社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年09月28日

相場を生み出す買参人は、一緒にサプライチェーンを担う卸のパートナーだ


 本日は第24回大田花きかぼちゃ大市だ。東京ディズニーランドがアメリカの文化になったハロウィンを取り上げて、もう23年になる。今年のハロウィンでは、若者の街・渋谷も大人しくするそうだし、ディズニーランドも同様だ。本日のかぼちゃ大市では、家庭用等の小玉のものは、例年並みから1、2割高だった。しかし、イベント用や、広い場所に季節のシンボルとして使われるもの等、人が持てない程の大きさのカボチャは需要が見込めないのか、安値になってしまった。来年をどう読むか、主に北海道の荷主さん達と、打ち合わせていかなければならない。ただ、平成生まれの人が既に社会でかなりの戦力になっているように、ハロウィンは確実に浸透している。10月のハロウィンに向けて花やカボチャを楽しむことも定着し、一つに「ハロウィンの花の色合い」、一つに「日本の秋色」と、昔とは変わってきている。  

 さて、大田花きでは、セリ室に全農県本部や経済連の東京事務所の方々が座る専用の席がある。もちろん、日本農業新聞の市況欄は、大変貴重な事実を物語るもので、花き業界の欠かせない市況情報になっているが、各県の全農県本部・経済連の東京事務所社員は、自身の産地だけでなく、他産地も含めた気配情報、品種や等階級まで含めた細かい出来高情報を確認しているのだ。そして、大田花きの担当社員と「何故この相場なのか」、「今後どうなるか」等を打ち合わせしながら、日々情報を産地へ送っている。

 買参人だが、セリ前取引をする人と、セリ取引をする人が同一である場合と、まるっきりセリを利用しない人もいる。また、セリと言っても在宅ゼリもある。しかし、やはりセリは、公開の席で何百人もの買参人の意見を表明したものだから、説得力がある。大田花きでは、この時期市況の強いもの、弱いものを、荷姿ごとに必ずセリにかけることとしており、今の実態を表すようなセリ上場にしている。そして、花き業界のアンカーである買参人が、頑張って消費者に手渡しているからこそ、花き業界が成り立っている。消費者の意向を反映しているのが買参人であるので、買参人が値段をつけるのは、その時の時価として大変意味がある真実だと捉えている。

 大田花きは1990年にセリ機を導入した時から、買参人を信頼のおける花き業界のパートナー、仲間であるとしていた。いわゆる社会で一般的にいわれる「お客様」とは違う(利を乗せて販売し、「お客様」は利の分のお金も支払う。仲卸が販売した先は「お客様」である。しかし、卸で買参権を持って購入している人は、品物に対してお金を支払っているが、大田花きの責任のもと分荷し、買参人が早く帰りやすいよう、買ったものを一箇所にまとめる等のサービスの対価は頂だいしていない。それは、花市場の慣習法に近いルールである。それ以外のサービスについては、対価をいただいている。例えば、荷物を引き取り期日以上の期間、大田花きに置いておくこと等である)。セリは数レーンで同時に行われており、他のレーンで人気のものが出てきたとき、どうしても目が行ってしまう。その時、セリ下げでは、見られていないレーンはゼロ近くまで落ちてしまう可能性がある。そうならないよう、セリ人は下限値を設定してセリ下げに臨んではいるが、花き業界で消費者に花をパスする重要な役割を果たしてくれている買参人を仲間と信じて、セリ下げにしているのである。  

 卸売市場はおかしなもので、証券でいえば、東京証券取引所と、そして、顧客と取引所をつなぐ役割の証券会社と、同じ会社の人間が二つの業務を行っている。特にこのごろセリ品が減り、相対の比率が高くなると、取引所業務を意識する人たちが少なくなって、仲卸と同じ気持ちでいる卸の人間が多数出てきたが、それは違う。中央市場も地方市場も、取引所の業務と、取引所をつなぐ証券会社の業務。この2つを明確に分けた仕事をしなければならないのだ。少なくとも大田花きは取引所として、日本の市況を出していく責任がある。セリの比率は下がっても、必ず指標になる荷姿、そして、買参人の構成を、セリ場で実現出来るようにする。大田のセリ情報が翌日のセリ前取引の値付けに最も重要な情報となる。セリ前取引とセリ取引が同じであることが大田花き社員の目標とするところであり、ここを目指して今後ともやっていきたい。日本花き卸売市場協会のメンバーの皆さん、特に地方市場の皆さんは、卸売部門と仲卸部門の仕事の仕方を明確に分けて、透明感のある卸売業務をしていただきたいと思う。そして、買参人はサプライチェーンを担う卸売市場のパートナーとして、今後も重要な役割を担っていただきたい。



投稿者 磯村信夫 16:29