社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年10月28日

日本人としての精神性を引き継ぐ


 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村に近い「晴海トリトンスクエア」にて、現在、花で大きな地上絵を描く『フラワーカーペット晴海2019』が開催されている(29日まで)。若者たちが注目する新種目競技から5種が表現されているイベントだ。是非、足を運んでいただきたい。また、芝の増上寺では、若手華道家が中心となって「復興応援いけばな展・つなげよう花の心8」が開催された。3.11の被災者を仮設住宅に見舞うところから始まったこの会は、近年では熊本や岡山にも活動を広げ、花を通じて生きる喜びを感じてもらおうとしている。ようやくお天気に恵まれた週末、楽しみのために時間を使う人たちで両会場とも賑わっていた。

 異常気象による天災が身近なものになっている現在、「即位の礼」は“日本人”というものを考えさせられる良い機会だった。イギリスの歴史家・トインビーやアメリカの国際政治学者ハンチントンは、日本を世界唯一の「一国一文明」として挙げている。 日本の特に欧米と違うところは、精神世界と現実の世界を分けていないように思えることだ。仕事柄オランダ人やイギリス人、アメリカ人とお付き合いするが、彼らは哲学や宗教等の精神性を尊ぶ。しかし、その価値観で行動をするかと思えば、現実のこの浮世のなかでは精神性とは切り分けて仕事を行う。精神世界と現実世界を使い分けることに違和感を持たないのだ。違和感を持たないのだな、と感じたのは私が日本人で、まっすぐ生きるべきだと思っているからだろう。
 
 神道では、鏡、剣、玉の三種の神器を祀るが、鏡は素直さを、剣は勇気を、玉は慈しみの心を示すとされている。現実の社会の中で裏表無く真っさらに、赤ん坊のように穢れなく生きていくことを良しとする。この精神で国際社会の中を生きていくのは大変だと思いきや、「即位の礼」では、世界中の多くの国が、令和天皇御即位のお祝いに駆けつけてくださった。経済上の日本の力もあるだろう。しかし、アメリカと同盟関係があるといえども、強靭な軍事力があるとは言えない。それにも関わらずこれだけの国主がお祝いに来てくださることは、日本の国柄、天皇の御心と行動、そして、日本の国を運営するための構造が、世界の平和と繁栄にとって好ましいものと、各国が判断しているからだろう。

 幸せボケがあり、精神的にも未熟な大人たちが多くなっている今日の日本でも、大元の日本の大和魂は引き継がれていると思われる。それは例えば、今話題にもなっている「ノーサイド」が武士道精神に通じるものであったり、また、ハロウィンのお祭り騒ぎの後、ゴミを拾い綺麗にしてから始発の電車に乗ろうとする若者たちのグループであったりする。我々日本国民が持っている特性をこのまま変えなくて良いとすれば、後は国際社会の中で日本が発展していくための手法を間違いなければ良い。いつの世も程度の問題だが、言うなれば身の回りを整えて、生活していくことだ。ここに茶道があり、華道があり、それを少しカジュアル化した日本のフラワーアレンジメントがある。花と向き合い、いけることによって一体化する。そして、花が生きる。この精神は、日本人が先祖から受け継いだものである。商売も同様だ。「綺麗に儲けて綺麗に使う」ことを理想とし、花き業界もそう取り組んでいって欲しいと思う。

投稿者 磯村信夫 15:29