社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

[]

2022年05月30日

1,000温度時間値で、店頭まで届けよう


 暑くなってきて 、花もちが心配な季節になってきた。バクテリアチェッカーでバケツ輸送の水や仲卸さんのバケツの水をチェックすると、黄信号はもちろんのこと、赤信号のレベルまで、バクテリアが繁殖してしまっている水もがある。露地ものも増えてきているので、茎にはバクテリア繁殖の元がある。今後とも、水を取り替えたり、バケツや花瓶を洗浄したりして、バクテリアが繁殖しないよう、滅菌材の入った栄養剤を入れよう。そうしないと、流通過程でも品物を悪くしてしまう。むしろ乾式にして温度管理して流通させた方が、鮮度が保てることも多い。

 今年は色々なものが値上げになっているから、消費者に渡るまでの生産・資材コストも本当に割高な経費がかかっている。しかし、消費者に習慣的に花を買ってもらうには、定温流通にも経費をかける必要がある。産地で切って出荷してから、農協の集出荷所、トラックでの輸送、卸売市場の卸・仲卸での温度管理、小売商が市場から持って帰って店に着くまで、ここまでを、1,000温度時間値※① 以内で出来るようにすべきだからだ。1,000温度時間値を上限に小売で花を販売出来れば、元々日持ちのしにくい種類の花を除いて、通常はそこから10日間、当日入れて3日以内に生活者に販売すれば、生活者の下で1週間もつ計算だ。業界全体で、収穫から店頭に並ぶまでをこの1,000温度時間値を目標にしていかなければならない。そのために、定温管理、定温設備投資がどうしても必要となるのだ。電気代は上がった。それでも、暑い夏の日本では、集出荷所からトラックの中、卸売市場の卸・仲卸、小売店までコールドチェーンを行うことが必要だ。また、この一連をデータロガー※② を入れてチェックしていく等も必要だ。それが出来ないと、消費者に花もちの良い花や緑を保証できず、失望させてしまうこともあるだろう。消費の拡大が無ければ、生産も拡大出来ない。600Km以上のトラック長距離輸送の時、箱の中の花の品温を下げる為、差圧予冷を出荷地、あるいは輸送の時、卸売市場ですることが望ましい。



※①花もちには諸条件があるが、切花収穫後の温度×時間が重要だ。例えば一日平均20℃だとすると、切り花後二日、20℃×24時間×2日=960温度時間となる。オランダは500温度時間値だが、日本の夏は暑い。だから、日本の場合、まず1,000温度時間値とする。1,000温度時間位で小売店に届けられれば、消費者の家庭で一週間花をもたせることが出来る。

※②温度や湿度などを、時間を追って測定し、記録出来る電子記録計。 また、最近では、温度×時間値を目で見て確かめることの出来る商品も販売されている。
⇒インパック(株)様のフレッシュネスメーター「TTtimer」



投稿者 磯村信夫 17:14