社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年05月27日

花のマッチングとは、生活者の実態を細かく観察し、生き方とライフスタイルに合った花を供給すること。


 新聞を読んでいると、ここのところ「マッチング」という言葉がよく出てくる。大田花きも、生産から小売まで、協働して用途別の単価や納期、仕様の花の流通を目指す「フラワー需給“マッチング”協議会(FMA)」の事務局を務めている。国から補助金をいただき、本年が2年目の実行段階だ。成功の方程式を作り、今後の花き業界を活性化させようと努力している。

 「マッチング」という言葉がこれだけ出てくるのは、実は世の中は「マッチング」していないことが多いということだろう。昔のように「生活者みんなが一つの方向を向いている」と大量消費を期待しても、現代は消費が多様化し、更にモノを所有しない「シェアリング」の時代となった。手間暇かけて企画、制作した割にはビッグヒットしない。最悪、赤字となってしまうこともある。そう供給サイドが時代を嘆いている。そして、不一致が分かっても、実際にどのように「マッチング」させるか、その対応の難しさがあだろう。ダイバーシティ(=多様化)を認める。「個」を対象にする。その上で産業界は個人の属性別、ライフスタイル別にパターンを掴み取り、パターンごとに価格・納期・仕様を決めて製品やソフトのサービスをカスタマイズすることが必要だ。では、これをどう花や緑で実行していけるだろうか。花き文化を担っているいけばなの先生やフラワーデザイナー、また、建築家やランドスケープ設計者、家具屋さんや種苗会社等の協力を得ないと、パターン別にマッチした花を届けることは難しいだろう。本当はもっと細かく、花き業界のアンカーである小売業者のカテゴリー化、パターン化にマッチするだけでなく、生活者の生き方と属性(世帯数、年齢、所得、ライフスタイルや地域等)を考慮し、それに合う花や緑を供給することだ。ロングテールのものも多く生産・流通しているが、更にセグメント・マーケティングを行い、個々の需要をマッチさせていかなければならないのだ。
 
 まずは需要ごとに花や緑そのものの仕様や流通上のサービスをカスタマイズすることが、花の「マッチング」の第一歩と言われる時代に必要となってきた。


  投稿者 磯村信夫 16:53