社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

[]

2018年05月07日

100年時代を生きる中で


 10年は「1Decade(ディケイド)」という単位で、3 decadesが1generationだ。「10年一昔」や「会社の寿命30年」等と言われる。

 2020年には東京オリンピック・パラリンピックがあり、少子高齢化の日本でも、今後のことを前向きに考える機運が高まっている。しかし、この2020年から団塊世代が後期高齢者になり、多死社会突入となる。近頃は団塊ジュニアが高齢者になる2040年問題も叫ばれるようになってきた。国連では、2030年までの持続可能な国際目標を『SDGs(Sustainable Development Goals)※』と策定し、貧困や飢餓、健康や教育、そして、ジェンダー、水、エネルギー等々、世界が抱える17の項目を、力を合わせて解決しようとしている。人生100年時代に突入し、お年寄りになっても、前向きに生きていこうとする論調が今のところ多い。

 花き業界は20世紀最後まで右肩上がりで順調だった。その後、高価な花は売れなくなったが、経済が停滞していても、「未来を約束」してもらおうとする潜在意識から、何か落ち着く先祖崇拝があったので、お墓参り等が花の需要を堅調に導いていた。昔を想う気持ちは、民俗学者・柳田国男が言うように、「未来を約束するもの、その保証」だ。未来が不安であればあるほど、ご先祖様を敬う。この先が不透明であればあるほど、老舗を尊んだり、過去から続くものを未来の手形として敬う。古いものをもう一度見直そうとする機運には、現在の人口減少や、ICTでの世の中の変化、日本経済の国際競争力の衰えで未来が不安なことからの、過去を想ってのものかもしれない。その中で、団塊ジュニアの人達が経済的に力をつけてくると共に、また、任天堂やソニーがもう一度人気になってくると共に、自信が持てず不確実だった自己が確実になってきて、自信を持つ人が増えてきている。

 これからの日本の価値観は、「喜びや幸せ」が重要になっていく。時間の使い方、お金の使い方もそうだ。花きも、多肉植物やサボテンだけでなく、生きている自然のインテリア植物、ハーバリウム、シャンペトル風の花束、ドライフラワーになる素材が人気となり、新しい花屋さんが目立つようになってきた。幸せに生活をするという”コト”消費の中に、花や緑というものが入っていったのだ。これらは2030年までの国連の「Sustainable Development Goals」の一つである、健康や森林や、水の大切な資源の確保等の意識に結びついてきているのではないか。我々は、たとえ人口が減っても、高齢化しても、これらの解決を目指していかなければならない。実践出来るように花き産業はお手伝いしていくのだ。ここに、我々の仕事の意義と業界の繁栄がある。この連休中、10年タームで考えた際に思うことであった。

※SDGs(Sustainable Development Goals): 2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2016年から2030年までの国際目標。17つの内容は①貧困、②飢餓、③保健、④教育、⑤ジェンダー、⑥水・衛生、⑦エネルギー、⑧経済成長と雇用、⑨イノベーション、⑩不平等、⑪持続可能な都市、⑫持続可能な生産と消費、⑬気候変動、⑭海洋資源、⑮陸上資源、⑯平和と公正、⑰実施手段(パートナーシップ) 。


投稿者 磯村信夫 12:53