社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

[]

2021年03月15日

地方都市にも出荷してもらうには


 13日(土)、東京は春の嵐のような、雨台風のような天候で、卒業式やホワイトデー用需要はあったものの、家族で外出して生花店へ行こうとする家庭の花の需要が本当に少なかった。在庫を抱えてしまった店も多かっただろう。そして、彼岸の中日である今週末も天候が芳しくないため、本日の相場は、前市から比べると弱気配(やや悩み)の立ち合いだ。しかし、過去5年の推移からすると、決して悪い状態ではない。花き業界の需要は、家庭需要の上に、お彼岸のような物日の需要、冠婚葬祭・儀式の「ハレ」の需要が乗って成り立っている。コロナ禍の日常で家庭需要が堅調となり、若い人たちが花を新たに家に飾るようになった需要、また、鉢物や苗物等のガーデニング需要が、コロナ前の消費にonされているのだ。また、昨年はコロナ禍で業務需要が激減してしまったが、今期はwithコロナの卒業式の在り方、法事やお葬式の在り方、結婚披露宴の在り方等、規模は小さくなったが、感染予防対策をしっかり行い、少しずつだが開催されるようになってきた。従って、供給量が増えておらず、むしろ減っている今、市況は堅調に推移している。しかし、「ハレ」の需要は天候に強いが、「ケ」の需要は天候に左右される。これは致し方ない。  

 今後の花き業界の課題として、全国の拠点市場が過不足なく花きをどう集荷するかが挙げられる。この三月を見ても、国内産地が縮小気味の中、産地負担の物流コストを考えると、他物流も盛んで帰り荷が確保出来る大消費地の卸売会社に荷が偏るのだ。産地からすると、市場出荷は地元と大消費地の市場、この2つの選択肢に目が行きがちだ。しかし、これでは、各地域の生活者の、地域独特の花文化を守ることは出来ない。地域卸売市場が直接、産地から送っていただく仕組みづくりを、産地の皆様と話し合いながら、早急に行っていく必要性を感じている。

 通信は現在の4Gから5Gの時代に入る。日本にも在宅ワークが浸透してきた。国は、今の都市部一極集中から、本格的な地方の時代を創ろうとしている。職を変えずして地方に住み生活することが、今までよりも出来るようになるだろう。それに応えて、花き市場間ネットワークを構築する必要がある。また、日本は縦長で、北アメリカ大陸でいえば、サンフランシスコからメキシコシティまでの長さだ。桜前線、紅葉前線があるように、花の産地も季節によって移動する。市場間ネットワークと併せて、地域中核市場は産地との強固なサプライチェーンを組むことが、その地域の生活者の花の文化活動のために欠かせないと思う。今月、当社でプレス発表した 「勉強会‐共同仕入機構‐日本地域文化振興協議会」は、このような問題点から出発している。産地良し、地域の消費者・小売店良し。このようなサプライチェーンを、各地域を担当する花き卸売市場が創る。花き卸売市場同士がネットワーク化するのだ。

※参考
グラフのページ
消費額データ
出典:(株)大田花き花の生活研究所発行「フラワービジネスノート2021」

投稿者 磯村信夫 14:00