社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年01月17日

緑で居心地の良い都市空間を


 前回のコラムで、運賃コストや生産出荷の合理化を考慮し、1980年代並の大箱ロットにすべきと書いたが、その反響があった。「そうだ、そうだ」と同意しつつも、「箱の在庫もあるし、急には変えられない」という人が多いようだ。急でなくても構わないので、来期に向けてJAや運送店と話し合っていただきたい。また、市場サイドの「画像ゼリやネット販売、セリ前取引も多くなってきたのでそれは困る」という意見もあった。そのような市場については、産地が話し合ってもらう必要がある。

 市場は今、それぞれ得意な商品や仕事のやり方が異なり、多様化へ向かっている。多様化・ネットワーク化だ。大雑把には、全国中核市場と地域中核市場、そして地元市場と、どんな社会での役割を優先しているかによって変わってくる。また、セリのやり方や契約取引の多い・少ないでも変わってくる。しかし、大筋では前回申し上げた方向に市場全体で向かっていかないと、産地・市場・小売がウィンウィンウィンの関係は作れないし、生産者手取りも増えない。市場によりけりではあるが、微調整の範囲内で花き業界の方々は努力していただきたいと思う。

 さて、本日は確実にエクステリアの重要性が増し、そして日本はその需要のチャンスがどこの先進国よりも大きいことをお話したい。ヨーロッパに行ったことのある方なら想像して欲しい。そこでは街並みを大切にしていて、第二次世界大戦で廃墟となった都市を除いて、新しく建てることは殆どない。第二次世界大戦後も、昔のような街並みを新しく作った都市が殆どで、ロッテルダムのような斬新な建物、ベルリンのような未来を予感させる建物がそこかしこに見える場所は少ない。その一方、日本は戦後、50年で建て替えることを前提とした建物が多くある。そして現在建て替えられる建物には、多彩なエクステリアが採用されている。自然は人間にとって「ウェルビーイング」である為に欠かせないとして、エクステリア他、室内にもハウスプランツ等が新たに置かれる需要が日本はあるのだ。都心で言えば丸の内から有楽町にかけて、また、新橋-虎ノ門にかけての再開発でも分かる通りである。私の地元の大田区でも、規模の比較的大きなビルの建て替えや再開発には緑があり、ベンチがある。園芸業界にいる私からすると、日本もここまで来たかと嬉しい気持ちになるが、これからはもっと花と緑の重要性を感じる施工主が多くなることだろう。東京都では壁面緑化が一時盛んだったが、どうもモノになっていない。日本は自然との共生都市の在り方を今後も発展させ現実化していく、先進国の中で唯一恵まれた土壌があることを報告したい。

 
投稿者 磯村信夫 11:29