社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年12月09日

来期予算額を具体的に決める前に


 今年も残すところ三週間あまり。松市が終わり、卸売市場ではクリスマスからお正月に向けての商戦が始まった。

 新聞紙上では、今回の消費税率アップが前回の増税時よりも景気への影響が大きいと報じられている。しかし、これは10月から11月にかけての天候異変、また、特に週末に雨が続いたことが大きいのではないだろうか。消費の実態はキャッシュレス還元もあり増税感少なく、これは来年の上半期まで続く。来期予算を考えるこの時期、通常の天候を想定した消費の仮説を立て、また、社会情勢を鑑み、大田花きの目標を述べたいと思う。
 
 確実なところで言えば、農業生産においても団塊世代のリタイアが進んでいる。花の生産力を落とさないようにする施策を、国の助力とは別に自社の問題として捉えることとし、より産地とともに歩むことにする。冠婚葬祭と物日は、花き装飾文化を最も発揮させることの出来る場だ。これらに焦点を当てた的確なサプライチェーンを通じて、生産、小売、中間流通の利益を確保する方針とする。また、販売チャネルの専門店分野では、チェーン展開出来る力のある専門店会社と、『山椒は小粒でピリリと辛い』の、単独だがこだわりを持った専門店が消費を牽引している。すぐに飾れるアレンジやブーケ等の素材を専門店と共に考え提供していく力を、大田花きが身につけることとする。また、家庭需要等においては、量販店が小売店の総和の金額よりも増していると思われる。大田花きの取引金額を見ても、量販店に並ぶ花は前年度プラスであり、専門店に販売する素材の花は前年比マイナスである。これでちょうどプラスマイナスゼロとなる。個人消費が伸びていないが、量販店のお買い場は伸びていく方向、専門店は数も含め下がっていく方向だ。従って、量販店での花売り場の充実は、花き業界にとって大切な生命線となる。これは、青果が辿ってきた道だ。最後に、市場外流通していた花の取込みも、来期に向けての大切な卸売市場の施策となる。市場法は改正され、東京都の卸売市場行政では、商法がベースにあり、その上で、生鮮食料品花きの「絶対的な安全、安心」が必要で、そして鮮度の点から、市場法で制限を加える。この構造に変わる。そこで、天候によって生産の質・量が左右されるだけでなく、消費される場においても、天候によって「これが欲しい」、「今日はこれだ」と変わる生鮮食料品花きにおいて、卸売市場のプラットフォームは必要不可欠だ。しかし、1番安定して消費される分野が市場外流通のままなので、これを卸売市場は取り込む。取り込むことで、卸売市場がインフラストラクチャーとしてより活性化すること、成長することを、開設者を通じて広く国民に、国に示す。その初年度が、2020年の改正卸売市場法施行である。
 
 上述した目標達成には物の見方や知識等を広く身に着け、そして市場人のレベルを上げる必要がある。大田花きの中で話し合われたことを中心にお知らせしたが、これは、どこの卸売市場についても言えることだ。もう一つ付け加えるならば、サプライチェーンの強化だけでなく、横の取組み、すなわち、卸売会社間の連携が欠かせない。一般的には、合併やホールディングス、または、業務提携等を行い、数を調整しつつも、卸売市場としての力を発揮するために、横の連帯が必要なのだ。良い目標予算を作って、正月休み、来期に向けて確実なスタートを切りたいものである。
 
 
投稿者 磯村信夫 16:23