社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年05月11日

花き業界全体で取り組みを


 「今年の5月は『母の月』」と言っている我が家にも、都外に住んでいる義理の娘からは郵送で母の日ギフトが届き、歩いて5分の所に住んでいる娘は、一人でカーネーションの花束を妻に持ってきて、ちょっと話して帰っていった。例年であれば、みんなでお茶や食事を共にしたりと一家だんらんがあるのだが、今年は近所に住んでいる娘だけが顔を出しに来た母の日であった。随分と今までとは違った母の日だから、通常なら今週は「遅れてごめんね」の母の日週だが、本年は一か月丸々を「母の月」として、SNSやメディアを通し発信していきたい。
 
 新型コロナの感染防止対策のため、集うことが出来ない。花き業界へのダメージは深刻である。いけばなやフラワーデザインの教室も開けないし、華展等のイベントも中止となっているので、華道家、フラワーデザインの先生方が、芸術、舞台の芸能人と同じようにお困りだ。需要が大きく縮小している冠婚葬祭は、この分野に特化した生花店の方々が担っている。また、その生花店をサポートする仲卸も、「大田市場では、この分野ではこの仲卸」と仕事が集中し専門化している。特化しただけに、その生花店や仲卸にダメージが大きい。荷動きを見ると、八割減、七割減というのもざらだ。ショッピングモールや駅ビルに出店している生花店も休業を余儀なくされているから、社員の皆さん方も休業状態だ。繁華街のいけこみや夜の街では花がとても使われるが、それらの需要もない。法人需要の胡蝶蘭の鉢をはじめ、観葉植物やその他装飾も、会社が動いていないのだから当然、動きが鈍い。ホームセンターでも政府や地方自治体等の指示に従って休業しているところも少なくない。これだけ需要が狭められると、今後ともお店を続けていけるのか、思案されている経営者の方も多いだろう。後継者がいるところは頑張っているようだが、仕入れに顔を見せなくなった生花店が出てきている。廃業を考えているのではないかと心配になる。そして、これだけ生花店が困っているということは、生産者も同様に困っている。厳選して出荷しているから、モノによっては例年の二、三割安ぐらいまで相場が戻ってきたが、それでも国内外の飛行機便がこれだけ減便されると運べない商品も出てくる。
 
 「8:2の法則」で良く知られるパレートの法則だが、もう一つ、「2:6:2の法則」というのも存在する。いわく、「言われなくてもやる人」が2割、「言われたことしかやらない人」が6割、「言われたこともやらない人」が2割。人々が集団やグループを形成する際、このような比率が自然発生的に存在するというものだ。新型コロナ対策でもこれが当てはめられ、「言われたこともやらない2割」をどうするか、社会は頭を悩ませている。日本人はセロトニンが少なく心配性の国民なので、「言われたこともやらない2割」は、全体の数値から見ると、今の状態ではもっと少ないと思われる。そして、ルールに従わない人を周りが強制しようとする。それゆえ、従わざるを得ないようになっている。これが日本流の今回の対処の仕方だ。
 
 パレートの「2:6:2」の法則は、大量消滅の引き金として、生花店や生産者にも当てはまる可能性がある。もちろん、全ての方にこのまま続けてもらいたいが、何らかの理由で花の生産を辞める方が2割、小売を廃業する方が2割、このような事態が起こる可能性があるのだ。生花店、生産者の方を減らさないためにも、SNSももちろんだが、マスコミにも取り上げてもらえるようにして、花への関心を一般消費者に持ってもらうことが必要だ。また、そのことは、花に携わる仕事のすばらしさを、今さらのように我々に教えてくれる。新型コロナとの闘いは長くなるだろう。政府も応援してくれているので、絶対にやめずに、続けて頑張ろう。今我々がやるべきことは、そう思ってもらえよう、需要復活の手立てやプロモーションを皆で一緒に考えることだ。今後の需要の仮説を立てながら、来年の作付けを生産者と一緒に考えていく。とにかく、花き産業・文化の人たちが今の仕事をやめないようにすること。いけばなやフラワーデザインの先生方をも巻き込んで、花き業界全体でやらなければならない。一度やめてしまってからもう一度始めるのは大変だ。花は要らないものではない。人が健康で人間らしい生活をするには欠かせないものだ。どうしてもやめてもらいたくない。
 
 まだ、採算は合わない。合わないが、それでも今を耐え、未来に目を向けて一緒に考え、次期の作付けや商売の作戦を一緒に練っていくときである。
 
 
投稿者 磯村信夫 17:37