社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年03月21日

基本はサステイナブルな習慣が豊かさを作る。


 18日(金)の彼岸入りや19日(土)は雨予報だったので、ここは凌ぐしかないと事前に覚悟していたが、先週の宮城・福島の地震から、花の市況が波乱含みになった。この地震は予想していたよりも大きな被害があり、宮城・福島の人たちの精神的なダメ―ジも大きかっただろう。しかし、そこは東北人、また前を向いて歩んでいこうとしている。本日のお墓の花や仏壇の使いごろの花の市況はしっかりしており、先週までの予測とは少し違う展開になってきた。

 天候異変や事件等、様々な予想外のことが起こり生活のリズムが狂うことがあるが、大切なことはリズムを取り戻し、サステイナブルな生活を行うことだ。私個人も学生時代からこのコンティニュイティ(持続性)を大切にしてきた。それは、先生からイマヌエル・カントの暮らしぶりを学んでカントの伝記を読んだり、「純粋理性批判」を読んだりして、すっかりカントが好きになったからだ。カントはプロイセンのケーニヒスベルクという、ドイツ北東部の町(今はロシア領)で一生を送った。地元の大学で教え、昼食後(昼食には白ワインを必ず嗜んだそうだ)、午後3時半になったらステッキを持って必ず散歩に出た。近所の人は、カントが散歩に出ることで今何時なのかが分かったという。このように、カントは自分の哲学をまとめていく上でも、ある意味で画一的といえる生活習慣を持っていた。画一的というよりも、カント風に言えば「道徳的規範」であり、それを実践していたということであろう。この持続性、決まりきったことをコンスタントにやり続けることに、一つのものを成し遂げる大切な要素があるのだ。

 一方で、予想外のことが起こった時にも対処できるよう、余裕を持つことも必要だ。これはIBM社がコンピューター会社になるきっかけとなったトーマスワトソンの話だが、コンピューターは最初にゼロックス社が作った。申し込みが殺到し、ゼロックスに押し寄せる依頼者は中々ゼロックスとコンピューターの話が出来ない。一方、ニューヨークのゼロックス本社の近くに、IBMの本社もあったのだが、当時のIBM社は手動の計算機メーカーであった。ある日、とある客がIBM社にアポ無しで飛び込んできて、受付係へ「社長のトーマスワトソンにお会いしたい。アポ無しですが宜しいですか」と許可を求めた。ワトソンはその人物と会うことにしたのだが、その出会いが、ワトソンがコンピューター事業をスタートさせるきっかけとなったのだ。即ち、予定していたり、いつも何時に何かをすると決めていても、余裕を持つことが重要だ。こんな話もある。ローマ帝国の価値観は「義理と人情」だが、皇帝・シーザーはいつも機嫌の良い皇帝だったと、塩野七生氏が著書に書いている。ある日、シーザーが街を歩いていた際、女性が陳情してきたが、シーザーは「今忙しいので」と断ったという。その女性は「なんだあなたは、人の話が聞けないのか。最高責任者なら余裕を持って人の話を聞くべきだ」と叱った。そのことがあってから、シーザーは余裕を持って物事を行うようにしたそうだ。本質さえ捉えれば、一つ一つの問題解決に時間はかからない。大切なことは「聞く時間」を作ることだ。シーザーは皇帝だったからなかなか難しかっただろうが、しかし、なんと素晴らしい人間だっただろう。

 政府はこの春、賃上げを重要課題として位置づけており、春闘での賃上げ要求に応える等、ほとんど大手企業は賛同している。これは日本だけが今まで長い間、賃金が上がっていなかったこと、また、諸物価が上がってきていることによる。花き業界は、人を幸せにする良い仕事だが、給料が安いというのではいけない。賃上げを実現するためには、生活のリズム、習慣を変えて(整えて)、生産性が上がるよう努力していかなければならないと考えている。生鮮食料品花きは生き物だから、需要と供給量の強弱に合わせて、週単位でも月単位でも、不規則を規則正しく行っていくことが必要だ。

 そして、新しい番組が4月から変わるように、各自が歩む会社生活、私生活を少し変えて、持続的発展が出来るような変え方をしていかなければならない。このコラムは花き業界の経営者の皆さんがお読みいただくことも多いと思う。花き業界を他の産業と少なくとも同等の賃金水準が確保出来るよう、そしてこの3月賃上げ出来るよう、もう一度、従業員の仕事生活、また、体調を整えたりする私生活の習慣をチェックし、給与アップ、生産性の課題を解決していけるようお願いしたい。



投稿者 磯村信夫 17:59