社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年11月23日

花屋さんに行くことはカッコいい


 (株)大田花き花の生活研究所・桐生所長によると、9月の切り花消費について、二十代、三十代、五十代は、前年より多く購入しているが、それ以外、特に四十代、六十代の方たちの消費が前年を超えないため、全体で前年比を大きく超せない状況が続いているそうだ(総務省の家計調査から分析)。私も都内各地で生花店を見て回っているが、確かにコロナ禍で年配の人たちの出回りが少ないように思う。この年代に向けてのアプローチも必要だ。  

 さて、花のサブスクリプション※は、若い人たちの利用が多いようだ。確かに世の中は非接触型の流れではあるが、しかし、それだけでなく、生花店にも足を運んでもらいたい。自分で花を選ぶ。花屋さんに花の名前を聞いたりして覚える。花について知る。こういった経験を通して、「花屋さんに行くことはカッコいいコト、自分が好きな花を買うコト」だと生活者に思ってもらいたい。

 一般の生活者が生花店に行っても、自分で切花を選んで買う人は「花好き」の人だろう。大抵の人は花屋さんがオススメするアレンジや、花屋さんに予算やイメージを伝えてアレンジを作ってもらうことが多いのではないか。この「自分で選ぶ」ことが少ないのは、生花店特有かもしれない。飲食店に行くときは、「○○を食べたいからここにいく」、「自分の食べたいものを選んで注文する」等、みんな自己主張をするだろう。コンビニでも、「このコンビニの○○が欲しい」と店舗を選んでいるのではないだろうか。洋服も同様だ。一方、花については、花の知識がないから、「なんとなく花屋さんに入りづらい」であったり、「興味は漠然とあるのだが、何か気恥ずかしい」と、選ぶ以前にこのような考えを持たれている方もいらっしゃるのではないか。ましてや、「自分で花を選ぶ」ところまで来ているのはかなりの上級者だ。

 花屋さんは親切だ。例えば花束だったら、3,000円で私たちの要望を聞いてくれて、世界でたった一つの花束を作ってくれる。手作りでここまでサービスする業種は他にない。ケーキ屋さんはそうしているだろうか。お寿司屋さんにカウンターで座っても、そこまで我々の意向を組んでくれるだろうか。そう、花屋さんは親切なのだ。だから、そんな花屋さんと話をしてみる。花屋さんに質問して、自分で花を選んでみる。花の購入を「冒険」と捉え、チャレンジしてもらえるようなPRが必要ではないか。そして、はじめての花屋で花の魅力を知ってもらい、「花の名前や産地を知ること」、「花屋へ行くこと」はカッコいいと思ってもらいたい。行きつけの花屋さんがあるなんて、とっても素敵な筈だ。「花屋へのイメージ」の変換も、もっと表に出していくことが必要だ。これを私は、当社の広報を指導していただいている㈱パラフさんからもご提案いただいているし、今、世の中はこの段階にきている。

 日本花き振興協議会が展開している「はじめて花屋」では、初心者に向けた花飾りの方法等を展開しており、花を気楽に購入してもらうPRを行っている。気軽に花屋さんに行って、そして、仮にもう出来たブーケを買うにしても、色々質問して買ってみる。この楽しさを感じてもらいたい。「花屋さんで買うこと自体が楽しい」ということを、コロナ禍で三密の問題もあるが、今の日本社会で習慣づけたい。

 サブスクリプション※ ビジネスモデルの1つ。商品ごとに購入金額を支払うのではなく一定期間の利用権として料金を支払う方式。「一カ月○○円で使いたい放題」、「一カ月○○円で月3回まで利用可」等。

投稿者 磯村信夫 15:52