社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年11月04日

未来に向けて努力し続ける


 災害が多かった10月、関東以北の売上はデパートと同じ前年比80%位だと言っている市場関係者もいる。しかし、デパートと違い、花き業界は駆け込み需要があった訳ではない。また、災害における生命の危機の前では、花を生活の彩りとすることや、芸術を鑑賞する気分にはならなかった。これが、冠婚葬祭需要の小型化や取り消し、家庭需要の縮小に直結した。11月に入り週末がお天気となったこともあり、自粛ムードから「自分の楽しみのために時間やお金を使っても良い」という雰囲気が出てきて、需要は回復した。しかし、台風15号から続く災害で、千葉から東北にかけての入荷量は今後とも少なくなることが予想される。寒くなってきた現在、甚大な被害であったことを改めて痛感するとともに、このたびの災害により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げたい。

 さて、このような現状の中においても、ダウントレンドのままでいいはずが無い。現状を嘆いているだけでは前に進めない。未来のために手を打たなければならない。しかし、これをスピーディーに実現していくのが、日本は不得意である。理由はいくつもあるが、大きな要因としては、日本の社会構造(あるいは、会社の構造)が挙げられよう。日本の会社は専門職が集まってチームを作っている訳ではない。軍隊のように、厳格な役割分担別や階級社会になっている訳でもない。組織ごとに社員はひとまとまりになっているのだ(いつか機会があればこの「一国一文明」の日本らしい構造について、良さと改善すべき点を取り上げたい。労働組合が会社ごとにあり、業種別の組合ではないところに日本の特徴がある)。また、「会社は社員のモノ」というのが、日本人が持っている考えだが、これでは合併がなかなかスピーディーにいかない(この中で、日本では商社が、吸収合併についてあらゆる業種の中で大変うまくやっている)。卸売市場について言えば、今後のマーケット事情を考えた時にあまりにも数が多過ぎる。流通業に詳しいジャーナリストだったら、「半分くらいにせよ」と言うだろう。日本経済が停滞している要因の一つは、日本に「小さい会社が沢山ある(多様性)ほうが良い」という考えが色濃く根付いているからだと言われている。多様性ももちろん必要なので、停滞するならそれはそれで良いだろう。しかし、前に踏み出す努力は絶えずし続けなければならない。
 
 その一つとして、弊社がある“東京都大田区”での取り組みをご紹介したい。「大森団地」や「鉄工団地」、「卸売市場」等の様々な要素があるのが、羽田空港の前にある臨海部の5つのエリア(東海、平和島、昭和島、京浜島、城南島)である。今月2日(土)、3日(日)には、その内の東海エリア(大田市場花き部の道路を挟んだ向こうには運河が広がっているが、その運河に面した用地)で「おおたの水辺観光フェス」が開催された。一番の目玉は2日(土)夜、花き市場側から運河を挟んで140m向こうにある冷蔵団地の壁面に映し出されたプロジェクションマッピングだ。その他、市場関係者やキッチンカーによる物販、ステージでの音楽披露等が行われ、来場した大田区平和島、大森の人たちが大変喜んでいた。また、来年から参加しようとしているイベントとして、「水辺で乾杯」プロジェクトなるものがある。水辺を理解し楽しむために、毎年7月7日PM7時7分に全国一斉で乾杯をするというものだ(今年は7月を過ぎてしまったため、11月2日PM午後7時7分に「水辺で乾杯」を行った)。

 このような事業を行いながら、東京オリンピック・パラリンピック後を睨み合せ、臨海部エリアを整備してもらえるよう働きかけているのが『 大田臨海部まちづくり協議会』だ。イベントが行われた運河沿いの用地は、今はまだ何もない。ここに場外市場や宿泊・アミューズメント施設等、いくつかの目的をもった施設が出来るようにしたい。また、水辺利用したマリンスポーツ等が楽しめて、もっと人の集まる場所にしたい。そして、綺麗な景観の運河にしたい。そのような土地の運用のための働きかけの一つとして、今回のイベントも開催された。

 『大田臨海部まちづくり協議会』の活動は、運河の整備だけではない。大田区民からすると、首都高速と京浜運河を渡って大森駅や平和島駅から、この臨海部の東海と4つの島に来るのはなかなか大変だ。交通標識も整っていないし、自転車で来ようにも自転車道が整備されていない。湾岸部の道路は大型車が本当に多い。このような中で、自転車で安全に通勤・レジャー、またウォーキングやジョギングが出来るようにしたい。これも、このイベントや臨海部のひとたちの一つの目的だ。しかしながら、止まっている訳では無いが、早速に手応えが出ているわけではない。それでも、目標に到達するために決めたことを確実にやっていかなければならない。この不確実な世の中において、また、ダウントレンドの中にいるような日本において、自らを奮い立たせて、周りを巻き込んで共にやっていくのだ。努力を積み重ねれば必ず形に出来る。

投稿者 磯村信夫 16:17