社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2016年11月28日

生活空間全てに需要がある


 月に一回、都合が合えば、近所の友人と家族と一緒にゴルフを楽しんでいたが、これからは冬休み、スキーシーズンだ。スキーを楽しむことにしよう。東京の府中カントリーや東京よみうりカントリークラブ、聖蹟桜ヶ丘にある、桜が丘カントリークラブ等の、東京近郊のゴルフ場は周りが住宅地なのだが、21世紀に入ってから空き家が多くなっている。新宿までそんなに時間がかからない所だが、約60%が夫婦共働きとなっている昨今、奥さんの職場からも可能なら30分以内で通勤出来、そして、駅周辺や自宅の側に保育施設があるところ、というのが望ましい住宅の場所だ。勤務先にもよるが、大体が都心から15㎞圏内ではないだろうか。従って、東京近郊のゴルフ場近辺でも空き家が多くなってきている。

 11月27日(日)の日本経済新聞に、都市農業においての通称「2022年問題」が掲載されていた。生産緑地の指定から30年経てば、他の目的で農地を買い上げることが可能になり、後継ぎのいない農家の土地が宅地に転用され、不動産業界に多く流用することになるという。宅地以外の選択肢としては、市民農園くらいだろうか。団塊世代が70歳を過ぎ、一軒家は子供に譲り、夫婦二人は出来れば駅に近いマンションで、という人たちが増えていて、街を見るとワンルームマンションも多く、一体全体、日本は住宅政策をどのように考えているのだろかと思ってしまう。

 地方に行けば耕作放棄地、都市部に行けば空き家。もう一度、まちづくりをやり直さなければならない。空き巣に狙われない、物騒でない住宅地と緑。そして、駅周辺のショッピング街。出来れば、商店街を設ける等の、交通政策も含め、それも古いものを活かした、住みやすい街つくりをすることが必要だ。ここに、もう一つの花と緑の需要、すなわち、役割がある。私の妹の長女は、ランドスケープまで含めた庭を作っている。彼女の亭主も同業で、独立して夫婦二人でランドスケープ・ガーデン事務所をつくり働いている。すごく忙しい。


 今のフローリストや花束加工、グリーンウォール等の仕事だけを見ていると、なにか縮小均衡しているのではと思われるかもしれない。しかし、実際は違っていて、cop21ではないが、認識の上で人が生活するということと、花や緑はますます深い関係になってきている。しかし、現状の花き業界は、欲している所に供給できていないのだ。同じ花き業界でも、とあるお花屋さんは勤労感謝の日とアメリカの感謝際が終わり、いよいよXmasへ向けての仕事がスタートした。○○ヒルズと言われるビル全体の飾り付けで生花と緑を提案し、半端じゃない金額の仕事をとった。これはほんの一例だが、需要があっても、そのドアを叩かないとお客様は花を使ってくれないのだ。

 草月の洲村衛香先生が、銀座のポーラミュージアム アネックスにて『ビジネスリーダーたちのいけばな展』を開催している(28日19:00まで)。前半25名、後半23名の、皆さんも良く知る、日本を代表するビジネスリーダーたちが、自ら生けた作品を展示している。その思想表現の素晴らしさと高い完成度。また、無駄を削ぎ落した、凛とした美しさが見ものだ。洲村先生は、流行にこだわらない生け花の素晴らしさを、影響力のある人たちに認識してもらい、生け花を広めたいとの一念から、行動力で生け花の需要の窓を開いたのだ。洲村先生から、勇気を持って思いを遂げるために実践する重要性を再認識させられた次第である。


投稿者 磯村信夫 : 16:13