社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年07月06日

権威ある卸売市場での品質管理、コスト低減の作り込みを


 7月1日(水)付で、オークネット社が東京砧花き園芸市場を子会社化した。さらに同日、大阪鶴見花き地方卸売市場に入る2社が業務提携を行った。鶴見市場は、大田市場花き部に次いで、国内第二位の花き取扱い市場である。このように、withコロナと改正卸売市場法下において、業界再編の動きが起こっている。
 
 業界再編や異業種参入の動きは、以前からあった。例えば、食と車に特化した商社である荒井商事㈱殿は、2016年、栃木県小山市にある地方市場の開設者となり、青果・水産・花きの市場を運営している。荒井商事殿の中古車オークションは有名で、場の重要性を感じながらも、リアルとネットを併用した中古車オークションを開催されている。生鮮食料品花きにおいても、「現場」・「現物」・「現実」を重視する「三現主義」は変わらない。しかし、一つの取引ツールとして、あるいは、一つのコミュニケーションや意思決定の方法として、ビックデータやAI、ICTの活用は有効だ。その分、「五感で感じ、考えて行動する人間の特性」と「協調性」が無い限りは、真実の情報がネットでも伝わらない。人間的な互恵の精神を持ち、目標を持って仕事をする人が決め手となる。
 
 今、当社が卸売市場法の中で問題にしているのは、市場内外で起こる(品質クレームや本数違い等の)事故処理を、開設者である東京都が関与しなくなったことである。その品質劣化がいつ、どこで、どのように起きたのか。生産者の責任なのか、あるいは、運送店、卸・仲卸での取り扱いが悪かった所為なのか。生花店が保冷ストッカーから出して保管した為なのか。しっかり原因を調査し、責任の所在を明確にして、金額処理や伝票処理をしなければならない。1ケース単位であればこれで済むが、輸送上の事故や産地の契約の取違いで、日付を間違えたものが大量に届く場合等、あらゆることが考えられる。責任があるとされた業者が納得できる判断基準や権威ある品質管理を行わなければならないのだ。即ち、例えば車であれば、テストドライバー、そして、品質管理係、この2つの要素を持った人間が各社にいて、あらゆる品質について精通する必要がある。このことは卸売会社の信用を保つために非常に大切だ。当社では「品質カイゼン室」という部署があり、品質におけるクレーム品の処理をプロとして行っている。しかし、それでだけではいけない。先述した通り、「約束を違えた」だとか、「当階級が違う」、「注文の行き違い」等、様々な事故においてどうしていくか。早急に部署として作り上げていかなければならない。  

 もう一点、「サービス原価をどのように下げるか」が、withコロナでは大切だ。それらに必要なABC分析※やICT活用、ロボット化、鮮度保持の定温化等、大きな投資が目白押しである。その資金を稼ぎ出すためにも、日々行っている作業のコストを徹底的に下げなければならない。何故なら、今後とも日本の各産業全体が活性化することは考えにくい。従って、売上がコントロール出来ないならば、仕事に関わるコストを下げるしかないのだ。これは移動の無駄、手待ちの無駄からボールペン1本、クリップ1つの無駄は無いかといった当たり前のことまで徹底するのである。さらに並行して、生産地から小売までのサプライチェーン上での合理化、コスト削減策を前後の業者と一緒になって検討していかなければならない。  

 これまで、コストを積み上げて、消費者にその分を負担してもらっていた。しかし、消費者は価値と価格のバランスにより一層、敏感になっている。花を多く生活に取り入れてもらうためには、コスト低減策をまず自社で、そしてサプライチェーン全体で取引先と検討することが必要だ。これが、withコロナと第4次産業革命の最中にいる生鮮食料品花き業界で急務となっている。すなわち、権威ある卸売市場での品質管理、そして、作業コスト低減の作り込み、この2つが最も重要な課題である。

 ※ABC分析:Activity Based Costing  

投稿者 磯村信夫 16:55