社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年03月11日

“消費者利益”=“生産者利益”
取扱い箇所が多いと利益が出ない。差別化出来ないと利益が出ない。


 花き卸売市場(卸・仲卸)業界では、2月から3月の前半まで価格・消費量ともマイナスの日々が続いている。1番の大きな要因は、消費者の好む花や緑が生産流通されていないことだ。特に余っているのは宗教的行事としての仏花だろう。仏花に使用する花材が変わってきてしまっていることが、需給のミスマッチを起こしている。お寺の仏花は伝統的な色合いが強いし、お墓はアウトドアにあるから型崩れしないものが必要だ。従来通りの菊類を中心としたものが良い。しかしこれとても、季節の花が使われたり、洋風な花でも、カーネーションだけでなくランやバラの入っているもの等さまざまだ。また、自宅で花を供える仏壇や、仏壇の無い家庭での仏花は、亡き父や母を想い、本人が生前好きだった花や、供える人が綺麗だと思っている季節の花等、まさにホームユース用の花が仏花としての役割を果たしている。このような仏花の選定が都市生活者の中でも一般的になってきている。この傾向はますます拡大するだろう。

 2014年頃から特に、産地は卸売市場流通においても出荷先を増やすようになっていった。「言い値で買い取ってくれるならばどこにでも出しましょう」という方向で出荷先が広がったのだ。直接、実需者に卸す産地もある。しかし、元気な実需者はそうは多くない。業態的に新しく、今後とも販路が広がる可能性があるのが、花束加工業者と彼らが納品するスーパーマーケット等の花売り場だ。一方の専門店は、チェーン展開や独自路線で走る素晴らしい花店もあるが、廃業する専門店もあり不透明だ。トータルの専門店数は減っているのだ。一部の元気な実需者に、卸・仲卸も、そして産地も同じように売り込む。同じ産地の商品を売リ込めば当然価格競争になり、販売主である卸や仲卸、市場外流通業者のコストが吸収出来ないところで最終的に価格が落ち着く。これが完全競争の時の状況だ。しかし、実際には無尽蔵に生産している訳ではないし、また、販売業者はその産地の品物を言い値で買い取るといっても、損が立て込んできたら当然値切りが行われる。生産者利益が出なくなるところまで一直線には下がらない。じわじわ、じわじわ下がってくる。このじわじわ下がった姿が今期なのだ。

 では、どうすれば利益を上げることが出来るだろう。それはもう一度、産地と流通チャネルの卸・仲卸、そして市場外流通業者等の取り扱い業者を少なくすることだ。生産者側で言えば、産地は今まで共選共販だけだったのが、大規模農家が抜けたり、あるいは、個人が有志グループを作って抜けたり、とにかく共選の一本化構造が壊れていく状況が続いた。この多数が存在する構造の結果、みんなで利益が出ない仕組みになってしまった。もう一度極力まとまることが必要なのだ。同様に、卸・仲卸や市場外流通においても、競争が少なくなれば利益を確保して販売することが出来る。そして用途別規格や品種等を揃え、重複の手間を省きジャストインタイムで実需者が作業を出来るようにする。このような付加価値流通、バリューチェーンを構築することで、初めて生産者に利益が出るのだ。
 
 日本の場合、「卸売市場制度」は供給不足の時代によく機能した。そして、供給量が増大し売るのが難しくなった時、取扱い市場や市場外流通の出荷先を集約することによって、産地は単価と所得を確保してきた。それが、ITの進歩、宅配便等の物流改革、農業競争力強化支援法等、目まぐるしく時代が変化していく中で出荷先の選択肢が増え、自分の産地のものを取り扱う箇所が沢山出てきた。ここに今の価格の混乱がある。もう一度、スーパーマーケットまで含む小売店、卸売市場や荷物を直接受ける業者の集約化が必要だ。そして、アウトソーシングをお互いにすると雖も、生産から加工・販売まで、お互いの役割の中で結びついた、あたかも一つの有機体のようになるまで、それぞれの分野で数の調整に進む必要がある。少なければ少ないほど、利益が確保できる。多ければ多いほど利益がすっ飛ぶ。それはフローラホランドがEUの中で圧倒的な地位を占めていることでも分かる。オランダの生産者はこの経済原理の事実を踏まえ、花き生産で利益を得ているのである。
 
 
投稿者 磯村信夫 17:18