社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年09月07日

地方活性化の流れの必要性


 (一財)日本総合研究所が発表した『全47都道府県幸福度ランキング2020年版』において、福井県が総合日本一となった。実際、日本海側各県の人たちの活躍ぶりを思うと、何か腹の据わったやり遂げる力があるように思う。しかも、控えめな実力者が多い。(株)大田花き花の生活研究所は、花き業界全体に役立とうと作られたシンクタンクである(以下、「花研」)。その花研から聞いたが、「共稼ぎ世帯の可処分所得率」を見ると、何も首都圏だけが、あるいは、関西圏、中京圏、そして、福岡県だけが突出している訳ではない。最も高い県のうちの1つが福井県だそうだ。富山県もそうである。収入の額は確かに大都市圏の方が多いだろう。しかし、可処分所得はそれとは違うのだ。確かに県による貧富の格差も海外に比べて少ない。日本はその意味で素晴らしい国だ。  

 年代別の花き消費支出を見てみると、やはり50歳代、60歳代以上が沢山消費してくれている。2020年、今年の統計はまだだが、このコロナ禍で若い人たちの購入が増えたので、若い人たちが多い大都市圏で、今までより個人消費は少し上がるだろう。また、特に60歳以上では、1人世帯でも切り花消費1万円以上、鉢物消費が6千円以上と平均にくらべて高いから、年配者が多い地方でも、消費は都市部に負けないだけある筈だ。だからこそ、地方文化を継承するため、地域特有の素材が揃う青果市場や花市場、魚市場が必要で、存在意義がそこにある。あとは、その地が消滅しないか、すなわち、子どもや孫等が代々その地域に住んでいけるかである。現実的には、都会から移住を促したり、子どもたちにUターンしてもらうことが必要だ。

 卸売市場目線で言えば、生産者に出荷してもらい、市場で仲卸、小売店に買ってもらい、小売店が生活者に販売する。そして、生産者も卸・仲卸、小売店も、いずれも販売代金としていただいたお金は、生活者が花と引き換えに支払ったお金だ。それが巡り巡って自分の労働の対価となり、各自が生活できているのだ。即ち、業界のお客様は唯一、その地域の生活者なのである。生活者への届け方は、花であれば結婚式の披露宴を装飾する業者、葬儀の花祭壇を作る業者、インターネット業者、街の生花店、駅周辺・駅ナカでチェーン展開している生花店、スーパーマーケットやホームセンター等様々だ。いずれも、その地域の生活者に花や緑のある生活をしてもらうことによって、生活文化を豊かにし、精神的な心の充実を感じてもらう一役を担っている。また、これが我々花き業界の本来の目的である。

 現在、コロナ禍で国内生産も輸入品も減り気味だ。小売店も、特に冠婚葬祭を専門としていた小売店は規模の縮小を余儀なくされている。しかし、個人需要は活発になってきた。一足飛びには地方分権にぐんと舵を切るにはまだ準備が整っていないが、例えば、リモートワークが恒常的な働き方の一つになり、週に1、2回、あるいは、月1の出社で済むような業種や会社も多くある。なにやら北欧や北ヨーロッパの会社のようだ。今後、地方分権はコロナ禍で加速化される可能性がある。その時のためにも、まず、中央卸売市場は地方市場とネットワークを作る必要がある。また、地方市場間の合併等で体力のある市場になる必要がある。そして、少なくとも政令都市とそれに準じる都市には、大手出荷者が直接出荷してもペイするように、地方を活性化していかなければならない。本格的な地方活性化の流れを、遅くとも2025年までに確かなものにする。2030年には、「日本が面白いのは元気な地方都市があるからだ」と言われる位までになる。この流れを本格化させることを、コロナ禍が後押ししていると感じている。  


投稿者 磯村信夫 15:34