社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年09月20日

花き業界でも、プラスチックの削減を


 大田花きでは、場内のごみをPPバンド、プラスチックゴミ、可燃ゴミの3つ(細分化すると9種類)に分けているが、プラスチックゴミが本当に多くなってきている。その原因の一つが、湿式縦箱輸送のプラスチック容器だ。湿式縦箱には、横にしてもこぼれない工夫がなされているプラスチック容器が箱の中に入っており、市場につくまで花の鮮度を保ってくれている。それを仲卸が市場から各購入者の元に輸送する際、飛行機便もそうだが、花専門の運送業者以外の業者に頼む時には水を抜かなければならないので取り出す。また、ライトバンで市場に来る生花店も、中身だけ出して段ボールはリサイクル、プラスチック容器・包装紙はプラスチックゴミとしてゴミ箱に捨てていく。このプラスチック容器がかさばるので、特に目に付くのだ。また、仲卸店でも、1箱を小分けにし、新たにポリプロピレン素材のものでラッピングを施して販売している。厚手のもの程キレイに見えるので困ったものだ。市場では、こういったプラスチック使用問題がある。これと同じ状況は、我が家にもある。コロナ禍で外食をする機会が減り、持ち帰り弁当やおかず入れ等々、とにかくプラスチック容器でゴミ箱がいっぱいになるのだ。これをどうすれば良いだろうか。今春、政府によりプラスチックのリサイクル法案が閣議決定され、来年4月に施行される予定だが、日本の近海は海洋プラスチックゴミのホットスポットで、2016年の調査だが、近海に漂うプラスチックの量は世界平均の27倍と言われている。また、日本国民一人当たりのプラスチック消費量は世界第二位である。これをどうにかしなければならない。

 先週、ローソンがプラスチック容器の削減の為、おでんを購入する際、持ち帰り容器を持参した客に割引をすると発表した。このように、消費者と生産者(メーカー)を繋ぐポイントが努力してくれれば良いのだが、産業革命以降、分業が発達した社会では、通常、消費者と生産者との間には距離があるので、倫理的消費が受け入れられにくくなっている。また、「エシカル消費」として一緒にされがちだが、「道徳的消費」と「倫理的消費」が必ずしも一致しない場合がある。将来の備えや自身の家族のために賢い買い物をするという観点から、節約し倹約することは大変道徳的な消費である。一方、石油由来のものではなく、環境に配慮された生分解性のプラスチックを使うとなると、通常の商品よりも高くなる。花の鉢物の場合も、生分解できる鉢容器にすれば環境に優しいが、その分、値段が高くなってしまう。このような倫理的な商品を購入することは、倹約する「道徳的消費」とはマッチしないことが多いのが現状だ。

 では、どうしたら良いだろうか。一番は、プラスチックメーカーに代替品を使用する等の削減を目指すよう、政府が指導を行っていくべきだと思う。二番目に、一般の小売業への指導だ(小売へ指導を行い、レジ袋を有料化したように)。これらは花き業界も同様だ。プラスチックの鉢や縦箱のプラスチック容器を限定する為に、一番目に、業者に一定の規制を課す。鉢物は生分解性のもの、あるいは紙等にして、植物由来の素材にする。二番目に、切り花輸送では十分水を吸わせて前処理を行い、温度管理をして鮮度を保って輸送する乾式横箱に方向を変えるべきである。そうしなければ、丁寧で豊かな暮らしを望む現代において、倫理的に良くないこと、社会的に良くない消費に繋がってしまう。最後に、消費者へ、自身や家族を配慮する道徳的消費を介して、遠い他者へも配慮する倫理的消費の促進を促していくことも必要だ。一歩でも前に踏み出して解決をし、道徳的消費と、倫理的消費がマッチするような消費構造にしていかなければならない。 



投稿者 磯村信夫 15:14