社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年06月24日

大田花き株主総会終わる


 22(土)、弊社の株主総会を開催した。株主から「女性の取締役や執行役がいないのは残念だ。是非とも希望する」といったご意見や、会場内の飾り付けについて、「今でも時代に合っているが、もっと最先端的なデザインも取り入れるべきだ」とご要望いただいた。今後の課題とさせていただきたい。そして、利益を大幅に落とした点に対して「大丈夫なのか、何故なのか」とご質問をいただいた。最大の原因は、生活者の欲しがる商品、そして、無意識に欲しているものを「あなたの欲しがるものはこれでしょう」と業界全体で提案出来なかったことだろう。需要に応えたり、作り出すことが出来なかったのだ。

 地方の直売所における花き販売は、花き売上全体の10%もある。農林水産省の統計だけを見ても約800億円だ。株式会社が直営所を運営しているところもあり、市場規模は更に大きいと推測する。また、消費地では、家具売り場や雑貨売り場、あるいは、都内の花き関連業者の店舗で、卸売市場を通らない流通としてハーバリウムやドライフラワー、家具としての観葉植物や花木の鉢物類がある。生鮮の切花や切り枝、鉢物や苗物を生産している既存の生産者や流通業者、小売業者が花き産業の主力メンバーであることに変わりは無いが、生活者がもの足りなさを感じて、もっと違ったものを欲し、購入していることが分かる。
 
 さて、話を元に戻して、大田花きの利益が下がった要因の一つは、将来におけるリスク回避の為、貸倒引当金を本格的に積んだことである。世界では小売流通業一般がネット取引に脅かされてデフォルト(債権不履行)することが多くなっており、これは日本も例外ではない。そして、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)※の期限切れで倒産の危機にある会社が多く存在する。花の中間流通業者や小売業者にも該当する会社があり、特に卸売会社は、貸倒引当金を積まなければならない状況になっているのだ。弊社は株式を公開しているので、当然にそれを行なった。また、貸倒引当金と同様に、働き方改革による厳密な労務管理と賃金についても、人手不足もあり、支出が増えている。それ以外に、鮮度保持流通の為、投資した施設の減価償却費が利益を圧迫している。花き消費は、生鮮食料品と比べると緩やかな商品回転率だ。大の花好きの人でも一世帯に一週間で1束、大の鉢物好きの人でも1ヶ月に1鉢の購入だ。しかも、切花は一週間花もちし、鉢物は1ヶ月もつ。この緩やかな商品回転率の中でも鮮度保持を行い、冷蔵庫等の設備投資を行わなければならない。投下資本の回収が難しいと言わざるを得ないのだ。小売店と協力し、生活者に鮮度の良い花を買ってもらいたい。この想いで、弊社は消費地の社会インフラとして投資を行なった。キャッシュフロー経営を心がけている弊社としては問題ないが、結果的に経営指標上、減価償却費の負担が重くのしかかり、利益を圧迫しているのが目についてしまうのだ。

 弊社 取締役8名のうち、1名が交代、新しく東京青果(株)常務取締役の川田光太氏が選任された。この結果、三十歳代、四十歳代の取締役が3名となった。コネクティッドでサステイナブルなプラットフォーム業者として、大田花きを今後どう作り上げていくか。共に考え、方針付けて執行役に示していく役目を果たそうとしている。株主総会後に開かれた取締役会でも、いくつか指摘をいただいた。具体的な需要データを取得する為に必要なICT投資等、どのような状況でAIを活用していけるか、SNS等をマーケティングツールとして使った事業も少なすぎるのではないか等、指摘を受け、今後の課題とすることとした。

※中小企業金融円滑化法(モラトリアム法) リーマン・ショック後の中小企業の資金繰りを支援するため、2009年12月施行。返済期間の延長や金利の条件見直しなどの努力義務を金融機関に課すもの。期限が切れた結果、銀行再編もあり、面倒を見てもらえなくなった会社が倒産の危機にあっている。

投稿者 磯村信夫 15:47