社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年06月21日

確認出来た単価反転。生産増を期待する


 今更だが、日本が多様化していることを前提に生活をしなければならない。こう思っている。大田花きも参加しているワンコインクラブは、小学校での花育を通じて、子どもたちに花に触れる楽しさを感じてもらうボランティア団体である。花育を行う小学校は、新宿や池袋等の、外国人の多い学校が中心だ。花はユニバーサルで、原産地や属性も多種多様だ。そんな花に親しんでもらい、子どもたちに、「みんな日本で頑張ろう」というエールも込めている。コロナ禍の現在も、リモートを取り入れて活動を続けている。

 2020年9月の総務省発表の統計を見てみると、日本人の28.7%は65歳以上、四人に一人は70歳だ。日本はこんなに年寄りが多いのかと、私も年寄りだが思ってしまう。そして障がい者は14%。場合によっては、コロナ禍でますます増えているかもしれない。また、今国会で「理解増進」法案の了承が見送られたが、日本にはLGBTIが10%弱いるそうだ。10人に1人がLGBTIだ。多様性を認めることを当然にしていかなければならない。さらに、ここのところ少ないと言っても、日本には2%弱ほどの外国籍の方がいる。そして、外国籍の方たちに、コロナ禍で来てもらいたいと思う農業現場を私は沢山知っている。地方ほど人の手が無いのだ。この現状が今の日本だ。この多様性の中でもう一度、日本のアイデンティティを見つめ直す必要がある。「○○系日本人」ということがあって良いのだろうと思う。アイデンティティというより「特徴」というべきかもしれないが、日本は使用価値の減ったものや思想まで、ハードやソフトが残っているというか、取っておいてある。また、生産しているものもある。そういう多様性があるのだ。多様性を認めよと言っている時、日本の花きマーケットで鉢物類、切り花類の供給が足りないのである。

 日本は失われた30年で、1990年初頭と今とを比べると、GDPは一度上がり、また下がって殆ど変わらない。同様に、所得も殆ど変わっていない。世界でも例外的な国だ。その中で花き業界を見ると、鉢物の相場が安い傾向が続き、「割に合わない」と生産がかなり減ってしまった。それがこのコロナ禍のステイホームで、家庭需要・個人需要が芽吹いた結果単価が上がり、生産者も「いや、これはもっと増やさなくちゃ」という気になって、実行してきてくれている。切り花もコロナ禍となってから一年が経ち、2021年5月中旬以降、冠婚葬祭の需要がこれだけ小さくなっても、平均単価は2012年に一度高かった時があるが、21世紀になって初めて、最高平均価格が続いている。2012年に触れたが、この時は、お葬式等に使われる菊が高騰し、それが次々と他の花に飛び火して高くなった。菊は相場を引っ張るリード役。これが切り花業界の定説であった。それが今回のコロナ禍で、一輪菊の相場は奮わないが、他の家庭用の切り花類が高くなって、21世紀に入って最高の平均単価が続いている。これは、鉢物類に続いて切り花類も生産を増やしてもらわないといけないという、消費サイドからのサインだ。  

 農業はこれからチャレンジする価値のある分野だ。ICTを使ってフードロスにも挑戦しよう。もちろん、フラワーロスにも挑戦しよう。生産の現場、流通の現場、ここに農業関係者、花き園芸関係者の明るい未来がある。無理のない範囲内で少しでも生産規模の拡大と、ICT化に繋げてもらいたい。最後に、地方市場の活躍を応援することを、生産者の皆様方、あるいは、同業者の市場にもお願いしたい。地域文化を担っているのは地域の市場だからだ。地産地消は勿論だが、地域の文化によって売れ筋が違うので、主要地方市場へ大規模産地からも直接ご出荷いただくことが必要なのだ。物流問題は難しいものがあるが、これもスマート物流や効率化で、解決を図っていきたい。減りに減った花き生産。しかし、未来は明るいので生産を増やしてもらおう。この新しい、前向きな時代に突入していることを報告したい。  


投稿者 磯村信夫 16:24