社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年05月06日

花き消費は反転、供給増をお願いしたい


 本日は10連休最後の日だ。仲卸通りもセリ場も、普段の祭日の月曜日とは全く違い、セリ開始前の時間も熱気で溢れていた。

 今年のGWを振り返ると、平成から令和になるにあたり、新元号を「花を飾って迎えませんか」と販売した店は、いずれも大変売れ行きが良かったようだ。販売したアレンジには主にディスバッド菊を使ったところが多く、令和を祝う影で、5月1日「スズランの日」が霞んでしまったかもしれない。また、亡くなった両親への家庭用の仏花も、長いGWで時間があるため、お墓参りの仏花も大変よく売れた。もはや恒例となってしまった連休前の白菊の低迷が、本年は令和需要と出荷量の減少も重なり価格が反転した。店でよく売れているが故に、みんなが菊類の手当てをし出したのだ。
 
 さて、12日の「母の日」を目前に、特に母親が施設に入居している人たちは、この連休中に早い「母の日」をした人が多かったと聞く。連休中もカーネーションが売れていた。そして本日、会社やレストランが平常になってくるにつれ増える生け込みの花や、週末の母の日に合わせた結婚式用の花、そして、「母の日」や「母の日参り」に向けての品揃えが行われ、世の中はまだゆったり時が流れているが、一瞬一瞬を大切にしているかのように、花市場では緊迫した空気が流れている。
 
 「母の日」用の商品は“ギフト”だから、包装紙にも価値があるデパートや、専門的な知識のあるお店が選んだ切花や鉢物が、当然だが価値のあるギフトとして捉えられる。今までは「母の日には花だ」と、普段は花を販売しない業者も「母の日」に花のプレゼントを扱っていた。それが、宅配運賃の値上がりや、組織的なノルマ販売の問題が話題に挙がったりして徐々に少なくなった結果、もう一度、専門店にお客さんが戻ってきた。だから本日、専門店の方は一生懸命仕入れをしている。しかし、その影には、花きの国内生産量が減っていることがある。大手市場の多い東京・京阪神の花き卸売市場で5%減位、もっと輸送費がかかる遠方になると、政令都市でも10%近く出荷量が少ない。そんな話を、「感覚的だが」と前置きして、地域の卸売市場の社長さんたちは話している。そんな彼らに、私はこう申し上げている。「単価水準を見ると、花きを生産した方が利益の出る野菜や果物が多くあります。また、今後は輸入・国産共にチルド商品が多くなり、野菜の廃棄ロスもどんどん減っていきます。花の作付面積を増やしていかないと、園芸農業そのものの面積が減っていくことになってしまう。そうならないよう、早く地元の産地へ花き生産を増やすよう促し、活況化させてください」。
 
 花きが今後良くなっていくことの芽が、様々な場所で出てきている。しかし、だからと言って、今までと同じ花や緑の生産を続けていけば良い訳ではない。例えば、従来から使われている仏花や葬祭装飾の花材、特に従来型の一輪菊や小菊は、価値観の多様化とともに確固たる地位が揺らいでいる。それはまるで、フォーマルウェアがどんどん多様化した結果「ダークスーツだったら問題ない」等、一口にフォーマルウェアと言っても、昔からのワンパターンでは無くなってきているようなものだ。このような現況であるから、仏花素材だけでなく、三本立ちのコチョウラン鉢も、次をどうしていくか、生活者の好みをよく考え生産増に転じてもらいたいのだ。

 現在、消費の現場では時代の要請に合わせて枝物を使おうとする動きが多く出ている。これは切花類においても、鉢物類においても同様だ。しかし、枝物は年数がかかるので急には増やせない。その代り、季節感のある、エコロジカルな草花類の作付け増を生産地に是非お願いしたい。本日の大田市場の緊迫した雰囲気から、そう感じた次第である。

投稿者 磯村信夫 15:55