社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年11月18日

本当に一社だけで、社会に必要なインフラである卸売市場を存続できるだろうか


 東京聖栄大学の藤島廣二先生が中心となり、今後の卸売市場がどうあるべきかを議論する「市場流通ビジョンを考える会」という会がある。16日(土)に秋の経営者研修会が開催された。

 現在、農産物で最も大きな売上は米を抜いて青果だが、国産野菜の70%以上が卸売市場を経由して小売店・消費者へと届けられている。花も同様だ。卸売市場は、日本にとって欠かせない農業分野の重要な流通プラットフォームを担う。研修会では、この卸売市場の現状における課題がエビデンスとしてデータで示され、解決しようと奮闘している方々からの講演が行われた。 会が終了してからの懇親会でも、1次会はもちろんのこと、中締め後も話題が尽きず、3時間経っても話し足りないと言った人もいるほど会は盛況だった(私は1次会で失礼したが)。
 
 研修会の内容をまとめるとこうだ。素材流通の卸・仲卸は差別化が難しく、現在の利益率ではこのまま各社がやっていける状況では無い。感情と経済合理性を混同せず、消費者と小売店、生産者に最も便益を供する卸売市場をどう運営すべきかが経営者に問われている。そこで必要なのが「連帯」だ。連帯の第一弾は、青果や水産、花きの部類ごとの共同出資会社を作り、その下にぶら下げる方式にするのか、株式の持ち合い率を高め、連結決算が出来るようにするのか。さらに業務提携だけの連帯にするのか。研修会では、実際に模索している講師からその様子が語られた。連帯することに対しての「主体性が無くなる」だとか、「社長が一人だから(統合は)嫌」だとかいう意見は、社会に必要なインフラである卸売市場としての機能を考えない人の弁である。これを排除し連帯してもらいたい。講師はこう述べるのである。

 連帯することで期待されるメリットは後述する通りだ。
  ①無駄な競争の排除
  ②産地営業の強化
  ③価値と需給バランスにあった価格を発見するという、生鮮品の価格交渉の原点に基づく交渉力。
  ④品揃えの強化
  ⑤物流の効率化
  ⑥卸と“兄弟”としての仲卸の再編
  ⑦経営理念の一本化(価値観の一本化/何を実行するかしないか等)
  ⑧マネジメントシステム統合による合理化
  ⑨ICT投資や新規事業がやりやすくなる。

こういったことが可能になるし、また可能になるようしなければならない。
 
 現実的には、中核市場を中心に合併やグループ会社の編成がなされるだろう。そして、各地域でも卸売市場が重要な流通プラットフォームとして活発に機能することが必要だ。その為にも、合併、あるいはグループ化の問題は、早めに検討、着手すべきであるというのが、先日の研修会の結論であった。皆様方はどう思い、どのように来年の時間を使おうとしているだろうか。是非とも、各所で連帯する動きを早めてもらいたい
投稿者 磯村信夫 14:29