社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年03月30日

新型コロナウイルス猛威=ドイツでは「第二次世界大戦以来の国難だ」と言われているが


 土日の二日間は、仕事以外は、家で本を読んだり考え事をしたり、ウォーキングをしたりして過ごした。昨日の雪の中でのウォーキングでは、雪が上がった午後でまだ寒い筈なのに、とても温かく感じた。スキー場から戻る時に、シャツ1枚、半袖1枚で帰ってくるのと同じだ。なんでも前と比べた比較がとても大切だと思う。

 今度の新型コロナウイルスによる花の需要減も、普通に考えを巡らせれば、無くなる需要が多いのも頷ける。まず、第三次産業自体が、一次産業、二次産業と違って、供給と需要がその場でマッチしない限り成り立たないサービス業だ。コンサートやレストランでの生け込み、生花店の仕事もそうだ。補完的にネット取引したとしても、時空を超えて誰かがそこに届けなければならない。第三次産業に属する我々(卸・仲卸)からしても、一次産業に属する農家の皆様や、二次産業に属する段ボール製造業や、他の花の関連資材メーカーにおいても、当然影響がある。また、いけばなやフラワーデザインの先生は、本来は「濃厚接触」しなければ教室が開けない(今なら塾と同じように「ネットを使うか」ということになる)。さらに、通常の規模の、多くの親族、友人を迎える結婚式や葬儀は控えるか、深い間柄の人だけの式典になる。そこで使用される特別な花装飾は、かつてのほんの何分の一かの需要だ。
 
 日本政府は、まずは国民が移動したり、会合しても問題ないレベルまで達するよう全力を注いで、その間、商売が無くなった人たちに、生活出来る所得を、政府、企業、金融機関をあげてどうにかしようとしている。比較の問題だが、花き業界がこんな思いをしたのは、リーマンショックの時、3.11の時、この2回だが、その時よりも圧倒的にサービス産業がこの国の経済を回していて、家庭需要よりもむしろ、そういうサービス産業のところの業務需要・法人需要にこそ、花のカッコいい需要があったわけだから、大変な事態となっている。
 
 ピンチの時に、我々を前向きにさせる二つの言葉がある。「だからこそ」と、「それでも」という言葉だ。何かを判断するときに、頭にこの言葉をつけて考える。すると、「AかB」、すなわち、「A or B」ではなく、「AもBも」、&で考えるものになる。これを新型コロナウイルス問題でも使うと、まずは世界中でウイルスがこれ以上広がらないようする。そうしなければ、延期になったオリンピックが来年も開催出来なくなってしまう。その時期目標が1つだ。それでも、新型コロナウイルスが収束し、全てがV字回復であれば良いが、花は遅効性の性質を持つ。花でも比較的即効性があるのは、今はもう既にある家庭需要だろう。従って、まずは家庭需要をしっかり捉え、まだ家庭に花の無い人に買ってもらえるよう流通チャネルを整備したり、販促活動を行ったり、社会の気運を盛り上げる必要がある(現在、これをやっている)。そして、この下半期まで、あるいは、来年の春先くらいまで、世界経済全体が低調な状況が続くと予測する人が多い。下半期から徐々に復活してくる冠婚葬祭やパーティー等の需要を拡大出来る形にしておく。さらに、資金的余裕はあまりないが、デジタル社会にふさわしいネットワークをサプライチェーンの中で作っていく。宅配の物流網まで含めたものも同様だ。それを、花の文化と産業の業界は、2020年度、本年の12月までに目鼻を付けること、そして、世界経済がV字回復した時に、花の文化と産業の業界もV字回復出来るようにしていくことだ。来年の2月のバレンタインデーまでが一つの目標になる。「長い1年だった」と、その時言えるように、また、その時、花の文化と生産流通の産業が、一皮むけた姿になっているよう、お金がない中でも、知恵を使い、職を確保し、所得を確保しながらやっていく。これが、「だからこそ」と「それでも」という言葉の先にあるものだろう。21世紀に入り、国際社会で一番の試練だ。受け止めてやっていくということであろう。
 

  投稿者 磯村信夫 16:41