社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年10月07日

大切なことは供給の実態


 5日(土)、6日(日)週末、日本橋高島屋で開催されているいけばな芸術協会主催のいけばな展と、親友の岡久廣氏の能 「鸚鵡小町」を観に行った。真善美の本物は後味が良いだけでなく、日頃移りゆくものに翻弄され、その中で泳ぎきろうとしている自分の姿がよく分かる。

 また、あらゆるモノの本質を掴み取ることを教えてくれる。掴み取った本質をもとに判断し、行動していけば、この浮世での時間の使い方等も上手くいくはずだ。心を煩わせることも不要だ。本物は今更のように思わせてくれた。
 
 その目で花き業界の消費動向をみると、景気まで含めて不確実の中にある。天気のようにその都度、対応していかなければならない。しかし、作付けについては、既に起こっている事象であり、今までの天気まで含めて、情報を把握し、精度を高めていくことができる筈だ。日本の花き業界は、あるいは、生鮮食料品を取り扱う生産から小売もまたそうだが、一会社一千億円以上を売る、世界で通用する企業ではなく、いずれも中小零細の集まりだ。従って、気象庁のように、公共のものでも良いし、民間の天気予報会社のようなものでも良い。過去データを分析し知財を持った会社が出てきてもらわないと困る。作るに天候の、花き業界は作付けしないと出荷物が上がってこないわけだから、1番大元のデータとして今後どうしても必要になる。それをもとに、消費者は、買うに天候だ。涼しければ鍋物等の素材が欲しくなるのと同様、紅葉や実物等を欲しがって、トロピカルなものは上着を羽織るようになったら人気が落ちる。このように、買い気だけの判断になる。これを共有し、価格のぶれ幅をより少なくすることが必要だ。

  国内の農産物が少ないから、世界から青果物や花を輸入し、供給する必要があるわけで、日本で作っていないものは、今後ともコンスタントに輸入してもらうことが消費者のために必要だ。しかし、日本で作っているものであれば、どのくらいの品質と量のものを輸入し、供給すれば良いか。この判断材料に、国内生産物の作付け、また、成田や大井埠頭などの空・海からの正しい実績を提供しなければならない。第4次産業革命はそのように動いており、私は花き業界が遅れるわけにはいかないと考えている。業界全体の公共財の情報として、把握しておくことが必要である。

  現在、供給量と需要量とその時々の天候においての過去における数値が業界のものになっていない。毎回勘で、ヤミの中で仕事をしているようなもので、従って卸売市場の業績を見ると、2019年上半期で、花と青果の卸売会社は三分の一が営業赤字で折り返していると思われる。本質は日本全体の輸入品を含めた消費者に向けての供給量とこの上半期までの食物残渣に該当する廃棄量。この具体的な数値を誰もわからずに市場流通、市場以外の流通と、動いてきてしまった結果である。本当を知ること。ここから素晴らしい業界や世の中を作っていけると思うのである。 日本農業新聞は、この大切な数値を市場流通に限って我々に知らせてくれている訳だが、可能な限りさらにもっと広く、お願いしたい。  
 

投稿者 磯村信夫 16:50