社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年03月16日

白が余る。色バランスの調整を。


 新型コロナウイルス問題の影響から、本日16日(月)のセリ前・セリ取引ともに、白が安い。今後の出荷における色バランスについて、生産者の皆様とともに考慮していきたい。

 新型コロナウイルス問題は、長引けばリーマンショックに比類する経済損失に発展する。この問題における花き産業への影響について考えてみたい。まず、供給(生産)サイドだが、数量面では殆ど影響は無い。確かに、中国産の白一輪菊は、中国国内の人の移動禁止等で、出荷調整と物流が日本のお彼岸需要期間際になってしまった。そのため、市場外流通の契約をキャンセルされた商品が、卸売市場に出回った。また、一部、他の物流を優先した国内運送会社が「花を載せきれない」と断る等、運送の手配が出来なかったものもある。飛行機も減便で、輸入の花や九州・中国圏の花等が積載出来なかったものもある。しかし、全体数量からすると、供給サイドはそこまで大きな問題は出ていないと思われる。
 
 一方、需要面からは、大変大きな問題がいくつも出ている。卒業式や謝恩会等の学校関係の壇上の花や花束需要。会社の退職や転勤、昇格等の花束やパーティー需要、会社に届ける胡蝶蘭等の贈答需要。結婚式のキャンセル、ないし、順延における装飾キャンセル。あらゆるイベントの中止、無観客での花き需要縮小。レストランやホテルでの、生け込みの部分的なキャンセル。葬儀のさらなる縮小。このようなことが生じているため、冠婚葬祭に使用されるラン類や、特におめでたいときに使用されるアンスリウムやグロリオサ、在校生から卒業生にプレゼントされるスイートピーやガーベラ、チューリップ等が、裾物を調整して、3割減、さらに5割減の出荷調整を行っても、先週半ばの相場は例年を大きく下回った。このような状況の中で、最もしっかりした需要があるのは家庭需要だ。例年よりも一割以上もマイナスになっていると想定されるが、スーパーマーケットの花売り場が主たるお買い場になり、また、多店舗展開を行う駅チカの花店では、家庭需要をしっかり捉えている。
 
 しかし、家庭需要では白の比率はそこまで多くない。また、葬儀や結婚式の冠婚葬祭においても、以前ほど白の需要は多くなく、白の花を多くは使用できない。2月から、台風15号で被害を受けた千葉県産の花の出荷が始まっている。キンセンカはオレンジ色だからまだ影響を受けにくいが、千葉特産のストックは白が多い。キンギョソウもそうだ。そして、一輪菊は先述した通り、市場外流通の契約キャンセル分の中国産が市場に多く出回る。マレーシアやベトナム産のスプレー菊においても、他のアジア地域、オーストラリアも、新型コロナウイルス問題で需要が落ち込んでいるため、まだ彼岸需要がある日本に向け、どっと出荷されている。これも当然に白が安い。沖縄の小菊も、白は2月から“べたべた”だ。こんな風に需要サイドから白色が全体的に余っていて、全体の相場を押し下げている。
 
 白が安値になり、市況の足を引っ張っている。これを考慮し、新型コロナウイルス問題の収束時期によるが、次期作付けの調整を行う必要がある。第一四半期、6月末までに日本だけでなく、世界が落ち着いた場合、日本の花きに対する需要構造はそこまで変化が無いと思われる。供給サイドも、今自分が作っている品目や色のバランスをチェックして、変動させるべきであるが、3割以上の大きな変更は必要ないだろう。しかし、上半期の9月末まで、需要面で大きな影響が続くとすれば、花きの需要も今までとは異なると思われる。生産計画の変更を考えておかなければならない。もちろん、業界人は経営計画の変更が必要だ。政府は経済対策を打ってくれようとしているが、自助努力で収支を合わせるにはどうしたら良いだろうか。少なくても、昨年とは違った仕事の仕方、また、経営計画の見直しをしなければならないだろう。
 
  投稿者 磯村信夫 17:16