社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年03月23日

第一四半期で元に戻るか、第二四半期まで続くか。


 3月13日(金)から、「底を打った」感が花の市況で出始めた。前回お話した通り、国分寺に店を構えるはなひろ様が「『おうちで花見』等、自分たちで盛り上げましょう。お客様にも働きかけましょう」とセリ開始前にご挨拶いただき、セリ場が明るくなった。また、農林水産省も花の家庭消費を盛り上げる運動をしてくれていて、マスコミにも多く取り上げてもらっている。日本各地で花を買い、沢山飾って楽しもうとする気運が高まっている。翌週の月半15日以降の週に、花が売れるようになってきた。

 現状を見ると、3月需要は減少している。その中でしっかりしている需要はお彼岸の仏花、そして家庭需要だ。ここを中心に流通させている。また、送別需要も、パーティーこそしないものの花束の需要はある。残っている需要に全力をつぎ込んで販促活動をしていきたい。本日も洋花を中心に市況はしっかりしているし、会社の送別や昇進で、オフィス街の花屋さんも、あるいは、胡蝶蘭のお届け花屋さんもホッとしている。しかし、現実的には、今までの需要が復活した訳ではない。フォーマルな場所、会場装飾に使用されるような、より高品質・高単価の花等が納め先を失い、それが家庭需要に向かわざるを得ない状況になっている。「家庭用」とは、「業務用」の経費需要とは違い、サラリーパーソンが自身の手取りから購入するから、高値では売れない。もともと高単価だった主として業務用の花は、卸売価格で2割から3割下がらないと、上代が低い家庭用には使用出来ないのだ。高値で売れるべきものが高値にならないので、当然下押しされる。下押しされた下位級品が行き所を失って運賃も出ないとすると、結局、世に出回る花は、やはり2割から3割減少する。海外からの花が飛行便の関係で輸入出来ない等の事情もあるが、この供給・需要構造から、入荷量は2、3割、需要に合わせて減少しているとみるのが、常識的なところだろう。そうすると、数量2割減で0.8、単価が2割安で0.8。0.8×0.8=64%だ。3割から4割、業界全体が縮小することになる。これとても、今のヨーロッパの花き業界からしたらマシである。3月に入り、オランダの花市場では捨てるものが多くなってきたが、特に先週は半分以上を捨てている。オランダでは、ケースあたりの最低価格を決めて、それ以下では廃棄することになっているが、それにみんな引っかかったためだ。仮に大手仲卸が購入したとしても、輸出する見通しが立たないのだ。それに比べたら、日本は断然マシだ。
 
 先述したような状況が、4月中旬までは続くだろう。そして、仮に下旬まで続くとすると、母の日需要にかなり大きな影響が出てくる。今まで母の日だけ花の通販をしていたところが、取りやめにしたり、最終の意思決定を4月上旬にするところも多い。こうなると、母の日需要も減少することを想定せざるをえない状況になっている。そして、万が一、東京オリンピック・パラリンピックが本年開催されなくなったら、経済的なダメージは花き業界においてもかなり大きいと想定する。第一四半期は覚悟しているが、第二四半期も需要は全て復活することはあり得ないだろう。景気動向と、花を販売する小売業者のやる気からして、第二四半期も、少なくとも1割以上の落ち込みは覚悟しておくということであろう。
 

  投稿者 磯村信夫 17:46