社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年06月10日

歴史を知った上での友好関係を


 先週、浜松町駅から都営大江戸線・大門駅へ乗り換える道すがら、若いカップルが目に入った。通りがかった売店で販売されている『ニューズウィーク日本版』を手に取り、「これを買って欲しい」と女性が男性に頼んでいるようだった。今週のニューズウィークの表紙は「天安門事件」だ。そのカップルの女性は雑誌を見つけた瞬間、切羽詰まったような顔をしていた。香港人か、台湾人だったのか、あるいは、本土の中国人だったのかは分からない。しかし、天安門事件で活動をしていた人が親戚にいたのか、今でも気にかけている人のようだった。

 日本人は忘れっぽいので、過去を水に流すのが得意だ。特に、今を創っている明治から現代にかけての歴史をあまりにも知らなすぎる。中国での日清戦争から五・四運動までを、特に重要な事柄として取り上げる必要があるだろう。新聞の書評でも、再度五・四運動に関する本を推薦図書としていることが多い。
 
 戦前の日本人よりも今の日本人の方が、同じ立ち位置でお互いに繁栄しようとしているように思う。決して上から目線で、日本が先に西欧化したから「教えてやろう」等という気持ちはない。政治体制も異なるので、良い距離感でお付き合いしようとするのが、一般の日本人の考え方だろう。花の分野においても、中国への輸出が昔のように本格化している。50年から30年位前まで、台湾や香港、そして、社会主義国になった後も、中国へ花を輸出していた業者がある。今も枝物等、中国に活発に輸出している。その量は月を追うごとに多くなる位だ。いけばなやフラワーデザインについては、素直に中国の人達は学びたがっているし、教える日本人も、ドイツやオランダを意識して教えている訳では無い。花材の輸出入等でも、お互いに認め合い、良い物を輸入し、また輸出しようとしている。

 今後とも観光や貿易、文化の交流まで含め、お互いを認め合いながらやっていこうとする気運がある。しかし、その中でも、歴史や政治的な背景を知った上でそれぞれの国と接していく必要があると考えている。ニュースで中国政府のメッセージを聞く。そこにどのような事実があるかを知って、その上で、中国、あるいは、中華圏の方々とお付き合いをすべきではないだろうか。



投稿者 磯村信夫 14:13