社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年06月20日

23年度、来年度もブレ幅小さく花き流通するために


 今日のせりに、常陸農協大宮地区 奥久慈枝物部会が、ウクライナ寄付金を募るため、自分たちの今日の枝ものの売上げを全て寄付をする事業に取り組んだ。せり前アナウンスを頂いたが、この部会は目的の一つに、耕作放棄地をこのままにしてはいけない。桃を植えて、ひな祭りのとき、首都圏の子供たちに喜んでもらおう。また一つに、農業はすばらしいので、皆さん農業をやろう。枝ものは、浦和、大宮など江戸時代から伝統を継ぐ産地が、都市化で無くなりつつある。自分たちが、日本の伝統を受け継いでやっていこう。このように仲間を募り、いつの間にか100人を超え、大変すばらしい活動をしている。地域の産業であり、文化の担い手である農業者が主役になって、活動をしているから、ウクライナの惨状を見るにつけ、どうしても自分たちでも、何か援助をしなくちゃいけないと、みんなが思っていたそうだ。そこで、今日の部会みんなの出荷物を、大田花きでの売上げをユニセフに、ユニセフから必ずウクライナに届くよう手配をして今日の日を迎えた。せり前のご挨拶は私たちの心を打った。 買参人は、その心意気に賛同し、むちゃくちゃな高値ではないが、値切ろうなんて気持ちはなく、率先して常陸大宮の枝ものを買ってくれた。BtoBで買うということは、損得勘定優位だが、BtoCの場合、応援するこの気持ちが、買うという行為の中にある。倫理的商品など、まさにこれが圧倒的なところであろう。だから、小売店も今日の枝ものをウクライナ寄付運動の枝ものとして販売し、そして、産地名を書いて販売してくれると有難い。

 枝ものの場合、肥料があまりかからない。苗も国産のものが多い。輸入のものは、普通の苗代と同じように高くなっているが、来年再来年を考えたときに、大田花きでは小売店の皆さんに枝ものの比率を増やしてもらおうと提唱している。それは、この値上げ値上げの中で、生産経費が本当に上がっているからだ。その中でも、枝ものが、出荷運賃や梱包費段ボール代等を入れて、コスト増が2割未満で済むのではないかと予測しているからだ。

 話がずれるが、17日(金)に日本花き生産協会の総会が大田市場で開催された。大田市場花き部の代表を私がしているので、ご挨拶をしたのだが、とにかく日本の花つくりの人が生産協会に入って、横のつながりを持ってもらいたい。農協の系統共販の人、事業家農家の人、道の駅などで直売している人、とにかく花をお金に換える人、生活の糧にしている人は入ってもらいたいとお願いをした。なぜ会員を集めてもらわないといけないかというと、農業は、地域の産業で、共撰共販を行っているところ、あるいはグループ出荷もそうだが、地域の特産物の花を作ろうとする生産出荷団体だからだ。シャンパン、ゴーダチーズではないが、地域表示があるだろう。地域ブランド化すれば強い。一人ひとりの技術もあるが、その地の天候、風土、文化これが煮詰まったのが、生鮮食料品花きの地域特産だ。事業家農家もそこから、出発したが、工場経営と同じように、自分の農場経営で生きていくために、特産でないものも作っていかざるを得ない。周年作り、周年人を雇っていかないといけないからだ。そうなると、周年の運営というものが基本となってくるので、競争の原理に則って作って行くし、企業秘密も出て来る。そうなると、場合によっては、周り近所と仲良くしないで、地域社会の中で活動することになる。それはナンセンスだ。その農場が、自らバックオフィスを持っているのなら農協は必要ないだろう。しかし、プロモーションやマーケティングだとか、販路拡大だとかというときには、全農県本部の力が必要となる。場合によっては便利な資金調達もそうだろう。全農県本部によっても違うが、取引きの深い全農岩手では、新渡戸稲造の精神で、まっこと農業者が主役であるかたちをとり、産地の足腰が強くなっている。だから、小規模の人も入ってもらている。

 今後、生産者の問題として、消費税がインボイス制度になったときに、課税売上高が1,000万円以下の免税事業者の花作りは、どうしたらいいか聞きに行くところがあるのだろうか。お世話する機関があるのだろうか。肥料が高くなって、全農はないよりましとカナダを中心に手を打って、危機管理ができているなという好印象を世間にあたえた。他の肥料を扱うところは、入手すらできないところが多い。これでは農業ができなくなる。種苗の値上がりも大変なものだ。花の生産者のコスト高は、石油など、今政府が、急激に物価高にならないように、補填作業をしてくれているから良いが、肥料、飼料、消毒薬そしてなによりも種苗費。ハウスの資材、電気代。もう、今年は作付けてしまって、計画もしているので、しょうがないからやる。でも、さらに値上げが本格化する来年の作付けを考えないといけない。ここが今、最大の心配事だ。

 輸入商社の皆さん方もそうだろう、リパックするにも人手不足。もう既に、いろいろなものを運んでいる運送会社が、花の縦箱から、とりわけ水の入っているものを運ばないと言っている。もちろん、バケツの花もそうだ。もう既に、花専門の運送会社と、系統農協傘下の運送会社しか、水入り縦箱、バケツの花を運んでくれない状況だ。でも、人手不足だし経費を削減したいので、生産者はバケツで水をつけたまま、次に段ボール立箱で、作業効率も良いし、こうしたいと言っている。こういう状況が、現在である。

 輸入品も、潤沢に入るというのは為替問題からして、世界の飛行機、船の運送事情からして、なお難しい。そうなると今年は、1割ぐらい少なくなる可能性があります。このまま無策でいると来年は、年金が65歳からだから、年金を貰っている人、とりわけ70歳以上の人は、花の作付けをやめるのではないか。それか、かなり作付けを少なくする。採算が合わなくなったときに、年金のお金を突っ込むことになるので、今の値上がりを考えると、半分か作って60%。そんなふうに思っている人がほとんどだ。ずっと安かったユリが、今、北半球球根から南半球球根への端境期になっているが、来期の球根価格は150%以上200%未満だ。そんなに球根が高いのに、ユリを高く売ってもらえるのか。海外に種苗を依存しているところは、今年はまだ良いが来年は、という人ばかりである。これが現状だ。

 これを踏まえ、大田花きとして、生産者には、今年の花の出荷量は、一割ぐらい少ない可能性があります。来年は、さらに今年に対しても、2割ぐらい減ってもしょうがない状況です。2割で済むかどうかも生産費高、出荷費高を考えるとおぼつかない。しかし、それでは、生活者は困るし小売店ではやっていけない。だから、作付け数量、生産者の数、卸売市場(卸・仲卸)の数、小売店の数、数の調整局面であることは事実だが、続けていこうと思っている人にとってビジネスチャンスでもあるのです。生産であれば、条件のよい畑で、肥料がこれだけ高いから作物により土壌分析し少ない肥料で済むようにし、植え幅を広くして製品化率を高める。立派なものばかりでは、需要のミスマッチとなるので、ピンチできるものはピンチして本数を稼いでもらう。契約取引などの場合、入り本数を多くして、運賃を稼ぐ。現時点で段ボールの古紙は、今までよりも25%高くなっているが、段ボール価格は絶えず動いている。安いときに発注するなど、来年度に向けて、今年どうすればコスト削減し生産できるか、ここを一義にして考えてもらう、今期は来期の勉強の年にする。
 

 参院選の争点の一つが物価高であるとおり、農業者の生産費高に対して、小売価格をあげてもらうことは必要ですが、それで、仮に2割上げて頂いたとしても、どこまで補えることができるか。ぜひとも買参人の皆さんは、ご利用の市場を通じて、同志である生産者また輸入商社の経費増の話を聞いて頂いて、それを理解し、消費者にも理解して頂く。 卸売市場であれば、市場間ネットワーク化。仲卸、花束加工業者、小売であれば、今のサプライチェーンをより太く。(相場で、取引先を増やすと結局、医者の車引きではないが、短期では良いが、中期3年で考えると損することが多い。) それぞれの立場で、流通経費を削減し、市場は、ご出荷頂いている方々にそれを伝える。少しでも安定した花き流通をしていきたいと思っています。  





投稿者 磯村信夫 18:12