社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年08月15日

来年のお盆需要期までにやっておくこと


 8月盆の需要期は、特に東北地方の天候が悪く、しかも台風8号も来たので、生花店の売れ具合を心配していた。11日の『山の日』から迎え火に向けて、そして台風一過の14日日曜日までの販売状況を、生花店へ情報収集すると、災害があった地域を別にして、これだけ天候が悪かったにも関わらず、予定通りの売上げであった、というところが殆どだ。予定通りというのは、マイナス10%からプラスで105%というところである。それは2019年比なので、まあまあではなかったか。来店客数をざっと聞くと、減ってるところが多いが、規模の大きい店舗は来店客数もプラスで、このことは8月盆にはあまり関係ない都市部のチェーン展開している花屋さんにも言えることだ。

 お天気が悪くても、花を買いに行き仏壇に供えることは、お盆行事の優先順位がとても高いところにあるといえるだろう。今後とも需要は見込まれる。だが、専門店は人手不足で、お盆の需要期にも店員数を増やせず、前からの作り置きが基本となる。専門店は日頃の3倍位、量販店は売れる時面積を広げしかも、セルフだから10倍以上も売れる。販売店に納品する花束加工業者も、人手不足は当然のことだ。そうなると、早いうちから素材を仕入れ、仏花束をつくって鮮度保持をしておく作業がとても大切になる。よって、2週間前から市場では需要期となる。今年の様に、開花が遅れていると(6月の暑さにより花芽をもち、その後梅雨のぶり返しと熱帯夜で開花が遅れたため)予約相対の数量が揃わず、持ち越し持ち越しとなる。そうなるとセリ前取引の数量もセリ上場の数量も少なくなる。その足りない状況が今年は、12日金曜のセリ前取引まで続いた。「前進開花に高値なし」、であるが、「開花遅れは、高値が続く」という結果であった。

 来年に向けて、産地の8月盆時期の花は、菊類だけではなく、花持ちの良さの点から、国産が圧倒的に有利である。白菊もディスバッド菊もソリダゴの様な草花も、大手は国産を要望している。もちろん値段の問題もあり、輸入品に頼らざるを得ない人もいるが、基本は、そのものを冷蔵庫に入れ、花束を作ってまた冷蔵庫に入れ、そして暑い売り場に出しても、元気でいるだけの生命力のある花が必要だからだ。加えて、予冷と低温化のノウハウ、定温化のノウハウ、が必要である。次に産地は、電照や薬品処理で開花を合わせられる様にしなければならない。そのためには、種苗会社に相談し、どの品種なら、それが可能かをチェックした上で、それを生産者と市場と買参人に、情報共有しておかなければならない。同時に素材を定温化し、また、出来たものも定温化し、その後常温で30度の場所で販売し飾るわけだから、ヒートショック、低温などに強い品種であるかどうかも事前に選別しておかなければならない。

 今年クレームが多かったのが、下葉が上がりやすい品種や、雨が多かったせいか、箱詰めした後、少しの湿り気でも、真ん中辺の葉が傷んでいる品目であった。この様な情報を、生産者も市場も使い手である買参人にも共有しておかなければならないという事である。

 最後に、8月盆の花は、彼岸や7月盆よりもオーソドックスなものだ。しかし、菊(一輪菊、スプレー菊、小菊、ディスバッド菊)に関して言うと、スプレー菊と可愛らしい小菊のウエイトが増えているのは、スーパー等で売る比率が増えているからであろうか、売場周りの品揃えや時代に合わせた状況といえる。それでいて8月盆の花は、伝統的というか保守的で、一輪菊やリンドウが主役である。それは地域文化に、一輪菊やリンドウの様な、一本すーっとしているものが似合うからであろう。

 来年のお盆の需要期に間に合う様に、開花調節をしやすく且つ2~4度の低温と10~15度定温、30度の常温にも耐える品種の選定、農協の集出荷場や運送会社の定温化や、卸売市場と花束加工業者での鮮度保持定温庫の設置と運用ノウハウ、これらを今よりも良いものにして、消費者の負託に応える準備を早速すべきである。  

 


投稿者 磯村信夫 15:54