社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年11月29日

市場流通ビジョンを考える会研究会の話を私流に解釈すると


 先週の26日(金)、東京聖栄大学の藤島廣二客員教授が事務局をされている(といっても、実際は、藤島先生の下に集う)「市場流通ビジョンを考える会」の令和3年第2回研究会が開催された。研究会では、講演と鼎談が行われた。ご講演いただいた東京農業大学客員教授・元日本農業新聞記者の小暮宣文氏からは、農協の農産物販売に対する助力を卸売会社も積極的に加わって欲しい旨のご意見をいただいた。また、鼎談いただいた(株)R&Cホールディングスの堀社長も、これは言葉にされていなかったが、地産地消が国民の願いとしてあることを前提に、産地の地元市場も、生産者と一緒に販売しなければならないし、ネットワークで県内のグループ市場に、あるいは、県外の市場にも販売をお手伝いいただく等、市場が地元の消費者のためだけでなく、生産地のためになるよう、小さくても収支を合わせ、やっていくべきとのお話をいただいた。よく「系統農協と系統外の個人出荷者」と区別しているが、もうそんなことを言っている時代ではない。とにかく、生産者増、生産面積増を目指していかなければならないのだ。それには、生産者が作った農産物をお金に換える、生産者の所得に直結する仕事をしている卸売市場が、生産者の事業を支える、また、小売業の事業を支える責任がある。こう、暗に我々に教えてくれている。同じく鼎談いただいた横浜丸魚(株)の松尾常務からは、堀社長と同様、大田市場や(魚の場合には)豊洲市場と同じことをやっても、横浜市民、神奈川県民に喜んでもらえない。神奈川には素晴らしい漁場が沢山あるので、その漁業協同組合や漁師たちと、県内のレストランと組んで、市場内外でフェアを行ったり、網にかかった未利用魚を美味しく食べる方法を紹介する等、工夫をこらされている。また、大衆魚は全体の約8割もあるそうだが、残りの2割を特徴づけて販売し、横浜の魚市場の卸としての存在意義を図っている。

 こうして皆さんのお話を思い起してみると、市場が取り組まなければならないことは、生産現場や生産者、そして消費者との接点にあるようだ。すなわち、サプライチェーンをバリューチェーンにし、何度もお伝えしているがそれをバリューサイクルにかえて、「消費者良し、様々な業態の小売店良し、出荷者も良し」と出来るようにすることが必要だ。それぞれの先生方のご意見を伺い、そのように思った。

 大田花きは、商流・物流(物流加工含む)・情報流・資金流(場合によっては決済)を別々に分けて、利用者である出荷者や地方市場や場外卸そして各カテゴリーの小売店各社がどの機能を内在化し、どの機能は大田花きでやった方がより合理的かで大田花きのどの機能を使うか使わないか分けてもらう。これで市場外流通をも取り込もうとしている。市場外流通は無理していること、余分な時間やお金を使っていることが多いからだ。市場もスペースや人手に限りがあるので、もちろん全部は出来ない。しかし、卸売市場である大田花きが担う方が、その生産者にとっても買い手の実需者、各業態の小売店にとっても都合が良いことが大いにある。「餅は餅屋」で、卸売市場に任せていただけたら良い。ただし繰り返すが、人手や場所やICTシステムや資金量などによって、卸売市場でもその出来る範囲は異なるだろう。加工品の取扱いをどうするか等触れなかった点はあるものの、以上のことが非常によくわかった藤島先生の勉強会であった。

 


投稿者 磯村信夫 10:58