社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年12月06日

明確化してきた2024年までの市場流通の姿


 昨日5日(日)の松市は、筋もの(若松、門松)は物によって昨年の倍値。根引き松他は2~3割高で、堅調というよりも、筋ものの高値に圧倒された。1日(水)から日本中で松市が行われているが、松の主産地は茨城、愛媛、兵庫丹波で、茨城が80%以上のシェアを持つ。そこが、運送事情、労働力不足、荷主の後継者難、さらにコロナで2年も労働力が極端に不足している中にあった。また、遠隔地では運賃が高く、少々高く売ってもらっても、手取りが本当に少なくなってしまう。これらのことから、地方の大手市場にも荷が潤沢に入らなくなり、年間取扱金額10億円未満のところだと、入荷が少なく、今年は松市を急遽止めざるを得なくなった市場もある。私ども大田花きでは、伝統文化を守りたい一心で、数量を前年よりも減らすということはしないようにしてきた。しかし、千両まで含め、2015年からなかなか集荷が思うに任せず、新たな荷主さんにお願いして出荷してもらっていた。今年は一昨年対比では約同数、昨年対比では大きい物と小さい物が少なく、真ん中のものが多かったことから数量で20%強少なかった。地方の市場で手当できないこともあって、仲卸が頭を飛ばして買う市況展開になった。

 つくづく感じることは、今年の花物もそうだが、デフレの時代は終わった。価格が国産果物と同じように、供給が少なくなってきているので上がっている。これを、どう小売店が消費者に納得していただき買ってもらうか。しかし、生産者はまだまだ利益がしっかり出るというところまでいっていない。設備投資をするためには、もう少し利益が欲しい。この辺の手立てを、卸売市場は生産者とともに考え実行してもらって、来年に備える。また、松や千両だけでなく、土地はあるので作付けは増やせるが人手はない、というのではしょうがない。海外からの研修生、安定した労働力が花づくりにも望まれる。最大の工面を国や地方自治体にお願いしたい。

 このように感じた昨日の松市であったが、入荷が本当に少なくて、松市をできなかった市場があるように、せりをしないで相対をすれば良いのかというと、そこの市場の独自相場で相対価格ができるか、なかなか難しい。そうなると、青果では大田市場の東一の相場が指標になっており、とある大手の地方市場は同じ産地のものなら自分で値段をつけても説得力がないので東一相場にする。出始め・出荷終わり、地元で販売しないと運賃が割高になってしまう時や、荷が余ってしょうがない時などは、自分の市場の相場で仕切るということをしている。切花で青果の東一の役割をしているのは、今のところ大田花きで、昨日の松の相場はひとつの基準になっている。高すぎだと思うが、絶対量が足りないと、こういうことになる。もう一度、流通量とルート、需給バランス、値付けについて、品物が足りないことを前提に、また、輸送がますます困難になることを前提に、市場流通を考え直す時となっている。

 今朝、長年お花屋さんをしていたが、ご病気でお花屋さんを辞め、売買取引契約を解消しにいらっしゃった方と話していた。特に21世紀になって売上げが減った、これはデフレが原因だ、とつくづくおっしゃっていた。花はデフレが止まったが、これを消費拡大の方向に持っていき、もっと作って、もっと買ってもらって、花文化を高揚させる段階になってきていると思う。このスタートが、鉢物においては2020年、切花においては2021年からである。コロナ禍の最初の2カ月(2020年3月と4月)、花どころではないので価格が暴落した。この印象があまりにも大きかったが、もう「ロスフラワー」ということは考えにくい。引く手あまただ。一般的にはまだ「花き業界は大変ですね」と言っている。そう、大変なんです。ステイホームで花の必要性がわかってもらえて、需要がしっかりして、供給が少なくなって花が足りません。こう大変さの内容を申し上げている。市場だけ見ても、産地から遠いところ、そして、交通の要所にない人口の少ないところの市場の苦境はある。だが、全体としては、新しいコロナ後の姿になってきている。ここの見極め、解決策は生活者に向けた市場間ネットワークであることを確信している次第である。

 


投稿者 磯村信夫 13:38