお知らせしたい。

 1、地震と集中豪雨、長雨や日照不足、台風によって、日本の農業は甚大なる被害を受けた。毎年起こる異常気象は、農業の難しさを痛感させる。生産者の皆様が少しでも安心して生産出来るよう、卸売市場として、消費者の好むものや欲しい時期等、情報連絡を密にとっていきたい。そして、消費者に生産者のご苦労の面まで提供出来るよう尽力していきたい。更に、その為にICTの活用が不可欠だと考えている。

 2、ネット社会となり、セリ前価格が全国を走るようになってきた。情報取引は日本の花き市場どこでも行われるようになったが、そこで増えたのがトラブルだ。「返品」はその一つに過ぎない。それを無くすためには、サプライチェーンの中でのリスクとコストについて、買い手に伝えていくことが必要だ。生産者においても、小売店においても、単価ばかりが先に立って、そこで思考が止まってしまっている。情報取引・せり前取引では、鮮度、単価、スペック、納期、コスト、そして、リスク。ここまでを加味して考えられる業界になっていく必要がある。そうでないと、結局、安売り競争になって、生産者がダメージを受け、消費者は欲しいものが手に入らなくなったり、高く買って貰わなければならなくなる。

 3、人手不足が本格化した年であった。特に不足していたのは運送店、産地、卸売市場である。結局、サプライチェーン上のコストアップに繋がっている。共通パレット、共通規格箱の展開だけでなく、産地から小売りまで、コードを統一して使えるようにする工夫が必要だ。各社がインストアコードを使用していても、クラウドコンピューティングでコード変換すれば、あまりコストをかけずに出来るのではないだろうか。

 4、農林水産業、関連業界のパラダイムシフトの一年だった。人口動態による生産消費の変化を背景に、国は「農林水産業・地域の活力創造プラン」を打ち出し、系統農協の改革、そして、卸売市場の改革を議論した一年だった。各組織は試行錯誤し、迷走する団体もあった。青果・花きの価格は年明けから低調、秋は天災もあり上昇した。単価が上がったのは、日照不足と台風被害による天災によるものだ。もう一つは、産地がやはり「卸売市場にピンからキリまで任せるのが良い」と、出荷先の大宗を卸売市場にしたこと、つまり、卸売市場プラットフォームを選択したためだった。JAや大規模農家の商売上の取り組み相手を、地元市場と、大消費地の卸売市場として、共にやっていこうというのである。

 5、花き流通業界では専門店の数が減少し、量販店は売り場面積を物日に広げ、普段は縮小する所が多かった。その為、日本の花売り場の面積は、通年では減少した。だから量販店の売場面積が縮小した2月、4月、6、7月は、今迄にないほど市況は低迷した。かつて、街から八百屋さんや果物屋さんが姿を消した時は、ギフトや仕事需要を除き、個人消費用の売場面積は量販店が代替した。その結果、青果売場の面積はあまり減らなかった。花の販売数量が減ってしまったのは花の売り場面積が減ってしまったからで、普段から売れるようにしなければならない。もっと家庭に花を、「オフィスに花を」のフラワービズ、フラワーフライデー等の消費宣伝活動を推し進めなければならない。

 6、葬儀の一輪菊需要、特に、最も量の必要な白菊の需要減で、菊の多様化時代が始まった。菊は開花コントロールが出来て、日本の天候で作りやすく、花もちも良い。この菊を他の品目に変えるのはもったいない。形状や品種を変えて、少なくとも今の作付面積を維持したい。現に、年末のディスバッドマムは堅調で、新しい定番になったと思われるのが、ピンポン一輪、スプレーカリメロ等である。菊の今後の方向性が示された年であった。

 最後に、2018年の花き流通会社の方針が明確になった年であった。人口30万人都市以下は、デパートを必要としないと言われるようになったが、県の一番、二番の都市で、官庁街、ビジネス街、デパートやブランドショップのある通り、飲食街のある通り等の賑わっている地域に、地域文化に根差した花の消費があり、そこには花き卸売市場が不可欠である。しかし、人口減と共に、地域内に市場が複数存続することは許されなくなってきている。これは、場外仲卸、問屋も同様で、卸・仲卸と役割が別であっても、一つの場に結集しないと、存続出来ない状況になってきたのだ。

 以上が、生産地と地元の消費者、小売店に役立っていく卸売市場の、今年あった大きな出来事、今後の方向性である。

投稿者 磯村信夫 : 16:10