社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年03月28日

服と同様、花も洋花が中心だ。


 プーチン大統領の考え方や行動を見ていると、まさに“万能感”に囚われたものであると言える。車に乗ると人が変わったり、ビジネスや政治等で社会的に成功したと言われる人が晩年に間違いを犯したりするのも、この万能感の所為だ。何人か世界では万能感に囚われている為政者やビジネストップがいるが、もう少し平常心で、一般の人々と同じ目線で物事を見て、自身の思想を練り上げていかなければならないと感じる。この万能感と同じようなもので、私が危惧をしているのがSNSだ。SNSは友達と繋がるネットワークだと思っている人がいるかもしれないが、むしろ繋がりを絶って、同じ意見や特性を持つ人とその空間の中で生活をしてしまう。人々を空間の中に閉じ込めてしまうものにもなりうるのだ。その空間の中では何を言っても「いいね」をしてもらえる。しかし、社会や世間一般とは違った意見や好み等も出て当然なのだから、それで他の社会に危害を及ぼしてはいけない。もちろん、趣味で繋がり居心地の良いSNS空間はあって良いが、その辺りに注意しながらSNSと付き合う必要がある。また、SNS上のものは実際に社会を変える、あるいは、大きく何かを創り上げるものではなく、せいぜい流行だとか、一時的なブームで終わるようなものになりやすい。花や観葉植物、多肉植物も随分と取り上げられ、流行だけでは実は困るのだが、コロナ禍で一つのフォローの風になってきている。これは世界同時進行中と言って良いだろう。

 さて、この3月期にはっきりしたが、お彼岸やお墓の花といえども、業界で言うところの「洋花」が多くなってきた。鉢物はだいたいが洋物である。盆栽も人気になっているが、昔ながらの盆栽は本当に年末の一時期に人気になるだけで、他の盆栽類は素敵な鉢に入れてお洒落なインテリア、室内空間にも似合う洋物になっている。服と言えば「洋服」が中心になったが、同様に切り花も洋花が中心だ。その中で枝物は日本の自然を表しているが、これはむしろエコロジカルな感じで、洋風でもあり和風でもある。ユニバーサルなものでどんな空間にも合うものだ。

 花き業界では今まで、業界人が永い間切り花相場のバロメーターに一輪菊・小菊を中心に据え、その産地が大産地になり、この市況によって他の切り花の市況も大きく左右される等ということが起こっていた。それが今はすっかり違う。消費が先行し、洋花が基本の花になったのだ。勿論、着物が無くならないように、輪菊・小菊も無くならない。菊はスプレーギクが主流になったが、一輪菊の産地はどうしたら良いだろうか。消費に合わせた色や花形に変えることだ。一輪菊は「ディスバッド」と言われる洋菊タイプを中心に生産・販売する。小菊はマトリカリアのようなものやマーガレットのようなもの等、キク科の植物は色々あるだろう。小菊は最も多彩で変化がある花だ。この作業を行うことが必要だ。

 洋花中心であることが誰の目にも明らかになったのが、この2022年3月期であった。特に菊類を生産されている産地は、品目の修正は周年栽培に近いトルコやバラやカーネーション、鉢物類に変更することは良いが、菊類でも十分に消費者の要望に応えることが出来るので、消費に合わせた品種の選定等、改善をお願いしたい。

 



投稿者 磯村信夫 15:02