社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年10月23日

昨年の9月、10月、11月は花き業界で特別な三ヶ月だった


 2016年の9月、10月、11月は、スーパーに納品している花束加工業者が、花材を変える決断をした三ヶ月であった。また、主として団塊世代が経営している、後継者のいない専門店が、年末で商売をやめようと決断した三ヶ月であった。

 今年の42週の切花単価は、雨続きで、しかも大型台風が上陸すると予報されていたため、過去五年間で最も低い55円~60円だった。最も高かったのは昨年の75円~80円だ。一方、鉢物の42週の平均単価は、2014年に沿っているから、過去五年間で真ん中か真ん中より少し上といったところだろう。では、昨年の9月、10月、11月、我々はどんな経験をし、どんな判断をしたのだろうか。

 2016年9月は、太平洋側を中心に長雨が続き、日本海側を除いて彼岸の花が売れ残った。菊は季咲きの季節だから、満開になった菊が捨てられた。10月、菊が不足し、相場が高騰した結果、カスミソウやトルコギキョウ、ストック等、他の花材に仕事花の高値がどんどん燃え移り、その基調は11月いっぱいまで続いた。スーパーに納品する花束の主たる花材である菊類が、不足でしかも高い。今までロスを怖がっていたスーパーの売場責任者も、9月の彼岸で懲りたし、菊を中心にした仏花といっても、販売価格を値上げしなければならない現況だと分かり、ご来店のお客様で一番多い年代層である団塊ジュニア(厳密には1971~74年、広い範囲では1965~74年生まれ)の人々に焦点を合わせた、季節の花や葉物、枝物が入ったナチュラル志向の花束を作る方針に変えた。不作で生産量が少ない菊の供給に合わせ、若い世代の需要を取り込もうと花材を変えたのである。

 次に専門店だが、21世紀に入ってはじめての高値が続き、品揃えに苦労した訳だが、専門店である限り、高くても品揃えは欠かせない。大田市場の場合、セリで荷揃えしようとすると、当然、箱買いになる。それだけの量を店で売り切れないとなれば、仲卸から束で買う。セリ前とセリ後の仲卸の店舗が繁盛したのが、昨年の10月、11月であった。一方、地方の市場では、箱から出して小分けして、大切にセリを行ったりしていた。そして、その時、後継者のいない専門店では、お正月の花を売ったら店じまいをしようと決心した人が多数いた。従って、そういった店舗では、12月は品揃えはするが量に厚みがなく、積極的に販売しようとする意欲よりも、馴染みのお客様に迷惑をかけないで花屋人生を終わりにしようと考えるところが多かった。このように、昨年の12月は量が売れないから、日本中の花市場の相場が出なかったのだ。

 これが前年に起きたことだ。今はどこの花市場も売上が昨年よりも少ない。しかし、これから振り出しに戻ってもう一度、売上をつくっていかなければならない。その為には、40歳代に焦点を当て、「美しい」と思う美意識や、花を買っても良いと思ってもらえる花を提案していくことだ。それによって、65歳以上の女性達にもきっと気に入ってもらえる筈だ。何故なら、娘とお母さんは同じファッションセンスの下、美容室も衣服も整えている。この感覚を持って、我々花き業界でもマーケティングを行っていく必要がある。また、それだけでなく、オフィスに飾って生産性が上げてもらう「フラワービズ」や、家庭で花を飾ってもらう「ウィークエンドフラワー」。今、自分が生きていることの有難さを、そして、現状を受け入れる素直な気持ちを、また、やってやろうという勇気を、花は与えてくれる。人は花で幸せになれる。そんな花を飾って健やかに生きてもらう。これらをPRし、やっていく必要がある。

 今は昨年に比べて、売上は少ないかもしれない。しかし、昨年の事件ともいえる9月、10月、11月を鑑み、生産から卸、小売店まで、自分が開拓すべき需要を明確にして、地道な努力を積み重ねたい。政治も含め、表面の変化を促すその潮流にしっかり棹さし、花き業界は発展の道へと船を推し進めたいと思う。


投稿者 磯村信夫 : 15:00