社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年02月01日

花の春、はじまる


 何軒かの仲卸会社が、旧正月向けの花き輸出で今週は大忙しだという。今年の旧正月は2月12日だ。10日位前から家やお墓の掃除を行い、家族で過ごすための準備が始まる。儒教の文化圏への花き輸出が中心だが、この時期にトップだった香港への輸出量が減り、中国大陸とベトナム向けが増えている。韓国は横ばいだ。シンガポールもコロナ禍でオーダーは例年よりも少し減少したそうだ。飛行機便がこれだけ少ないから、スペース取りが大変だろう。国によって、好まれる花は異なるが、枝物類と球根のグロリオサやラナンキュラス、そして、日本のお家芸的な生産物となりつつあるスイートピー等が輸出の中心だ。  

 さて、昨日1月31日は「愛妻の日」だった。新潟県、富山県、埼玉県では、この日にチューリップを贈ろうとPRしているが、一般販売はどうだっただろうか。私はスーパーで妻にチューリップを購入した。そこで思ったのだが、昔と違い、桜や桃の枝物は堅調なのだが、ピンク色が全体的に弱い。黄色やオレンジ、グリーン、青等の色合いが人気だ。あとは“ナチュラルなもの”も人気で、色よりもむしろ形質にこだわりありか。昨日私が購入したピンクのチューリップは、品質も良かったのに、割安に感じられる値付けであった。

 コロナ禍の中でも、個人需要は堅調だ。従って、個人需要向けのスーパーの野菜売り場や八百屋さんと同じような、価値と需給バランスを反映させた価格設定を、花束加工業者や小売店でも行うことをお勧めしたい。価値と需給バランスを反映させた価格、これは市場での時価としてある。時価が高いとき、スーパーではキャベツを半分や四分の一に切り、個食化して売っている。花きは二分の一、四分の一には出来ない。せいぜい、1鉢や1ポット、1本単位でバラすくらいだ。花束にするとき、売価を合わせるといつもよりボリュームが寂しいと感じれば、葉物や枝物を取り合わせたり等の工夫が必要だ。

 もう一つの売り方は、年間を通して同じ価格で販売する方法だ。現在のコロナ禍による緊急事態宣言により、鉢物の平均価格は前年並みから若干プラス、しかし、切り花は三割安の推移となってしまっている。得をするときもあれば、損をするときもあるが、年間を通して同じ値段での販売は、消費者に分かりやすい販売方式として人気である筈だ。

 変動型(小売価格はだいたい同じだが、ボリュームを変化させるやり方)、年間同価格のやり方と両方あるが、私はもう一度成長期に入るために、変動させるやり方をぜひともお勧めしたい。新しく花を販売し始めるところは、ネット販売や、サブスクの形態が多い。確実に、消費者に向けたアプローチの数は増えている。ぜひとも、消費者に分かりやすい値段設定で、消費を拡大してほしいと思う。

 最後に、日本花き振興協議会では「Okuléte gommen(おくれてごめん)」プロジェクトが、(一社)花の国日本協議会ではフラワーバレンタイン&3 LOVE STORIES プロモーションが行われている。世間は静かにしなければならないが、「花で騒ぐ」なら問題あるまい。これらのキャンペーンに花き業界は忙しく立ち回る。それがこの2月である。  


投稿者 磯村信夫 11:32